第41話 魂を傷つける行為に制裁を
「今から100数える間に逃げていいわよ。その間は私も追わないわ。」
私はお気に入りのラタンチェアに座りながら言った。
ゆずる曰くエマニエル夫人チェアと言った方がイメージしやすいらしいが。
「調子にのるなよ、このクソアマが!」
刺青の男がわたしの顔に向け
本気の右ストレートを繰り出してきた。
ピチュンーーーーーーーーーーー
男の体が崩れ床に膝まずく。
右足のつま先第1趾、第2趾がえぐれて3本の指しか残っていない。
ピチュンーーーーーーーーーーー
次に男の右耳の耳たぶとその周辺がえぐれる。
「ぎいいひぎゃあああああああああ」
「あら、まだ逃げてなかったのあなた達、しょうがないわね。
じゃあこの男から先に片付けるから、次にあなた、最後に翔太ね。
逃げなければ逃げないでいいけど、それでは面白くないからなるべく逃げてね。」
私がそう言うとやっと理解出来たようで、倒れる男を残して一斉に外に駆け出した。
ピチュンーーーーーーーーーーー
「あなたは逃げられないわ。あなたがいけにえなのだから。」
倒れた男も這いずって逃げようとしたので、反対の左足のつま先第1趾、第2趾をえぐった。もう立てないだろう。
「ふーんあなたの人生には全く興味はないんだけれども…だいぶ自分勝手に生きてきたのね。暴力に暴力の生活。その場その時が楽しければいいという刹那的な虫けらのような人生観ね。」
「な、なんだお前は…化け物かよ、どうやって俺の足を。」
「魔法よ。私魔法を使えるの。」
「ふざけるなよ!そんなの…」
ピチュンーーーーーーーーーーー
右手の小指、薬指を中心にえぐる。
ピチュンーーーーーーーーーーー
左手の小指、薬指を中心にえぐる。
ピチュンーーーーーーーーーーー
「ぐぎゃあああああああ」
男が痛みでのたうち回る、血と涙とおしっこでぐちゃぐちゃだ。
「あと指は12本も残っているじゃない。よかったわね、まあこれからの生活には支障が出るでしょうけど。」
「ぐあああああんんおおおおんんん。」
ピチュンーーーーーーーーーーー
男の左耳の耳たぶをえぐる。
「ぐえっえええ」
「少しは我慢しなさい、男の子でしょうに。そんなに両腕に刺青いれてイキって強がってみせてるんだからこのぐらいの痛みなら我慢できるでしょう。少し静かにしてくれないと私の言葉を聞き逃すわよ。」
「ぐっぐふう。」
男は少し声が小さくなった、我慢出来たようだ。
「安心してあなたを殺しはしないわ、私の気分次第だけど。ただ、これから悪いことができないように両手両足は使えなくしておくわね、一生。よかったわねこれからも生きれて。」
私が笑って言ってあげたのに男は絶望した顔のまま、声を上げて泣き出した。
「もう2人追いかけないといけないから、ちゃっちゃと済ますわよ。じゃあ、2度と会うことはないと思うけどさよなら。」
絶望の絶叫と泣声は防音の部屋に阻まれ表にまで聞こえることはなかった。
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ピチュンーーーーーーーーーーー
「はい、み〜〜〜つけた!刺青男その2ゲット!」
2人目はあるクラブのVIPルームに逃げ込んでいた。
「な、なんでここが?下の連中はどうした。絶対誰も通すなって言っておいたのに。」
私はその質問には答えず、
刺青男その2の近くのソファーに腰を下ろした。
「あなたそんななりしてるけど、いいところのおぼっちゃまなのね。案の定、親もろくなもんじゃないみたいだわね。さっきのマンションといい、ここのお店といい今まで随分悪さをしてきたのね〜。」
「俺は何もしていない。場所を提供してただけだ。」
ピチュンーーーーーーーーーーー
男の右肘から下が消えてなくなる。
「あああああああああああああああああ腕がああああ」
「嘘はいけないわよ、右腕はその代償よ。」
「なああああんんでえええええ。」
「あなたも他の人と一緒になって、いえむしろあなたの指示でたくさん女性を追い込んでいるわね。」
「ごめんなさいごめんなさいもうしません。ゔぉうじまぜんがらあああああ」
「今まで何人の女性が許しを請うたのかしら?その内あなたが何人の女性を許したか知っている?」
