第79話 別れと謎の千年洞窟

俺達は戻って来たキラの報告を受けて作戦が成功した事を知る。


「やったな!キラ!良くやったぞ!」


「ニャア〜!!」


「そんなのキラなら楽勝よ!ねっ?」


「ニヤッ!!」


キラは信じて待っててくれたロザリアに愛想を振りまいていた。


「あのバジリスクを倒すとは……しかも二体だと……?」


「驚いたわね……まあ、毒が通用しないのはバジリスクにとっての天敵では有るけど……ちょっと驚いたわ……」


「さ、流石はデュラハンスレイヤー殿の使役獣ですなぁ……大したモノだ」


村長もしきりに感心してるが、何よりも一番嬉しかったのは誰あろうこの俺だ。確実な戦力である事だけでなく、三匹のチームとして連携が確立された事がデカい。

基本的に遠距離系でありつつもオールラウンダーの俺は、その敵との距離感を自由に変えながら相対するスタイルなので、相方が固定された距離感だと100%の実力を出しにくいのである。しかし、彼ら“三匹”が独立して動いてくれると俺はそのフォローに回りながら攻撃の厚みを増したり、別々に動いて攻撃の手を増やしたり、俺がアシュのおっちゃんと組んで動いたりとバリエーションが増えるのだ。

コレは向こうでの対人戦において大きなアドバンテージを持つ事が出来る。

キラと言う分かりやすい目標に目を奪われた敵を俺と『十三(じゅうぞう)』でガンガン狙撃をしながら、全く別のラインからアシュのおっちゃんが敵に突っ込んで行く……なんて作戦が出来てしまうのだ。


「こりゃあ大きな一歩になったよ……へへっ」


「ニヤッ!!」


俺達は支度を整えてからそのまま千年洞窟の方に向かう。

キラはその道中、ずっとロザリアの傍らにいた。もう最後になる事を知っているからである。二人で狩りをするのもこれが最後となるからね。


それからの3日間は豪華な食事を出し惜しみせずに作り上げた。ここまで来てくれたブリジッタさんとロザリアへのささやかな御礼である。

そして『眼』と『十三(じゅうぞう)』の待つ千年洞窟の入口に到着した。


《やっと来たの》


「おう!待たせたな」


《でも洞窟の中は落ち着いて来たの》


「そりゃあ良かった。もうガスの方も落ち着いたか?」


《上手く爆発をさせたから岩盤が完全に蓋をしてくれたの。充満してたガスも爆風で上手く抜けたの》


「そうか、『眼』も『十三(じゅうぞう)』も良くやったな!」


《当然なの》


こくりと頷く『十三(じゅうぞう)』。


「コレで何とか千年洞窟には入れそうだな」


《大丈夫なの》


「それじゃあ……ブリジッタさん、ロザリア、ここまで本当にありがとう……」


「向こうの出口まで送るわよ!!」


「それはダメだロザリア。その後二人で千年洞窟を帰らないとならない。それは危険過ぎる」


「俺も流石に反対するよ。確かに二人は強いし速い。でも一人が万が一倒れたら?何名かのパーティーでも危険だからね」


「でも……」


「ニャアアアア!!!」


キラが背中の毛を立てながら怒っている。キラはロザリアを危険に晒させたくはないのだ。


「き、キラ……」


「ロザリア、これ以上キラを怒らせないでやってくれよ……」


涙目で歯を食いしばってるロザリア。キラは俺の肩に乗っかってきた。


「……そうね、ここ迄かな……楽しい旅だったわ。アシュトレイ、ラダル君、本当にありがとう。そして、無事に故郷にたどり着いてね」


「ブリジッタさんもどうかお元気で……」


「うん、ラダル君の料理が食べれなくなるのはちょっと残念だけどね〜」


「ブリジッタ、ロザリア、君たちの神が二人に幸福を授けてくれるように祈っている。異教徒のオレが言うのも何だがな……」


「ふふっ……そうね、でも嬉しいわ。本当にありがとうアシュトレイ」


ロザリアは涙目のままじっとコチラを見ている。


「ロザリア、人間は別れが付き物なんだよ。『華に嵐の例えもあるさ、さよならだけが人生だ』って言うくらいにね。でも、それだけの出会いもあるって事さ。俺達の出会いは最悪だったろ?でも別れの時はどうだい?コレが人生の面白い所さ。だから別れを悲しむだけにするなよ」


