第17話 ダンジョン②

「さ〜〜〜〜〜〜い悪だ!メンタル削られ〜〜〜る。」


ダンジョン2日目、今日も僕はフェイと一緒に朝6時から入っている。

だって1日8時間×時給1000円は無いと生活が苦しくなってしまうから

1日8時間労働をノルマとして頑張っていこうと決心したのだ。


だがダンジョン突入1時間でもう心が折れそうだ。

昨日のスライム無双地帯を抜けて、今回踏み入れたのは

これまた定番中の定番ゴブリン階層なのだ。


う〜〜んその、アニメとは違ってリアルなんだ。

もちろん初っ端のスライムで理想と現実は違うってわかっていたよ。

でもやっぱり生理的に無理って感じかな。


ゴブリンは身長60〜80cmぐらいで体型が子供のお腹ぽこんって感じなのよ。

でも顔が、顔がどちらかというと猿寄りで耳が尖っていて、長い舌が出っぱなし。

呼吸が「ウホッフホッ…ゴブゴブ」って言ってる。


…ごめん、ゴブゴブっていうのは嘘です。

勝手に付け足しました。


そんなゴブリンと初対決。

黒光りしたひのきの棒で1対1での対峙。


ひのきの棒でゆずるの攻撃。

ひのきの棒でゆずるの攻撃。

ひのきの棒でゆずるの攻撃。

ひのきの棒でゆずるの攻撃。


タコ殴り。


ひのきの棒でゆずるの攻撃。

ひのきの棒でゆずるの攻撃。


なかなかしぶとい。


ひのきの棒でゆずるの攻撃。

ひのきの棒でゆずるの攻撃。


ずっと俺のターンだけど丈夫いね君。


殴る事9回目にやっとダウンそして消失…

黒光りしたひのきの棒が真っ赤に染めあがってる〜〜。


「絶対無理〜〜〜〜メンタル無理〜〜インストゥルメンタル〜〜〜」

ごめんインストゥルメンタルって歌詞や歌唱のない、音楽だけっていう意味だった。

勢いだけで、つい。


めちゃめちゃグロいやん。


殴る度に赤黒く顔が腫れてくるし、グロイし、めっちゃリアルだし。

何かこう、一方的に打撃を加えているとねえ?

弱者をなぶり殺し感が…ねえ?


あと、小説やゲームと違って手に残るいや〜〜な感触が堪える。

今までの僕の人生では味わったことのない感触だな。

ボグッボグッって…


最後になかなか倒れない事による疲労感だろうか。

終わりのみえない作業ほど心が削られることは無い。


以上の事を部屋に戻りレイ君に訥々(とつとつ)と、長々(ながなが)と、くどくどと訴えたら、うんざりした顔で僕にショートソードをくれたよ。

くどくど言ってみるもんだね。


でも、レイ君が投げ放ったショートソードは

綺麗な放物線を描き僕の足の親指と中指の間に刺さったよ。


3滴漏れたよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いえ〜〜いショートソード最高!」


今までの無慈悲な撲殺マシーンゆずるから瞬殺マシーンゆずる2号へと進化した。

スパーンという感じなのだ。


今までのように目のハイライトが消えるまで作業しなくても、

ショートソードを横薙ぎするだけで首だろうが胴体だろうが、

一振りでスパーンと切れて絶命するので、

体にも心にも優しいのだ。


絶命してすぐに消失し魔石を残すので、グロい場面を見なくても済むしね。

心から安堵していると珍しくフェイから話掛けてきた。


“キッュピー(実はあまりにもゆずるが辛そうだったから魔法をかけてあげてたんだよ)”

「えっそうなの。どんな魔法?」


“キッュピー(精神系の魔法でグロ耐性が強くなるんだよ)”

「だから、殺してもあまり気にしなくなってたんだ。」


確かに最初はいくら異世界の魔物だからといって、

日本人として過ごしてきた倫理観はなかなか克服できるものじゃない。

このまま殺し続けると僕の精神が崩壊しちゃうんじゃないかって心配してたんだ。


「そうか、フェイありがとうね。」

“キッュピー(お安い御用さ!でもね…)”


「うん何?」

“キピッュピー(精神系の魔法をかけ続けると頭がおかしくなるよ)”

ぶぶぶぶーーーーっ何ぶっこんでんのフェイ?


“キッュピピピー(あ、言い間違えた。頭が汚染されておかしくなるよ)”

「何も言い間違えてないよ!頭がおかしくなる一択だよ。」


“キッュピー(ゆずるの為によかれと思って!)”

球体のフェイは可愛らしく小悪魔的に体をかしげてキューっと鳴いてみせた。

いや、球体だからかしげてもわかりませんけどね!


“キッュイー(回復魔法をかけたからこれで大丈夫。危なかったね)”

お前のせいじゃ。お前が僕を殺しにかかってるんじゃ!

とはおくびにも出さず。お礼を言っておいた。


まさか、僕はダンジョンの魔物と戦うだけでなく、

身内だと思っていたフェイとも戦っていたとはつゆ知らず

ゴブリンとの戦いはお昼休憩をはさんで合計8時間続いた。


今日も激闘を終え(援護射撃だと思ったらわざと味方を攻撃してましたけどね。)

無事に部屋へと戻ってこれた。


いつものごとくレイ君は僕のベッドで漫画を読んでいたので

魔石の換金を頼んだ。


ゴブリン121個、スライム15個で合計10430円だった。

なんとゴブリンの魔石が1個80円だったんだぜ!

スライムが1個50円だったから30円もアップ!

160%もアップだ! いえ〜〜〜い!


「って子供のお小遣いか!喜んでる場合か!」

「何怒ってるんだよゆずる。1万円も稼いだんだすごいじゃないか。」


「1万円はすごいけど!費用対効果的に僕のお気持ち的には大損だよ!」

「本当にわがままだな〜ゆずるは。わかったわかったこれも付けてやるよ。」

特別だぞと言ってレイ君は僕に一枚の紙切れを渡してきた。

その渡された紙切れをじっくり見ると…


「チョコボールの金のエンゼルなんかいるか!」

僕は床に叩きつけた。


「ちなみに金のエンゼルの出る確率は0.06%。1500個に1個らしいぞ」


僕は叩きつけた金のエンゼルを拾い上げ、すぐ応募した。

50周年記念の金のキョロちゃん缶をもらった。


いえ〜〜〜〜〜い!




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