第102話 レベルアップとフィラの行方

新たな体を手に入れたジャズは、そのポテンシャルの高さに驚いた。そして、フィラを探す為、自分の身の振り方を考える機会が来たと思うジャズ。ひとまずはクラッチの町へと帰還を目指すのでした。今までお世話になっていたジャズの体に感謝して。

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 俺は今、戸惑っている。


 目の前の男、ジャズから自分はジャズーと名乗り、しかもアリシアのファミリーネームまで付いているオマケ付きときた。


これってあれか? 例のジャズー王子ってのが噂になっているって、ガーネットたち冒険者が噂していたよな。


つまりなんだ、これはあれだな。俺の目の前に居る男が、ジャズー王子という事だよな。


「………………」


ジャズーは黙っている。俺も何か言った方がいいのかな? しかし何を言うべきだろうか。


「そうですか。」


散々ひねり出して出てきた言葉が、こんなものしか浮かばなかった。


もうちょっと他に言いようがあったと思うが、これが精一杯だった。


 まあ、あれだ。今までお世話になっていた体だし、余計な詮索は無粋。という事にして、その場はそのままにしておく。


「ジャズーさん、取り敢えずみんなに回復薬を飲ませて、意識の回復を促してみましょう。」


「そうですね、そうしましょう。」


 こうして、姐御やガーネット、男爵たちに回復薬を飲ませ、意識を取り戻すまで暫し待つ事にする。


 その間、俺とジャズーの装備品を交換し、俺が今まで使っていた忍者装備を再び身に着ける。


 ジャズーにはアイテムボックスから予備の服とブーツを取り出し、渡しておいた。


お互いに着替えて、後はみんなが意識を回復するまで待つ事にした。


そこで、ジャズーには勇気の腕輪を渡した。


「ジャズーさん、これ、今までお世話になっていたせめてものお礼です。受け取って下さい。」


「え? しかし、これはヤマダさんが貰った大切なマジックアイテムではないのですか?」


「構いません、貴方の体を使わせて頂いた訳ですので、貴方にもかなりの負担を掛けていたと思うので、せめてもの品です。お受け取り下さい。」


ジャズーは暫く考えていたが、やがて一つ頷き、腕輪を受け取った。


「ありがとうございます、大切にします。確か、「指揮官」のスキルが付くんでしたよね。」


「ええ、そうです。俺は自分でスキルを習得できますので、その腕輪は貴方に差し上げます。」


「解りました、しかし、便利ですよね、メニューコマンドというものは、自分にも出来るんじゃないかと、ちょっと期待したのですが、どうやら出来ないみたいです。ヤマダさんだけのユニークスキルという事でしょうね。」


ふーむ、そういうもんかもな。あ! そうだ! フィラのステータスを確認してみよう。


 そして、色々やってみた結果、フィラのステータスも俺のステータスもちゃんと確認できるようになっていた。


(よかった。フィラはまだ健在のようだ。)


つまり、今も何処かで生きているという事だな、まずは一安心。


 折角なので、今のフィラに何かスキルを習得させてしまおう。シナリオクリアしたので、フィラの分のスキルポイントも2ポイント増えていた。


うーん、何がいいかな? フィラは戦士なんだから、タフネスもあったほうがいいよな。


よし、タフネスのスキルを習得、っと。


後は残り4ポイントか。うーむ、そうだな、斧熟練のスキルも習得させておくか。


 これで残り3ポイント、確か斧武器は命中率が悪い武器だったな、よーし、器用上昇のスキルを習得させて、命中率を上げるか。


大体こんなもんか、残りのスキルポイント2ポイントは何かあった時の為に取っておこう。


フィラのステータスを確認だ。



フィラ  HP35

職業  アマゾネス

クラス  ウォーリア


筋力 B  体力 B  敏捷 B

器用 B  魔力 F  幸運 A


スキル

・幸運上昇

・ストレングス

・スピード

・タフネス

・斧熟練

・器用上昇


武器熟練度  斧 325


スキルポイント 2



 こんな感じだ。うむうむ、中々様になっているじゃないか。能力値も殆どBだし、これで当分は大丈夫だと思いたい。


お次は俺のレベルアップだ。一つレベルが上げられる筈だ。


よーしよし、レベル15になったぞ。HPも45になって、かなり打たれ強くなったと思う。


スキルはどうしようかな、15ポイントか、「インファイト」のスキルレベルを3に上げるか。


 おや? これで残りスキルポイントは5になったのか。さすが超級スキル、消費ポイントも高いな。


残りは取っておこう。


こんなもんか、ステータスの確認だ。



ジャズ LV15  HP45

職業  忍者

クラス  上忍


筋力 150  体力 140  敏捷 160

器用 150  魔力 60   幸運 140


ユニークスキル

・メニューコマンド

・精神コマンド 7/7 (必中 不屈 熱血 気合)

