第32話
北の方と東の方角。首を向けるまでもない。並々ならぬ龍の気でわかる。俺は両方を瞬時に睨んだ。水淼の山岩龍や糸のように天まで届く細長い龍が大勢迫って来ていた。
数多の龍と戦う魚人の全軍が怯んだ。
山岩龍が大波と共に押し寄せてくるが。
「見えた!」
「見えた!」
俺は出会い頭に蕪割をしたが、赤い血液の濁流へと呑み込まれる一体の山岩龍には、二つの綺麗な切断面が見える。
「武様! 私も助太刀しますね!」
いつの間にか、隣に呼吸を整えている鬼姫さんがいた。
「武! 私も助太刀するよ!」
「武よ! 俺もだ! 楽しいなー!」
「私もだ!」
後ろの広大な砂浜から呼吸が乱れていない蓮姫さんと、荒い呼吸の東龍。北龍とがで駆けて来た。
俺は海に背を向ける。
隣の鬼姫さんも背を向けた。
「おらー! 魚軍よー! 次は全軍撤退だー!!」
察した東龍が魚軍に叫び声を上げた。
散開していた魚軍がすぐさま全軍撤退をしてきた。
俺はありったけの龍の気を開放した。
ドンッという激しい衝撃波が隣から発し、俺は踏ん張った。
やっぱり鬼姫さんの龍の気は凄い!
「龍尾返し!」
「えいっ!」
二人で振り向きざまに剣を振りかぶって下ろした。
俺と鬼姫さんの龍の気によって、成功した龍尾返しは見事大海原の中央に一つの巨大な大穴を開けた。海底が見えるのではと思えるほどの大穴だった。
全ての海水は遥か天空へと登った。
一万歳の龍に山岩龍までもが奈落の底へと海から落ちていく。
すぐに空から巻き上げられた全長400メートルのイカや貝。天へと海水によって押し上げられた七色の魚などの豪雨が降りしきる。
「さあ、あの龍も斬りな! 武!」
隣の蓮姫さんが槍を構えながら言った。
「ええ……。え?」
俺は戸惑った。
使える幻の剣は……龍尾返しだろうか?
「武様! 頑張ってください! お見せできる技はもう全てお見せしました。武様! 幻の剣で斬るのです!」
鬼姫さんも刀を構えた。
四方の龍は魚軍や四海竜王の東龍と北龍が戦っている。
「幻の剣なら、必ず斬れます!」
ここは砂浜から少し離れた海の上。
潮風が優しく吹いていた。
少しずつだけど四万の魚軍と一緒に海上を前進していた。
大海には未だ多くの龍がいる。
俺は閃いた。
そうだ!
蕪割で斬ろう!
俺は龍の気を開放した。
途端に辺りの潮風が凄い勢いで霧散し、波風が暴れるように荒れた。多くの龍が怯んだかのように思えた。
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