ピチュンーーーーーーーーーーー
ピチュンーーーーーーーーーーー
男の左指5本全部、右頬をえぐる。
「ぐぎいいいいいいいいいいいいいたいたいたいたい。」
「0人よ、残酷よね。本当ならあなたは殺してもよかったけど生かしておいてあげる事にしたわ。多少生活がしにくくなるでしょうけど、あなたお金持ちだから大丈夫よね。まあこれからあなたの一族は経営が傾いていくと思うけれど。」
私は立ち上がって、床に這いつくばって転げ回っている彼を見下ろしながら告げた。
「今度会ったら、もぐからね(ハート)。」
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ガチャ、バーーン、ガチャガチャ
「翔太おかえりー、遅かったわね。冷蔵庫の物勝手に使ってご飯作っておいてあげたわよ。って言ってもほとんど何も入ってないから本当にちょっとしたものだから味の保証はしないわよ。」
「なっなんでお前がああああ、なんでこころが家にいるんだよおお」
ちょっとしたホラーだろう。
追ってきている女が自分の家でご飯を作って待っていたら。
「まあまあせっかく作ったんだから座って食べなさいよ。」
「ほ、他の2人はどうしたんだ?やっ殺ったのか?」
「殺してないわよ。まあかろうじて生きてるって言った方がいいかもね。」
「ひっ…」
「一人暮らしなのね、親御さんは?兄弟は?」
「い、いない。俺は施設育ちだ。」
「ふーん、ありがちな設定ね。俺は愛情に飢えているんだって言いたいパターンね」
「な、なんなんだよお前は何者だ。昔は気の弱そうなおとなしい地味な奴だったのに、いきなり人が変わったように明るく社交的になって顔つきまで変わってよ。まるで別人じゃねーか化け物に取り憑かれているのか!」
「おー正解!別人だよ私。」
パチパチパチパチと拍手をする。
翔太はあっけにとられている。
そりゃあそうだろう、そんな話信じられるわけない。
「比喩じゃなくて本当に私は思い出したの、もともとあった別人格の私を。奥底に封じ込めたれてた私を思い出しただけ。これが本当の私なんだよ。でも化け物はひどくない?」
「ひっ」
翔太は顔を青くして怯えているようだ。
人は皆自分に理解出来る範囲外の事を体験すると
たとえそれが目に見えないものにでも恐怖を感じる。
いや、見えないからこそ怯えるのか。
私は何とか翔太を落ち着かせ、テーブルにつかせた。
そして私が作ったコンソメスープを2人で一緒に食べ始める。
「大丈夫だよ毒なんて入っていないわよ、最後の晩餐だから。」
「ずずっ…最後の晩餐…死ぬのか…俺。」
「うん、死ぬの。」
「そうか…ずずっ何か全く実感が無いな。」
「あのね、私にとっては生かす事より死なせる事の方が救済なの。」
「救済?」
「翔太はまだやり直せるよ、魂がそこまで腐ってない。他の2人はもう手遅れだから苦しんで生きてもらう事にしたの。簡単には救済させないわ。」
翔太は椅子を降り、床に土下座しながら私に謝る。
「今までした事は謝る、他の女にも回って謝るから。正直こんなクズな俺でもまだ生きていたい、生きたいんだ!お願いします、許してください!」
頭を上げた翔太は真剣な眼差しを私に向けた。
「生きたいんだ、うーーーん。翔太にこんな事言っても分からないかもしれないけど死んでも新たに魂の流れに沿う事は自分自身を救う事と同義なの。決して死=0では無いわ。むしろこのまま生きて寿命を全うしてもあなたは幸せにはなれない。仮に今改心したとしてもこの短い18年間で犯した罪もたくさんあるし、あなた自身も自分の境遇を悲観しているからね。」
「………。」
「罪っていうのは日本の法律を冒す事ではなくて、魂を傷つける行為なの。あなたはまだ間に合うわ。」
「………。」
私は席を立ち玄関に向かう。
後ろを振り返り今は誰もいない、彼がいたテーブルをみやる。
そのテーブルには飲みかけのスープだけがそのままの状態で置かれていた。
「次は間違わないようにね、おやすみなさい。」
ガチャ、ギイイイィィィィ バターン。
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