転生魔法兵ラダルは魔力が少ない!だから俺に魔力を分けてくれ!
鬼戸アキラ
第一章 転生魔法兵誕生!
第1話 転生者はチートじゃないみたい…
「ラダル!!行けるか?!」
タイラー副長の声に俺は応える。
「あいよ!それ!『溶岩砲(マグマキャノン)』!!」
俺が杖で地面をぶっ叩くとその先からスイカ位の溶岩が200mぐらい先の敵陣に飛んでゆく。
どうやら敵陣の歩兵に着弾した様だ。
歩兵に当たった溶岩はその場に飛び散り更に被害を与える。
「よ〜し!そろそろ向こうの騎兵が来るぞ!槍隊構えろ!!」
奮戦している最前線の味方の歩兵を薙ぎ倒して騎兵が抜け出して来た。
俺は抜け出して来た敵騎兵を仕留める為に十分に引き付ける。
そして、後50mと言う所で魔法を繰り出す。
「喰らえ!『千仞(せんじん)』!!」
すると騎兵のすぐ前に2m☓6mの底なし沼が生成された…深さは2mだ。
当然、先頭の騎兵が底なし沼にハマる。そして次々と騎兵が連鎖して将棋倒しの様にぶっ倒れていく。
俺はその混乱のど真ん中に『溶岩砲(マグマキャノン)』を容赦無く撃ち込んでいく。
「よし!!槍隊突っ込め!!!」
大混乱を起こしている敵騎兵に槍隊が突っ込むのを見ながら良い頃合いに『千仞(せんじん)』を解除すると、『溶岩弾(マグマバレット)』で難から逃れた敵騎兵を狙撃して槍隊のサポートをする。
粗方片付いた後で前方の最前線を見遣ると、戦馬に乗ったウチの隊長が鬼神の如く巨大な赤い金棒をブン回して敵歩兵や騎兵を薙ぎ倒している。
俺はそのサポートに『溶岩弾(マグマバレット)』を撃ち込んで行く。
どうやらコッチ側は優勢に戦を進めている。他も何とか頑張ってるみたいだな…そろそろ敵さんが引き上げる頃合いだな。
「引けええ!!」
デカい声で敵将らしいのが敵兵達に声を掛けている。
俺は隊長がそいつに向かったのを見て『溶岩弾(マグマバレット)』をその敵将らしいのに撃ち込む。
敵将らしいのが最初の『溶岩弾(マグマバレット)』に気付いて剣で払ったが、飛び散った溶岩が戦馬や自分にかかり火傷を負ってバランスを崩している。
其処に連射した2発目が敵将の左肩にブチ当たる。敵将が戦馬から落ちた所に隊長が到着し赤い金棒で敵将を殴り潰した。
「敵将を討ち取ったぞ!!」
その声を合図に俺達の隊は逃げ惑う敵兵を追撃して行く。
こちらの隊が完全に敵陣を崩し、追撃戦になった事で敵陣は総崩れとなって撤退する事となった様だ。
俺達は倒した敵兵から装備や金目の物を拾って行く。『お宝タイム』コレが大事な収入源だからな…俺には少し大きい皮靴や脛当て、鎖帷子とデカい鉄の盾を拾って大喜びで戻る。
すると其処に隊長のゴンザレスに呼び止められた。
「ラダル…オマエは魔法兵なんだからそんなデカい盾要らねえだろ??」
隊長のゴンザレスに苦笑されながらそう言われる。
俺はそんな隊長にチッチッチと人差し指を振りながら言う。
「隊長、分かってないですねぇ〜。大きな盾は弓矢の攻撃から俺を守ってくれるのですよ!」
「バカタレ!そんな事は分かってらぁ〜。でもソレじゃあクソ重いだろが!そんなの持って走れんのか?ゴルァ!!」
ううう…そう言われると確かに隊長の言う様にかなり重い…俺の小さい身体では常に身体強化してないと駄目かも…ちょっとキツいかな。
するとゴンザレス隊長は俺の盾をひょいと取り上げて、その盾よりずっと小さくて丸い鉄の盾を俺の前に放り投げる。
「ソイツは敵将の持ってた盾だ。そっちの方が軽くて使いやすいだろ」
確かに俺が使うには悪くないサイズだな…でも敵将のだとかなり良い物なのではないかな?
