第156話 ギルドランク昇格試験 ②


 冒険者ギルドの受付嬢の元までやって来た俺とガーネットとラット君の三人は、早速試験を受けるべく訪ねた。


「すみません、俺達三人でギルドランクの昇格試験を受けたいのですが。」


対応してくれたのは、美人受付嬢だ。心が躍るな、いいところを見せたくなるよね。


「昇格試験ですか? 申し訳ありません、現在担当の者が手一杯でして、今すぐという訳にはいかないんです。」


なんと、そうなのか。試験官の人も忙しいみたいだな。さて、どうしたものか。


「なーんだ、順番待ちかー。」


「私達以外にいるのね、試験を受ける人って。」


「どうする二人共、ここで待っているかい?」


俺達が気落ちしていると、受付嬢からこんな提案をされた。


「あ、ですが、高ランクの冒険者が引率をしてくれたら、試験官の代わりをやっていただく事もできますが、如何ですか?」


おや? そうなのか、だったら姐御に頼んでみるのもいいんじゃなかろうか。


「あ、じゃあ姐御に相談してみましょうか?」


「そうだな、姐御はBランクの冒険者だし、俺ちょっと頼んでくるよ。」


ラット君がダッシュで姐御の元まで駆けて行き、何やら色々と相談している。


姐御はうんうんと頷き、笑顔で了承してくれたようだ。流石ベテランは心が広い。


ラット君が戻って来た。


「姐御、オーケーだってさ。」


「じゃあ試験受けられるのね? あー良かった。流石姐御、優しいね。」


姐御が試験官を引き受けてくれるという事なので、このままギルドランクの昇格試験を受ける手続きをした。


「では、ジャズさんとガーネットさんがEランク、ラットさんがDランクの試験をそれぞれ受けるという事ですね?」


「「「 はい。 」」」


三人揃って声が出た、これにより三人の顔をお互いに見合わせ、クスリと笑う。


「では、ここに必要事項を記入して下さい。それで昇格試験はスタートします。」


俺たちはそれぞれ名前と現在のランク、そして昇格試験を受ける事を記入した。


よっしゃ、これでギルドランクの昇格試験を受ける事になったぞ。


さてさて、どんなのが試験内容なのかな?


