第二章 魔法兵ラダルの東遊記
第38話 ハルバート使いのアシュトレイ
転移が終わる刹那、俺は背中から急襲された!
カキーン!!
だが、俺の背中にはランドセルとそれに取り付けた隊長から貰った盾がある。俺は直ぐ様『陽炎』を発動して、魔法障壁を展開した。
カマキリ?デカいな…マンティスとか言うやつか?攻撃が物凄く速いが、『陽炎』を発動すると攻撃を空振ったのでそのまま『溶岩弾(マグマバレット)』を連射して撃ち込む。
するとマンティスが1発目は鎌で叩き落とすが2発目を避け切れずに頭に命中させられて倒れた。
俺は魔石と鎌をランドセルの中の魔法鞄に入れた。
俺は【エナジードレイン】を魔物全て指定して発動させた。奴らは俺の気配を感じてるようでコチラに向かおうとしてたので、『隠密』を直ぐ様発動させると大人しくなった。
俺は魔導鞄からパンと水筒を取り出して食事を取る事にする。腹が減っては戦も出来ぬからね。
俺は『眼』を呼び出したが反応は無かった。やはり向こうに置いて来てしまった様だ。う〜ん…『眼』と逸れたのはかなりの痛手だ。洞窟内も楽して調べられたのに…。
それにしてもこんな初見殺しの罠が張ってあれば中々生き残るのは難しいだろうなぁ…。俺は背中をかなり固めて有るので大事には至らなかったが…。そりゃあ帰るのがいなくても不思議じゃ無い。
しかし、一体どこら辺まで飛ばされたのやら…まだ知ってる国なら敵国だろうが構わないが、コレが全く未知の大陸とかだと軽く死ねる。
とにかくこの洞窟を脱出しなければ何も始まらないのでしっかりと準備をする。暗闇でも見やすいゴーグルの魔道具を装備する。魔力を目に集中すれば暗闇でもある程度は見えるのだけど、ずっと集中してるのも辛いからね。
洞窟を探りながら魔物を倒して行く…ここはマンティスの巣なのかな?出て来るのマンティスばかりだなぁ。
結構な時間彷徨いてると、微かに風を感じた…これって出口近くね?
俺は風の吹く方へと歩を進める。すると前の方が段々と明るくなってくる…出口キタコレ!!ゴーグルを外しながら明かりの方向に進んで行く。
やっと洞窟を出る事ができたが、周りは鬱蒼としたジャンルである……植物の種類でココが俺の住んでいたカルディナス領とは全く違う場所なのを理解する。軽く死ねる方だ…参ったなぁ…こりゃあかなり厄介だぞ……。
俺は範囲を一気に広げて気配を探る…何だ?凄いデカい魔力が2つあるぞ?どうやら戦ってるみたいだ。俺は改めて『隠密』を発動してから其方の方向に向かう。
そこに相対していたのはデカいオークと人間である。デカいオークは身の丈が3mは超えようかという巨体で、鎧を身にまといデカいウォーハンマーを片手で持って振り回している。
対する人間は青い眼と茶色の髪、冒険者風の格好で2m近い位の背丈…ゴンザレス隊長よりはスリムだなあ。デカいハルバートを軽々とぶん回してる。
かなり実力は拮抗しており、中々決め手が無い状況だ。
その内オークの仲間が集まって来たので、デカいオークも含めた全てのオークを【エナジードレイン】で指定し発動した。
そして冒険者風の男に襲い掛かるオークを『千仞(せんじん)』で底無し沼に嵌める。
そして『溶岩弾(マグマバレット)』で撃ち抜いていく。
デカいオークと冒険者風の男は驚いた様に魔法の発射された場所を見てるが『隠密』を掛けてる俺を認識出来ない。もちろん既に撃った場所からは離れて居るのだが。
「何処の誰かは知らねぇが助太刀感謝する!!」
おっ!言葉が通じるな!こいつはありがたい。
「そっちのデカいのも助太刀しますか?」
「それはオレがやる。他を頼みたい」
「分かりました。全て捕捉済みですので安心して下さい」
「ありがたい、じゃあコイツに集中させて貰う」
そう言うとその冒険者風の男がギヤを一段上げる。ハルバートの回転が上がりデカいオークはウォーハンマーで避けきれなくなり体中が切り刻まれていく。
俺はその戦いを見ながらオーク達に攻撃を仕掛けて倒してまわる。全てのオークを仕留めた時にデカいオークの頭にハルバートが突き刺さってぶっ倒されていた。
「おお!おっちゃん凄いね!」
「お、おっちゃん??」
俺は『隠密』を解除して冒険者風の男に姿を見せた。俺の姿を見た冒険者風の男は驚いた顔をしていた。
「俺はカルディナス侯爵軍4番隊のラダルだよ」
「カルディナス??聞いた事がある様な…無いような……オレはアシュトレイ、冒険者だ。アシュと呼んでくれ」
「じゃあアシュのおっちゃん、早いとこ解体しちまおうよ。その後は肉料理を作るよ」
「お、おっちゃ…まあいいか。ラダルはいくつだ?」
「俺は11歳だよ」
「……若そうだと思ったが…それならオレがおっちゃんになる訳だな…」
オークを血抜きして解体しながら肉を綺麗に部位ごとに切りそろえ魔導鞄に仕舞っていく。アシュのおっちゃんもデカいオークを綺麗に解体してる。流石は冒険者だ手慣れてるねぇ〜。
「こうしてオークジェネラルを仕留められたのもラダルのお陰だな」
「へぇー!これってオークジェネラルだったんだ!デカいオークだとは思ってたけど」
「ラダルはオークジェネラルを初めて見たのか?」
「うん、初めて。デカいけど思ってたよりも動きは遅いね」
「使ってるのがウォーハンマーだからな。両手剣を片手でぶん回されると結構な速さだぞ」
「ふーんそうなんだ…アシュのおっちゃんはどこから来たの?」
「ここから近いアムトレの村に滞在してるよ」
「じゃあそこに行く前に飯にしよう」
俺は魔道コンロと魔道鍋を取り出してオーク肉をさばき始める。作るのはスープとステーキだ。
「オイオイ…随分と本格的だな。ああ…魔導鞄か…なるほどね」
俺は肉に下味をつける為に薬草を使う。そうだ!ヘスティア師匠の新作を試すか。
アシュのおっちゃんは最初は驚いた様子で見ていたが段々と優しい顔になってきていた…何でだろう?
