第43話 レイ君最近影薄く無い?

今日も僕とレイ君はいつものように僕の部屋でくつろいでいた。


レイ君はあいかわらず僕のベッドで横になり漫画を読んでいた。

僕は最近買ったお気に入りの、人を駄目にすると噂のビーズクッションにもたれかかっている。


ビーズクッションが人を駄目にするんじゃない!

もともと駄目な人間がビーズクッションを使っているんだ!


結局、僕が駄目な人間という事に気がついた。


「ねえ、レイ君ちょっと聞いていい?」

「駄目だ。」


「ちょっといいにくい事なんだけどさ。」

「駄目だと言ってるのになぜいいよという前提で続けてるんだ。」


「レイ君最近影薄く無い?」

「えっ、ちょっと何言ってくれてるのゆずる。」

レイ君が慌ててベットから起き上がり腰掛ける。


「その意見には断固として反論するぞ。」

「だって最近全然対価交換してないし、復讐依頼もないし、普段レイ君って何してるの?」


「確かにオレの能力なら病気や怪我で困った人達をバンバン助けてあげる事なんて造作も無い事だ。」

「そうそう、僕も色々な人をバンバン無償で助けてあげたりなんかしてかっこいいいいいって展開かなと思っていたんだけど…」


「みんながみんな善人だったら俺もこんなに悩んだりする事無かったんだけどな。」

「お店に来るお客も8:2ぐらいの割合で自分勝手なゲスい客が多いもんね、体感的に。」


「はいはいはいはい、ゆずるもそう思ってくれてて嬉しいよ。まだ日の浅いゆずるでもそう感じるんだもんな。長年続けてるオレならそれ以上にむなしさを感じてるって事は言わなくてもわかるだろ?」

「確かに。僕ならこんなにゲスい客ばかりに囲まれたら地球を滅ぼしてもいいかなって思うもん。」


「オレも何回地球を滅ぼそうと思ったか。何度も何度も思いとどまったオレを褒めて欲しいよ。」

「ありがとうレイ君。他の多くの何の罪も無い善良な人達をも巻き込もうとしたけど思いとどまってくれた事に感謝しかないよ。」


「なんかトゲのある褒め方!」

「そりゃあ来るお客の8割がゲスだとしても、実際ゲスい奴らは全地球の比率でいったら4割くらいでしょ。」


「いや、全人口の4割ゲスい奴らってもう地球滅ぼしてもいいレベルだよ!登場人物全員悪人だよ。」

「アウト●イジか!」


「本当に無償にしてもいいが、人間というのは欲に際限のない生き物なのさ。初めは感謝しても何度も何度も欲求は高まる。そしてそれを断ると恨む憎む負の連鎖だ。」

「それじゃあ何もしない方がいいよね。」


「まあなだから全財産の10分の1を報酬としてもらっているんだ。」

「ああ、それ僕もどうしてかなって思ってたけど。」


「一番平等な対価じゃないか?固定金額にすると金持ちにとって1000万円は大した事の無い金額かもしれないが、お金のない一般人にとっては大金すぎて払えないだろ。それだと客層が偏りすぎて意味がないから一律全財産の10分の1にしているわけだ。」

「なるほど。それだと所得に応じた対価になるわけだから平等といえば平等だね。多いか少ないかは別にして。」


「まあ実際欠損なんかは全財産もらっても安いだろ!」

「ありえない奇跡だからね、この世界では。わんさか押し寄せるでしょ。」


「ああ、だから欠損は内緒にしてる。」

「もちろん臓器交換や怪我を治す事自体もありえない事だけどね。」


「そうだな、つまりオレ自身がすごい奇跡の塊なわけだ。」

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」

僕はレイ君に手を合わせお経を唱えた。


「拝むがいい!信仰するがいい!オレを崇めよ!ぐわはははは。」

「信者会員番号0001番、神崎ゆずる18歳よろしくお願いします。」


「貴様はダメだ、ぐわはははは。」

「まさかの即お断り!拝んだにもかかわらず。拝み損!」


「奇跡の塊であるオレに(最近影薄く無い?)などと暴言を吐くからだ!」

「全然薄くありませんでした、すみませんこれで許してくれますでしょうか?」


「ダメだ、美人なお姉さましか入会させん!」

「ゲスな動機!僕の暴言関係なし!」


「冗談はさておき、昔は本当に教祖に祭り上げられそうになった事があるからな。治療した人達に。」

「あっやっぱり?そりゃあ僕たち地球人にしたら神様だと思われてもしょうがないくらいの奇跡でしょ、病気を治すだなんて。」


「治すといっても万能ではないし、寿命は伸ばせないんだけどな。」

「そうなの?僕はレイ君が交換し続ければ永遠に生き永らえれるかと思っていたよ。」


「そんなわけ無いだろう。いくら交換して治そうがその人の寿命は決まっている。だから体が健康でも死ぬ。」

「まぁレイ君は不死を頼まれても絶対にやらないと思うけどね。」


「ふっ特別にゆずるにだけはやってやってもいいぞ。」

「お願いします。」


「はやっ!さっきゆずるが自分で頼まれても絶対にやらないって言ってたのに?絶対に断ると思ってたぞ。」

「そりゃあただ命を永らえるだけなら嫌だけど…」

確かに僕一人だけで生き続けるならお断りだけど…


「レイ君やこころが一緒ならこの先もずっと一緒にいてもいいかなって。」

僕はとびっきりの笑顔でいい事言った風の顔をした。


どやさ〜〜〜

そんな僕をみてレイ君は笑いながら


「そうだな、みんな一緒ならいいかもな。ゆずるだけ特別におじいちゃんになってから永らえれるようにしてやるよ。」

「いや、若いうちにしてくれませんか?おじいちゃんになってからだと色々とハードモードなんで。」


わいのわいのみんなでたわいもない話をしているだけで

僕の心は満たされる。

こんな日がずっと続けばいいな。


しかし、穏やかな日は長く続かなかったんだ。

僕たちの運命の日がもうすぐそこまで来ていたから…

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