「……そ、そんな難しい事……い、言われても……分かんないわよ!!」


「今は仕方ないさ。何れ判る時がきっと来るよ」


俺はそのまま千年洞窟に入って行く。そしてアシュのおっちゃんも……。


《ブリジッタもロザリアも理の力を極めるの。そうすれば生きる事の理も見えてくるの》


そう言い残すと『眼』も千年洞窟に消えて行った。




俺達は『眼』の分析と俺の【エナジードレイン】による魔物の位置の特定を用いて正しい道を割り出していた。

道のには判るように印を付けて進んで行く。

途中で魔物が出ても何とか倒しながらどんどんと奥に入って行った。

何度も行き止まりになったり、崩落して通れない場所を避けて通ったりと中々思う様に進まなかった。


「アシュのおっちゃん!そろそろ休憩しよう!」


「ふぅ……そうだな。中々思う様に進まんが割り切って行こうか。あっ、オレもチャイティーで良いぞ」


頭をスッキリさせてもう一度トライだな。


《ドワーフに相当穴を空けられたの》


「あ〜!!アイツらはホント天罰が落ちて欲しいわ!」


「しかし、まさかの展開だったぞ。ドワーフが原因でこの洞窟が迷路になってたとはな……」


「それにしても……この魔物達って何処から湧いて来るんだろう??」


「ああ、オレもそれは不思議に思ってたんだ。コレだけ複雑な洞窟に魔物が居ても獲物がやって来ないんじゃないかってな」


「そうだよね。遺跡でも無いのに魔物が湧き出る訳も無し……入口や出口から出入りするのか?」


この洞窟は不思議な事が多過ぎる。

ガスの吹き出しはどっかのドワーフがやっちまったとしても魔物の数、それにこの洞窟自体がおかしい気がする。何せ洞窟特有の空気の淀みが無いし、不思議と快適なのだ。

自然に出来た物とは違う気がする……そんな時だった。

前方と後方からゴーレムの群れが突然出て来たのだ!!俺はすかさず『千仞』でゴーレムを底なし沼に落とそうとしたが何故か発動しない!キラがゴーレムに体当たりして吹き飛ばしてくれたが、形勢はかなり不利である。

そんな中『眼』のサポートで正確にゴーレムの核を狙撃する『十三(じゅうぞう)』は凄い。

アシュのおっちゃんも大剣で何とかゴーレムを斬り倒してゆく。

俺はバットアックスでゴーレムを切りつけながら入ったヒビから核を『溶岩弾(マグマバレット)』を撃ち込んで倒して行った。


「中々痺れる展開だね!!」


「ああ!全くだ!コイツら一体何処から出て来たんだ?」


全くもって不思議な話である……コレって遺跡……いや、魔物が吸収されないからそれは無い。一体どうなってるんだ??

出て来たゴーレムは何とか倒したが、やはり何度やっても『千仞』が使えない……『泥壁(マッドウォール)』も使えないのだ。こりゃあヤバいな……。

俺は魔導鞄から月光マントを取り出して装着した。そして『首狩りの盾』を持って移動を開始した。

アシュのおっちゃんも流石にヘルムを被って小さな盾を装着した。

慎重に先に進む俺達の前に突然広い場所が現れた!!しかもその足元からどんどんと出て来る魔物たち……どんだけ出て来るんだよ!!




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




いつもお読み頂きありがとうございます。

遂に千年洞窟に突入しました。

第二章の終わりも段々と近付いて参りました。

果たして千年洞窟の謎とは一体?


皆様の応援のおかげでPV10万達成しました。

最初、描き始めた頃は5万超えたら良いなくらいの感じでしたが、まさかの倍です。

本当に感謝申し上げます。

これからも何卒応援宜しくお願い致します。

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