・エース


スキル

・ストレングスLV5 (フルパワーコンタクト)

・タフネスLV5

・スピードLV5

・投擲

・剣術LV4

・身体能力極強化

・全属性耐性LV5

・見切り

・インファイトLV3


経験点 700点  ショップポイント 3400

スキルポイント 5


武器熟練度  小剣 130  剣 110  槍 35



ふむ、こんなもんか、まずまずと言ったところか、いや、まだまだだな。


あ、剣術のスキルがレベル4に減ってる、うーん残念。


またスキルポイントを貯めて習得し直そう。


 おや? ユニークにエースなんてものがあるぞ? ああ、そうか、なるほどね、この体は確か「ハイブリッド」って女神様が言っていたな。


おそらくその事で、この体はエースクラスのスキルが備わっているという事か。


 ………そうか、とうとう俺もエースクラスか。今まで以上に気を引き締めないとな。慢心は良くない。


しかし、これであの女に対抗できるようになった事は確かだ。次は負けないさ。


多分。


 しばらく時が過ぎ、みんなが意識を取り戻した。特に怪我などはしていないそうで、兎に角、ここを出ようという事になった。


詳しい話は、落ち着いた所、クラッチの冒険者ギルドで話そうという事になった。


 みんなこちらを見て、何か言いたそうな雰囲気だったが、「話はギルドで」という事にして、そのまま遺跡を後にした。


足取りは重い、みんな無言で歩いている。無理も無い、上手く事が運ばなかったからな。


ただ、大規模転移装置だけは破壊したので、その事について姐御から感謝された。


姐御も装置を壊す予定だったそうだ。


 草原に出て、街道に辿り着き、そのまま休憩せず、只、黙って歩く、クラッチの町へ向かって。


空気が重い、みんな疲れている、たった一人の女にやられた事が余程応えたらしい。


 こうして、俺達はクラッチの町に到着し、冒険者ギルドへと帰還した。


さて、何からみんなに話そうか。



  オーダイン王国北部  辺境の町――――



 ヘイワードは走った、走って走って、走り続けて、ようやく目的地の町へと辿り着いたのだが、そこで、思いもよらぬ事態に直面した。


「町が、燃えている………………。」


 間に合わなかった、一生懸命走ったのだが、それでも先回りしていたのか、モンスターの群れが町を襲撃し、辺りは火の海になっていた。


「どうして…………こんな事に………。」


 逃げた人は何処へ避難しただろうか? 逃げ遅れた人はどうしただろうか? 生き残った人は?


そんな事ばかりが頭を垂れる。


 自分は一刻も早く、魔の森の事を伝えねばならないが、この惨状ではもう基地の仲間はみんなやられたか逃げたか、ここには居ないという事実に、力が一気に抜ける思いがした。


「ここまで必死に走って来たってのに、なんだよこれ……………。」


目の前には燃え尽きた家や家畜、人なども見受けられた。


 町はもう終わりだ。そう確信した直後、不意に背後に気配を察知したヘイワードは、後ろを振り向いた。そこには。


「グガアアアアアーーーー!」


ビックベアだ、大きな熊のモンスターが背後に迫っていた。


 ヘイワードは今まで散々走り続け、ほぼ満身創痍だったので、対処に後れ、剣を抜く事も叶わなかった。


「駄目だ! やられる!」


そう思った矢先に、突然、ビックベアは縦に真っ二つに切り裂かれた。


 一瞬、何が起きたのか、ヘイワードには解らなかったが、そのビックベアの更に後ろに一人の女性が佇んでいた。


 その女は、両手持ちのバトルアックスを装備し、色っぽいビキニアーマーを身にまとい、美しい肢体を露わにしていた。


ヘイワードは一目で、その美貌に惹かれた。


その女はまるで、タイミングを見計らったように、現れ、ヘイワードを救った。


ヘイワードは言う。助けてくれた事への恩を。


「あ、ありがとう、お陰で助かったよ。君は一体何者なんだい?」


すると、その女はこう答えた。


「私はフィラ、戦士です。つかぬ事をお聞きしますが、ここは何処でしょうか?」


  












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