第64話

 金属音が鳴る。

 

 「まったく、結局こうなるんじゃないの!」


 「ほう、俺の剣をうけて、折れないとは大した剣だ」


 「そうよ、これは仲間たちみんなで協力してお金を出し合って、素材を集めてやっとのことで手に入れた最高の剣なんだから!」


 目の前で花蓮の剣と、ローガの剣がぶつかり合い火花が散る。


 「ますます……お前という女が欲しくなった」


 舌なめずりするローガを見て悪寒に震える花蓮。


 やがて、つばぜり合いは終わり、奴は数歩後ろに下がる。


 「まぁ……お前の剣技は俺様と同じ独学のもので、流派はない。だが実戦経験豊富な俺様の方が分がある。剣技のスピードもパワーも全てアクセルとかいうお前の固有魔法によるものだ。異世界人のほとんどは魔力というものを有していない。あのクソ大王がスキルと同時に最低限の魔力はくれるだろうが、それも……もってあと5分といったところか」


 「ごちゃごちゃ……うるさいわよ!」


 そういって攻撃する花蓮の剣をローガは、にやけた顔のまま片腕で受け流していた。


 俺は花蓮のことを信用していたし、事前に飲んでいた薬のおかげで恐怖心はない。


 だが俺が戦いに加われば、足手まといになるのは明白だ。


 援護しようにも薬の一つももう残っていない。


 俺は悔しさで下唇を噛む。


 …………だが待てよ。


 俺は奴の言葉に何か引っかかる部分を感じた。


 妙に奴は異世界人について詳しい。


 ひょっとして……。


 俺は考え込む。。


 後ろから何かがこちらに向かってくる音がする。


 茂みをかき分け、獣が走る音。


 なんだ、何の音だ……?


 花蓮の剣が上に弾き飛ばされる。


 尻もちをつく花蓮。


 ※ ※ ※


 花蓮の首に剣を差し向けるローガ。


 突然、俺の後ろに黒いものが地面に勢いよく着地する。


 「なんだ?」


 ローガが剣を向けたまま喋る。


 それは巨大な黒い狼男。


 「ムセン!」


 「あたしもいるわよ」


 「アリサ!」


 ムセンの背中に背負われたアリサ。


 そして、アリサと一緒にムセンに背負われ、そこから飛び降りて現れた一人の

 

 美しい金髪。


 翡翠色の瞳。


 「ごめん、居ても立っても居られなくて……来ちゃった」


 「シエスタ!」


 弓と短剣を装備したシエスタが嬉しそうな笑みを浮かべ俺の元に駆け寄ってきた。


 俺はあまりの嬉しさに泣きそうになった。

 

 


 

 

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