第36話 神崎ゆずる18歳攫われる
僕は神崎ゆずる18歳。
外観は中肉中背、顔はみんなからは優しそうだねってよく言われる。
特に可もなく不可もない平凡な男によく使われる慣用句だ。
無いなら別に言わなくてもいいんじゃないかなとも思わなくもないが
優しそうだねと言われたら言われたで嬉しい。
そんなとりあえず言っておけば無難な言葉に踊らされるお年頃だ。
例え、顔が平凡だから褒めるところ無いんだなと分かってはいても、
この娘はいける!と勘違いさせられるお年頃なのだ。
YES、NO枕を持っておけ!まぎらわしい!
そして一番強調したいのが、僕は外見、顔とも平凡だが
性癖もものすごく平凡なのだ。
つまりノーマルなのだ。
アブノーマルなどではない。
決してアブノーマルを批判しているわけではないことを断っておくが、
アブノーマルを認めるが、僕自身は受け付けないという事なのだ。
強引に勧めてくる人もいるだろうが、
僕には無理なのだと強く主張しておく。
健全なエロスを体全体に宿す男、
神崎ゆずる18歳。
それだけは覚えておいてください。
そんな僕は今目隠しをされている。
手足をガムテープでぐるぐる巻きにされ
たぶん車のトランクに入れられている。
そして高速道路を走行しているらしい、たぶん。
目隠しをされると他の五感が敏感になる。
アブノーマルな人が目隠しプレイを好きになるのもわかる。
だけど僕はノーマルなのだ。
目隠しプレイヤーなんていうアブノーマル上位者などからみたら
僕なんか底辺のノーマルプレイヤーゆずるなのだ。
何て事を考えながら気を紛らわせている。
絶賛身柄攫われ中なのである。
正直めっちゃ怖い。
攫われるなんて初めての事なのだ。
レイ君の仕事を手伝ってから何度も荒事はあるが
僕自身が攫われるのは初めてだ。
レイ君は僕には言わないけど何回も攫われているらしい。
アブノーマル上位者なのだ彼は。
僕が事務所から外に買い物に出てすぐに強面の男3人にぐらいにワゴン車に押し込まれて目隠しされた。
まあ、こころさんじゃなくて良かったんだと思う事にしよう。
今僕の身の上で一番緊急事態なのはこのトランクでおしっこしてもいいですか?
って聞きたいぐらいに膀胱がパンパンな事だ。
あと1時間ぐらいは我慢できるがもうすでに膀胱がパンパンです。
どうしたらいいだろう?
ここで漏らす事はしょうがないんじゃないかと思う。
だって急に攫われたんだもん。
生理現象なんだもん。
急に攫う方が悪いんじゃ無い?
事前に言ってくれれば体調を万全にして
膀胱を空っぽにして待っていたのに。
だからいざとなればこのまま…
手足を縛られ目隠しをしたまま車のトランクで
おしっこを放出しようと思う。
逆にうんこじゃなくてありがとうって褒められると思う。
絶対いるよね、そういう人も。
今僕の頭の90%は膀胱の事で占められている。
この後暴行されるとも知らずに…
助けてレイ君!
僕の膀胱がああああ
頑張れ僕の内尿道括約筋!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やっと着いたようだ。僕は引きずられている。
めちゃめちゃ痛い。
摩擦熱でおしっこを我慢してる事を忘れそうなぐらい痛い。
ズザザザザーードガッバキッ
うわっマジか、
いきなり放り投げられたと思ったら、
囲まれて足蹴にされた。
しかも準備運動的な蹴りだ。
これからが本番だな展開だなこりゃあ。
「ぐぐぐっぐはっ」
とりあえず声を我慢した感じで呻いてみました。
嘘つきました。本当に呻きました。
めっちゃ痛いやん。
泣いていいですか?
無抵抗の人間に無告知、無許可で暴力とは、
一言言ってやらねば!