「えっと…良いんですか?結構良い物みたいですけど…」
「敵将はお前のクソ熱いバレット喰らって殆ど相手にならなかったからな。お前が倒したようなもんだ。だからコイツと交換してやる、大事に使えや!」
「はは〜〜っ、有り難き幸せ。大事につかいまするぅ〜」
「何が『はは〜っ』だ!オマエは貴族かよ!バカタレが!」
すると周りの兵士達か笑い出した。
タイラー副長はやれやれという顔をしている。
解せぬ…。
こうして俺達ゴンザレス隊長率いるカルディナス伯爵領軍”4番隊”はこの日も被害は少なく死人は出なかった。
◆◆◆
俺の名はラダル。
カルディナス伯爵領軍の4番隊に所属する魔法兵である。
因みにカルディナス家は代々武門の出であり、コラード王国軍の中でもかなりの武闘派である。
その武闘派の領軍に入る事が出来たのにはちょっとした理由がある。
それを話すとしよう。
俺は農民の次男坊としてこの世界に産まれた。
家族は父と母と兄、そして弟と末の妹の5人である。
2歳のある日、俺は遊んでた椅子の上から落ちて頭に大怪我を負った。生死の境を彷徨った俺が気付いた時には前世の記憶が蘇っていた。
その記憶では俺は日本とか言う国でサラリーマンだった様だ。
30代半ばの独身で趣味がキャンプとゲームでアニメオタクだった俺は、まぁ女っ気は少なかったもののコミュ障でも無かったので、友達はソコソコ多かった。
ソロキャンの動画配信を流したり、バーベキューに行ったり、飲み屋で酒を飲みながらアニメオタクの友達とゲームやバカ話をするのが楽しかった。
もうすぐ誕生日と言う頃に交差点で信号待ちをしていた俺の所に車が突っ込んで来て…それからの記憶が無い。
それからの俺は魔法を覚える事に固執した。
アニメオタクの俺はこの世界に魔法がある事を知って、コレを使わない手はないと考えたのだ。
運が良かったのは俺には魔法の素質が少しあった事だ。身体強化を行い走ってみせた。
父と当時弟をお腹に抱えていた母は俺がイキナリ魔法を使った事を大変驚いていた。
そして魔法に詳しい村長に相談したのである。
昔、魔法兵だった村長はそんな俺に色々な魔法の知識を教えてくれた。
俺はそのうち属性魔法に目覚めた。一番相性の良い土魔法と火魔法、水魔法を使う事が出来た。何故か風魔法は全く使えなかったのでその派生である雷魔法は諦めざる負えなかった。
だが、俺の魔法量はかなり低かった。どんなに頑張ってもファイヤーボールを2個撃つと魔法切れを起こした。そしてその魔法量は何をやっても増えなかったのである。
その為に火魔法の派生である炎魔法は使えず、水魔法の派生である氷魔法も使えなかった。
土魔法は俺と相性が良く、バレットだけで無く出せる質量が小さいながらもロックウォールは扱えた。
しかし、派生の地魔法は使えなかったのでクエイクなどの範囲魔法が使えなかった。
この世界では派生の魔法が使えないと中位や高位の魔法が使えないのだ。
俺は考えた…何かのアニメで言ってた…魔法はイメージだと。魔法量が少ないなら外から吸収すれば?…そうだ、マジックドレインか!
しかし、マジックドレインは俺の魔法量では発動しなかった…そうだよな、相手の魔法力をぶん取るなんて圧倒的魔法量が無きゃダメだわな。しかも村長に聞くとマジックドレインの属性が闇と言う。しかもドレイン系はアンデッド専用らしい…そもそも闇魔法とかどの様に覚えるのか分からないし、正に無理ゲーだった。
散々悩んだ俺はある国民的アニメの主人公の技を思い出した。アレならイケんじゃね?
俺はそのアニメの主人公をイメージしながらこう心の中で念じたのだ。
”皆んなの魔力をチョットだけオラに分けてくれ!!”
コレに俺はブラックホールのイメージを足した。光を吸い取る様なイメージで魔力を集める…。
コレを繰り返すこと苦節3年、遂に俺は闇魔法の”ほんのさわり”だけ習得し、魔力を周りから少しづつ集める”魔力核”を生成する事に成功した。この”魔力核”を【ザ・コア】と名付けて魔力をゆっくりと集めた。そして俺の【ザ・コア】によって創られた『魔力玉』にかなりの魔力量を貯める事に成功した。
だが、俺は膨大な魔力量を手に入れたにも関わらず高位の魔法はおろか中位の魔法も使えなかった…使えるのは低位魔法のみだ。
それは簡単な理由だった。
何故なら『魔力玉』は身体の外に有り、見たくれの魔力量が多いだけで、俺自身の魔力量自体が増えた訳では無い事が原因だった。つまり『弾は無限に作れるが撃ち出せる武器が拳銃しかないので、弾丸は撃てるが大砲の弾やミサイルは撃てないよ』って事である。
それならファイヤーボール1000発連射で…と頑張ったが、今度はファイヤーボールを30個連射すると1時間位気絶して動けなくなった。どうやら連射すると俺の身体が耐えられずオーバーヒートしちまうらしい…。
俺は嘆き悲しんだ…何故こうなってしまうのか…と。最強の魔道士を目指していたのに全く魔力量が足りない。それを解決すればデカイ魔法は撃てず。ならば連射でと張り切ると今度はオーバーヒートと来やがる。
進退窮まったかと思った時にふとある事を思い出す。それはラノベのとあるマイナーなファンタジー。其処には主人公が危機的状況で編み出した”合成魔法”というモノがあった。
(そうか!合成魔法なら低位魔法でも…いやむしろ低位魔法の方が御し易いはずだ!)