「姐御さん、こちらへ。」


受付嬢が姐御をこちらへと呼び、試験内容を説明しだした。


「姐御さん、今回の三人の試験内容ですが、Eランク試験は薬草と毒消し草の採取、Dランク試験は大猪のビックボアの討伐となります。」


「採取と討伐ね、解ったわ。私で良ければ試験官を引き受けます。」


「お願いします、それでは三人とも、頑張って下さいね。」


よーし、昇格試験が始まった。一丁いきますか。姐御にお礼を言わなくては。


「姐御、試験官を引き受けてくれてありがとうございます。」


姐御は手をパタパタと振り、笑顔で対応してくれた。


「気にしないで、こういうのは冒険者の先輩として当たり前の事だから。」


姐御は優しいなあ、いい女になるぞ。きっと。いや、元々美人なお姉さんって感じだが。


「さあ、試験は始まったわよ。三人纏めて面倒を見るわよ。まず初めに何をすべきかしら? 考えて。」


ここでラット君が自分の意見を述べた。


「えっと、まずは情報を得るところから、だよな。」


ふーむ、情報か、俺とガーネットは薬草と毒消し草の採取だから。


「ガーネット、俺達二人は北東の森へ出かけて採取、で、いいよな?」


「ええ、そうね、私達はそれでいいけど、ラットはどうするのかしら?」


ラット君は考えている、モンスター討伐が試験内容だから、まずはそのモンスターの出現場所の特定だな。


「ラット君、俺達と一緒に行かないか? 北東の森だったら、ビックボアもいるはずだし、どうだい?」


俺が提案すると、姐御から注意された。


「ちょっとジャズ、こういうのはまず本人に考えさせる事なのよ、そうじゃないと本人の為にならないからね。」


「おっと、そうか。すいません姐御。」


「でもまあ、一党を組んでいる訳だし、いいとも思うけどね。あまりとやかく言うのもなんだし。」


流石姐御、話せる。おっと、しかし試験官をやってくれている訳だから、当然厳しく見ているだろう。


ここでラット君が俺達に協力を要請してきた。


「じゃあ、俺の試験の手伝いとして、一緒に行動したいっす。その方がより安全だろうし。いいっすか?」


「俺はいいよ、ガーネットは?」


「勿論いいわよ、よろしくね、ラット。」


「ああ、ありがとう。よろしく頼むっす。」


うむ、話が纏まったみたいだな。という事は俺とガーネット、ラット君と姐御の四人パーティーを組むという事だな。


うむうむ、冒険者らしくなってきたじゃないか。いいな、こういうの。


ワクワクするな、年甲斐もなく。冒険か………楽しみだな。


俺はアイテムボックスから四本の回復薬を取り出し、皆にそれぞれ一本づつ渡す。


「回復薬だ、万が一の事を想定して、今渡しておく。使わなかったら返してくれればいいから。」


「ありがとう、ジャズ。」


「恩に着るっす、ジャズさん。」


「あら? 私にも? それじゃあ遠慮なく。」


うむ、回復薬も行き渡ったし、いよいよ行動開始だな。


「一党のリーダーはどうする?」


「ラット君が三人の中で一番ランクが上だから、ラット君でどうだい?」


「え? ここは姐御じゃないの?」


「ガーネット、今回は私は居ないものとして扱って頂戴。私は試験官だからね。」


「あ、そうか。うーん、リーダーねえ。」


俺がラット君をリーダーにしてはどうかと言うと、ガーネットが渋りだした。


「ねえ、ジャズがリーダーをやってみない? 私、ジャズなら上手くやれると思うんだけど。」


「え? 俺?」


「ふーん、悪く無いわね、ジャズなら申し分ないと思うわ、ねえジャズ?」


姐御まで俺を推してきた、まあ、リーダーって柄じゃないけど、一応「指揮官」のスキルを持ってるし、まあいいか。


「え~っと、じゃあ、俺がこの一党のリーダーって事でいいかな?」


「いいっすよ。」


「いいんじゃない。」


「決まりね、じゃあリーダー、号令を。」


え? 号令? 何を言えばいいのやら。


「え~、じゃあ、みなさん、よろしく頼みます。怪我などしないようにしましょう。では、出発。」


 こうして、俺達パーティーは、ギルドを出て一路、北東の森へ向けて歩を進ませた。


ここで姐御から、こんな提案がなされた。


「今回の試験に関しては、私は居ない者として認識して頂戴。でも、いざって時は助太刀するからそのつもりで宜しくね。」


「解りました、よろしく頼みます、姐御。」


 さーて、北東の森か、ポエム山賊団以来だな、俺がまだ山賊の手下だった頃にあった廃れた砦がある森だ。


まずは街道を東へ向けて進む。歩きながらモンスターとのエンカウントに備えて、警戒しつつ進む。


しかし、アリシア軍はしっかりと仕事をしているらしく、街道にモンスターの気配は無い。


同輩諸君はよくやっているようだ、まあ、訓練の一環なんだろうけど。


 歩きながら、姐御に色々と聞いてみた。


「姐御、その後のシルビアの情報はありますか?」


「それがさっぱりなのよ、尻尾を掴ませないように行動しているのか? はたまた本当にもうここには居ないのかしら?」


ふーむ、ダークガードか、その数はこの大陸には少ないそうだが、油断は出来んだろう。


「シルビアの事に関しては、もう私だけでどうこう成るレベルじゃないような気がしてね、盗賊ギルドに依頼を出して、協力を要請したところよ。」


「そうでしたか、盗賊ギルドの情報網は当てになる筈ですし、時間の問題だと思いたいですね。」


「うーん、そんなに単純な問題じゃないんだけどね。まあ、シルビアの事は盗賊ギルドに任せているわ。」


うむ、ドニあたりなら上手くやっている事だろう。


 そうこうしていると、北東の森の入り口へと到着していた、あっという間だな。


「みんな、準備はいいか?」


「「 いつでもいいよ。 」」


よっしゃ! 一丁いきますか。






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