「膀胱がパンパンなんです。下腹部はやめてください!出ちゃいますよ、いいんですか?」
ドガッバキッ
また蹴られた。
だけど下腹部を避けてくれてるみたいだ。
優しい〜〜〜。
っていうか漏らされるのが嫌なだけだと思うけど。
「やめてください!なんでうっううなんでこんなひどい事をするんですか。何の目的でうううっ」
僕は泣いたふりをした。
涙は出ていないが目隠しされているのでわからないだろう。
さあ、何で僕を攫ったか話してご覧。
目隠しされたまま髪の毛を掴まれぐいっと持ち上げられた。
毛根が痛い。やめて!そこだけ禿げちゃう。
「恨むならレイって奴を恨むがいい。俺たちは復讐を頼まれただけだ。まずはじめに従業員であるゆずるってガキとこころっていう女を痛めつける。もちろん女は犯し回した後売りさばく。そして最後にレイってガキを殺る。」
「いったい誰に頼まれたんで…ぐぼっ」
「しゃべるわけないだろう。まずはお前からなんだよ。言い忘れていたが男色の奴もいるからお前もさんざん犯し回した後に売り払ってやるよ。くくくくく。」
「たすけてーーーーーレイくーーーーん。」
僕は大声で叫んだ。
貞操の危機なのだ。
アブノーマルの危機なのだ。
さんざん冒頭でノーマールアピールしたのに
それも今や風前の灯火。
嘘だろう、まさか自分が
“押すなよ、押すなよ、絶対押すなよ”の前振りをやっていたなんて。
絶対嫌だ。なりふり構っていられない。
僕は大声でレイ君に助けを求めた。
「うるせええええ!黙れクソガキが」
ドカッバキッ
容赦なく男たちに蹴られまくった。
さっきまでの優しさはどこに。
下腹部にも容赦がない。
絶対後でこいつらに放尿してやるぞ。
僕は心に誓った。
「助けを呼んでも来るわけないだろうがよっっと。」
ヘラヘラ笑いながら蹴られる。
「くっくくく、あ〜はっははは来れるわけがない?
誰がそんな事をいったんだ。レイ君はもう来ているだろうほら、すぐそこに!」
「何!」
5人の男たちが一斉に各々の後ろを見渡す。
「お前たちには見えないのか?ほらそこにいるだろう。レイ君こいつらを早くやっつけてくれ!」
僕は倉庫の隅の方に向かって叫んだ。
男達も一斉に倉庫の隅に向かって身構える。
……………………………………
……………………………………
「えっいるよね?いるんでしょう?レイ君?本当にいないの?うそーん。」
絶対居ると思ってたけど、まさか本当に僕が拉致られた事に気づいてないの?
ほら、謎システムで僕の場所分かるんじゃ無いの?
「脅かしやがって誰もいないじゃねーか。そんな戯言も吐けないように予定変更して徹底的に痛めつけてやるよ。」
男が僕目掛けて拳を叩き込んできた。
「ケ〜〜〜〜〜〜〜ン」
僕はありったけの力を込めて
某パチスロのように胸に七つの傷を持つ男の名を叫んだ。
届けこの思い!
「誰がケンだ、誰が。」
「なっお前は…どこから現れた!」
そこには白いスーツのレイ君が倉庫の入り口を背に立っていた。
いつのまにか主犯格の男以外の4人は床に転がされていた。
「い、いつの間に…」
主犯格の男は驚きレイ君の前で唖然としている。
「お前だけは生かしておいてやる。まあ死んだ方がマシだと思うほどの拷問をして洗いざらいしゃべってもらってから殺すんだけどな。」
「ううっあああっっ」
男は力が抜け足から崩れ落ちて床に尻餅をついた。
どうやら格の違いを見せつけられて戦意を失ったようだ。
「レイ君ありがとう。でも本当に居ないかと思ってあせったじゃないか。なんでもう少し早く助けてくれなかったのさ。」
僕はほんのちょっとだけ文句を言ってみた。
「悪かった。確かに出て行くのが遅かった謝るよ。でも信じて欲しい、ちゃんとゆずるがおしっこ漏らしたらすぐに駆けつけるつもりだったんだ。だけど思いの外ゆずるの膀胱が頑張るもんだから、見届けたくなって…本当にスマソ。」
「いや、そんな理由?確かに膀胱パンパンになっても頑張っていたけれどもよ。後、全然悪いと思ってないでしょう。最後にスマソって“ン”が“ソ”になってるし。わざとでしょ。」
「スマソ、スマソ」
はい、確信犯!
僕は一通りレイ君にツッコミ終わった後、
先ほど心に誓った通りに
膀胱に溜まりに溜まった、なみなみならぬ量のアンモニアを
寝転がっている男達に向かって放出した。
2リットルは出た。
あ~~スッキリした、2つの意味で。
スマソ。
帰る前にレイ君が僕に向かってボソッと
「ゆずるはアブノーマルな趣味をお持ちだな。」
とつぶやいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます