第19話
悪霊に包まれて姿を隠したり、悪霊と一緒に他人の部屋に侵入したり、あの女の人と悪霊の一体化が進んでいる気がする。
このままでは……
「時音!」
おかあさんの通報によって警察が駆けつけてきた後、悠斗と涼を連れた修司さんがやってきた。
「何があった!?」
涼があたしの首に残った指のあとを目にして怒りに顔をゆがめる。
「時音。きみを襲ったのは、この女性か?」
修司さんが懐から一葉の写真を出してあたしに見せた。
そこには、近隣の普通高校の制服を着た、あの女の人の少し若い姿が写っていた。
「この人です」
「そうか……」
修司さんは眉を曇らせた。
「水川エリサ。水川マリアの姉だ」
やっぱり。
あたしはぎゅっと唇を噛んだ。
「どうして、人魚姫のお姉さんが……?」
悠斗が信じられないといったようにつぶやく。
「どこのどいつでもいいけどよ。なんで、時音が狙われたんだ?」
涼がベッドに腰掛けたあたしの肩に手を置いて言う。
あたしはあの女の人のうつろな目を思い出して、ぶるっと震えた。
「……グロウス」
「え?」
「たぶん、あたしがグロウスの生徒だって知って、それであたしのことが気に入らなかったんだと思う。自分がグロウスに入れなかったことを、すごく恨んでいるみたいだった」
あたしは写真の中の彼女をみつめた。普通高校の制服を着た彼女は、グロウスに通って才能を開花させる妹を間近で見ていたのだ。
「それに、自分には本当は能力がある、みたいな言い方をするのよ。本当に能力があるのか、それとも、そう思い込んでいるだけなのか……」
「ええ。その通りよ……」
あたしの言葉にかぶさって、低い声が響いた。
振り向くと、戸口に厳しい表情のマリアさんが立っていた。
「水川、目が覚めたのか」
「はい。ご迷惑をおかけしました」
マリアさんは修司さんに一礼すると、つかつかとあたしに近寄ってきた。そして、いきなり跪くとあたしの両手を握って涙を流した。
「ごめんなさい……っ、私のせいでこんな目にあわせてしまって……」
マリアさんの手はぶるぶると震えていた。
「すべては、私の姉エリサのゆがんだ思い込みなの……」
マリアさんは嗚咽をこらえて語り出した。
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