俺は魔法を合成させる為に恐ろしく緻密な魔力操作の反復を一日中行った。そして苦節2年…遂に土魔法と水魔法の合成に成功したのである。
1度成功してしまうと2度目は簡単なモノだった。
次に行ったのは火と土魔法を合成する事。俺は直ぐに燃える石を撃ち出す事に成功した。しかし、どうもイメージと違う…俺のイメージは溶岩だったのだ。しかし、出来たのはタダの燃える石だった。
何が足りないのか…そうか、溶岩は流れるじゃないか、ならば水魔法も必要なのか?と。
其処で3つの属性魔法を合成するという無茶をしてみたのだ。最初は当然上手く行かない…それはそうだろう、水と火は相反する属性で相性が悪いのだ。
俺は色々と考えて水魔法については流体のみを動かすという結論に達する。つまり燃える石を液体として考えるイメージを持って魔法を合成させると言う完全な”屁理屈”を持って事に臨んだのである。
結果から言うとそれが功を奏してドロドロの溶岩を作り出す事に成功した。
其れを出来るだけ大きくして飛ばすのが『溶岩砲(マグマキャノン)』で、出来るだけ小さくしてドリル状に…そう、拳銃の弾丸を飛ばすイメージにして射出するのが『溶岩弾(マグマバレット)』だった。
そして、もう一つが最初に成功した土を泥に変える水と土の合成魔法、横6m☓幅2m☓深さ2mの体積を泥に変える『千仞(せんじん)』つまり”底無し”の意味である。
最初は2m角の体積しか泥に出来なかったが、長さを変えたり深さを変えたりと体積変化を練習する内に範囲が広くなって来たのだ。
因みに俺は土魔法はバレットとロックウォールが使える。ロックウォールは土の体積をそのまま動かす魔法なので色々な形に変える事をひたすら練習する事で体積変化をモノにしていたのだ。その体積変化を水魔法と土魔法の合成魔法に応用した集大成が『千仞(せんじん)』であった。
合成魔法を編み出してからはそれ等をいかに速く発動させるかを修行する事に専念した。
そして魔物を狩りながら魔法の発動を速くするのをひたすら練習した。
俺の育った村の北側に『還らずの谷』と呼ばれる場所があり、其処には多くの魔物が住んでいた。
俺はココに通い詰めて魔物を間引きながら魔法の練習を重ねた。
魔物をおびき寄せ『千仞(せんじん)』で魔物を捕えては『溶岩弾(マグマバレット)』でとどめを刺す。朝から魔法の練習をしながら狩り、そして昼はそのまま倒した魔物を焼いて食べ、夕方には血抜きした魔物を担いで家に帰った。
更にこの谷の奥には『黄泉の湖』という湖があり、ワニの魔物が沢山住み着いていた。
こいつ等は『千仞(せんじん)』では動きを封じれず泥を越えてそのまま襲って来る。そこで俺はこの湖で『溶岩砲(マグマキャノン)』の練習を重ねた。
最初は拳の一回り大きなものだったが、溶岩の粘度を高くして撃ち出す事により段々と大きくなった。
俺の『溶岩砲(マグマキャノン)』の直撃を喰らってワニの魔物が焼かれると同時に、周りの魔物にも飛び散った溶岩がかかるので大混乱を起こしている。
其処に更に『溶岩砲(マグマキャノン)』を撃ち込んでワニの魔物の死体の山を築いた。
それからは俺を発見するとワニの魔物が湖の奥に逃げる様になった。
その為、ワニの魔物が頭を出した瞬間に『溶岩砲(マグマキャノン)』を狙い撃ちする様になり、撃ち込みの命中精度が上がって行った。
また、ワニの魔物を仕留めても横から掻っ攫う鳥の魔物がおり、ソイツを倒す為に『溶岩弾(マグマバレット)』の早撃ちと命中精度と飛距離を鍛え上げる事となった。
父と母は『還らずの谷』で魔物狩りをしているのを心配をしていた様だが、俺に止めろとは言えなかった。貧しい農家のウチでは大した稼ぎは無い。兄は口減らしの為に自ら鍛冶屋の修業に出ていてまだ給料は無いに等しく、弟と3年前に産まれた幼い妹がおり、苦しい家計を助けていたのは俺の狩った魔物の素材や肉だったからである。
俺も家族が魔物を狩って帰ると喜んでくれたのが嬉しかったし、家族皆んなで腹一杯食べる夕食が何よりの楽しみだった。
だから、なるべくお金に困らない様にと時々村にやって来る旅商人に素材を売ったお金は全部母に渡していた。
夜は毎日、弟と妹が寝るまで簡単な計算や文字を書いたり読んだりする遊びをさせてコッソリと勉強を教えた。
読み書きそろばんが出来れば必ず役に立つと考えての事だ。
そんな生活をしていた2年目のある日、俺の運命を決める出来事が起こったのである。
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