俺がステーキを焼く前にスープをおっちゃんに差し出す。
「俺の師匠の新作の味付けだよ。感想は聞かないからね!美味いに決まってるから!」
おっちゃんはスープを飲みながら目をつぶって何かを考えていたようだった。
「美味いな…」
「当たり前でしょ〜ウチの師匠の自信作だからね!!」
「師匠?」
「そうだよ。料理上手の美人さんだよ」
「へぇ〜それじゃあ紹介して欲しいな」
「うちの隊の奴らはことごとく撃沈したよ。オススメしないなぁ〜」
「ぷっ!ふははは!そりゃあやめとくか!」
うん、賢明な判断だと思うよ。まあ、強いだけなら何とかなるかもだけどね。
「んでね、アシュのおっちゃんに聞きたい事があったのだけど…」
「ん?俺にか?」
「うん、どうして攻撃魔法を使わなかったのかなぁ〜って思ってね」
アシュのおっちゃんは物凄くビックリした顔をしている。
俺から言わせればあれ程の魔力があって攻撃魔法を使わないのはゴンザレス隊長くらいなものだ。隊長は攻撃魔法があまり得意じゃ無いから使わないだけで使わないだけだ。まあ、必要も無いしね。
だけどアシュのおっちゃんは無理やり魔法攻撃を使わない歪な感じかしたので実に目立つ
訳で気付かない方が難しい。
「そりゃあ……魔法を使わずに勝つ方がカッコイイだろ?」
「は?」
何か凄く痛い人なのかな?つか魔法で勝つのってカッコ悪いのか?
「しかし、その若さで合成魔法を使うとは中々腕が立つな」
「へぇ〜、俺の魔法が合成魔法って分かったんだ。やっぱり魔法に長けてる人だったんだね」
「まあ、一応な。さて、そろそろその肉を食わせてくれないか?」
「はいはい…どうぞ。食べる時にコレも付けてみてね」
と、俺は独自ブレンドの薬草を入れた皿を手渡した。
おっちゃんは香りを嗅いだ後、オーク肉のステーキを薬草をつけながら食べる。
「なるほど、こりゃあ美味いな。売れるぞコレ」
「う〜ん…残念だけど売るほど持ってないよ。薬草もこの地にありそうも無いし…」
「そうか、ここら辺の植物は違うからか?」
「そうだね。気候や地質も関係してるのかな…俺の知る薬草は無さそう」
オーク肉にかぶりつきながらアシュのおっちゃんと話をした。
食事が終わってひと息つくのにお茶を入れる。
「その水筒は便利だな。魔導具なのか?」
「そだよ。魔石で水魔法を使えるから魔石を切らさなければずっと使えるよ」
「しかし色んな魔導具を次々と出すなあ。実家は金持ちなのか?」
「まさか、俺は農民出身だよ。魔導具は戦利品なんだ。街を落とした時に魔導具の店で手に入れたんだよね。店の中の魔導具を魔導鞄ごと全部頂いたからね、良い稼ぎになったよ」
「なるほど…そう言えばカルディナス侯爵軍とか言ってたな。魔導兵だったのか?」
「いや、魔法兵だよ。上位魔法使えないからね。一応、伍長だったけど」
「魔法兵だって?その魔力でか?」
「うん、魔力だけは大きくてね。だから低級魔法を沢山撃てるんで“底無し”って言われてたよ」
「ほう…二つ名持ちの伍長か。優秀だったんだな」
「まあね。さて、そろそろ村に行きたいんですけど…」
「そうだな。じゃあそろそろ行くか」
俺達は支度をしてアシュのおっちゃんと村に向かう事になった。
さて、これからどうなる事やら……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつもお読み頂きありがとうございます。
遂に第二章が始まりました!
どうやらラダルはかなり遠くに飛ばされたもようです。
そして第二章より新キャラクターのアシュトレイが出て参りました。彼には色々な秘密も有りそうですね!
彼と冒険を重ねて果たしてラダルは無事に帰る事が出来るのか??
乞うご期待です!!
フォロー300突破、星200突破しましたありがとうございます。皆様の応援で頑張れます!!
コメント頂きました。ありがとうございます。
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