ラスボス、やめてみた ~主人公に倒されたふりして自由に生きてみた〜(Web版)

坂木持丸

1章 ラスボスやめてみた

第1話 自分がラスボスだと気づいてみた




「――魔帝メナス! 貴様は、私たち革命軍が成敗する!」




 ノア帝国の万魔城パンデモニウムの広間に、武装集団が押し寄せてきた。

 その先頭に立つのは、美しい金髪の少女だ。

 玉座に腰かけている俺に剣を向け、勇ましく宣戦布告をしてくる。


 そんな光景を仮面越しに見ながら、俺は怒るでも焦るでもなく――。


「…………ん、んん……?」


 ひたすら、強烈な既視感に襲われていた。

 ……あれ? この場面、どこかで見たことあるぞ?

 たしか……最近よく見ていた夢の中でだったか。

 この世界には存在しない“日本”という地を覗き見る夢だ。やけにリアリティがある夢だったし、もしかしたら夢を通して別の世界を見ていたのかもしれない。

 その夢の中で、大流行していたゲームがあった。



 そのゲームの名は――『レジスタンス・ノア』



 主人公アレクが革命軍を指揮して戦う、王道RPGだ。

 ただバトルするだけのゲームではなく、組織運営や研究開発のようなシミュレーション要素も充実しており、そういうのが好きな層にはたまらないゲームとなっていた。

 そして、その『レジノア』において、魔物創造の力で世界征服を企んでいたラスボスこそが――。




 ――魔帝メナス・ノア。




 つまりは、俺だ。

 今の今まで、ただの荒唐無稽な夢かとも思っていたが……。

 目の前の状況を見ていると、そうも言ってはいられなくなる。



「祖国の仇だ! 貴様の首は、このアレクサンドラ・ロードナイトが討ち取ってみせる!」



 黄金の髪をたなびかせ、剣を振りかぶりながら駆けてくる少女。その戦乙女のような勇姿は、まさに主人公アレクそのもの。

 思えば、なにもかもが『レジノア』のプロローグと完全に一致している。主人公アレク率いる革命軍が、最初にラスボスと戦う場面だ。

 何度も、何度も、夢の中で見てきた場面だから、間違いようがない。


「…………そうか」


 自分に迫ってくる刃を眺めながら、俺は確信した。





 どうやら、俺は……RPGのラスボスだったらしい。




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