第11話 レベルアップとこれからと
懲役四ヶ月を喰らったジャズ、果たしてこれから先、彼はどのような運命が待ち受けているのでしょうか?
********************************************
「よし、こんなもんかな。」
刑務作業の為、町の外へ出て街道整備の労働をしている。
石切り場で加工した石を荷台に乗せて持って来る。
街道に敷き詰められているブロックが敷き詰められている舗装された道。
その痛んでいる箇所とブロックを取り替える。簡単な様でこれが中々大変な重労働だ。
作業員、つまり受刑者達は作業をし、その周りを刑務官と衛兵が厳しく監視している。
まあ、ここは町の外、モンスターが
それらの脅威から受刑者を守る為でもある。
当然、誰かが逃げ出さないかという監視の為でもある訳だが。
今のところ、誰かが逃げ出す様な事は起きていない。
刑務官が太陽の傾き加減を眺め、「そろそろか。」と呟く。
「よーし! 刑務作業終了! 作業をやめろ! 一列に並べー!」
命令を聞き、みんな一列に並ぶ。その左右を衛兵が脇を固めて監視をする。
その状態で街道を町のある方へ歩く。今日も疲れた、早いとこ寝床で休みたい。
刑務所に帰って来て、まず体の汗を洗い流す。
その後僅かな食事をしてから自分の牢屋へと戻り、就寝に就く。
今日も体を沢山動かした、簡素なベッドに横になると、急に眠気が襲ってくる。
こんな感じで刑期を順調に過ごしている。
特に先輩受刑者から絡まれるというようなイベントもない。
僅かな食事と刑務作業の労働の為なのか、太っていた体はみるみるうちに痩せてきていた。
筋肉も多少付いてきたと思う。
能力値にも変化があり、筋力と体力、それと敏捷の値が少し上昇した。
今では一般人並になっているだろう。
「よーし、もうそろそろだな。」
経験点が溜まっているので、直ぐにでもレベルアップしたいところだ。
だが、職業が「山賊」のままになっている。
山賊でレベルを上げたくないので、まずは転職しようとクラスチェンジする事を優先した。
戦士や盗賊、魔法使いといった職業に転職するには、それに見合った能力値が必要だ。
なので、今の自分はギリギリ戦士に転職できる値だった。
更に数日が過ぎ、刑務作業、僅かな食事、就寝と繰り返し日々を過ごす。
よし、もういいだろう。ベッドの上でメニューコマンドを操作する。
まずはクラスチェンジだ。
(よしよし、戦士のクラスが明るく表示されている。)
つまり、今の能力値でやっと戦士に転職できるという事だ。
敏捷と器用が足りないので
同じ理由で魔力が0なので、魔法使い職も無理そうだ。
魔法使い系は向いていないと言う事だな。
「クラスチェンジ」を選択し、「戦士」に転職する事を頭の中で思い浮かべる。
すると「戦士に転職しますか?」と表示されたので、「はい」を選択する。
次の瞬間、自分の体が突然輝き出して、しかし一瞬のうちに光が消えた。
{戦士に転職しました}
頭の中で女性の声が聞こえ、今この瞬間、自分は戦士に転職したのだと確信した。
(よーし、いよいよレベルを上げるぞ。)
確か、ゲーム「ラングサーガ」では経験値500で1レベルアップできた筈だ。
経験点でもきっと同じ様なものかもしれない。
メニューコマンドの中に「レベルアップ」というコマンドが増えている。
よし、戦士になった事だし、早速経験点を消費してレベルアップだ。
今の自分の経験点は1000点ある、レベルアップと頭の中で思い、数字を上昇させてみる。
レベル3まで上げる事ができる筈だ。
そう思っていたのだが、そううまく行かず、レベルは2までしか上がらなかった。
(なるほど、1から2へ上げるのは500点で済んだが、2から3へ上げるのには経験点が足らないという事か。残念。一気にレベルは上がらないものだな。)
まあでも、レベルは2になった。ようやくらしくなってきた。
さて、お次はスキルを何か習得しよう。スキルポイントは1ポイントある。
女神様から貰った10ポイントは全て「ストレングス」のスキルに使ってしまった。
スキルにはレベルがあり、LV1で1ポイント消費、LV2で2ポイント消費する。
つまり、スキルを習得するには、スキルレベルの数字と同じ分だけスキルポイントが消費されるという事だ。
俺のスキル「ストレングス」はLV4まで習得済みである。
ストレングスは筋力に影響するスキルなのだが。
折角戦士に転職したんだ、戦士と言えば筋力と体力だな。
体力に影響するスキルは「タフネス」というのがある。これもスキルレベルがあるやつだ。
だけど敏捷が上がる「スピード」というスキルも捨て難い。う~む、悩むなあ。
他には「投擲」や「剣術」といったスキルもある。
だが、基本能力値が低い今の自分は、どうしても能力値に影響するパッシブスキルを習得したいと考えてしまう。
(ええ~い、やっぱりタフネスのスキルを習得しよう、そうしよう。)
こうして、「タフネス」のスキルをLV1習得した。
これで戦士としてはまずまず、いや、まだまだかな? 先は長そうだ。
これが今の自分のステータスだ。
ジャズ LV2 HP7
職業 戦士
クラス ファイター
筋力 11 体力 9 敏捷 6
器用 8 魔力 0 幸運 7
ユニークスキル
・メニューコマンド
・精神コマンド
スキル
・ストレングスLV4
・タフネスLV1
経験点500点 ショップポイント 1092P スキルポイント 2P
武器熟練度 小剣 10
ふむ、大体こんな感じだ。
おや? 武器熟練度なんてものがあるぞ? 小剣? ああ、ナイフとかダガーの事か。
そうか、ポエムを倒したから熟練度が10に上昇したのか。
うーむ、小剣か、剣とか使ってみたいのだがな。
やはり剣と魔法の世界なのだから、剣に憧れがあるんだよなあ。
まあ、ここを出てから考えればいいか。
おや? スキルポイントが2P増えているぞ、ああそうか、レベルアップボーナスか。
レベルが上昇した数字だけスキルポイントが貰えるんだったな。
うーむ、この先何があるかわからないから、このポイントは取っておこう。
知り合いもできた、ユリと言う女性だ。
彼女は元王国軍の兵士で、現場叩き上げで少尉まで昇進したそうだ。
だが、士官学校を出た貴族のボンボンに「平民のくせに俺と同じ少尉とは生意気な」的な事で酷い嫌がらせを受けていたらしい。
その事を上官に報告したら、そのボンボンに窃盗の濡れ衣を着せられて、ここに収監されたらしい。
「そいつは災難だったな。」
「でしょ~、あいつ、今に見てろよ。」
切っ掛けはこんな感じで会話が始まり、今では顔を合わせる度に話しこんでいる。
こちらと同じ時期に入り、同じ様な期限の懲役を喰らったみたいだった。
ここを出るのも同じ時期になりそうだとの事で、自然と「ここを出たら何する?」みたいな話題になる。
「ユリはさ、ここを出たら何するんだ?」
「そうね~、冒険者や傭兵もいいけど、折角少尉まで任官されたんだもん、今回の事で二階級降格しちゃって、軍曹まで落ちちゃったのよね。それでも軍曹には留まれたんだけど、う~ん、やっぱり軍に復帰かな?」
「え? 軍に復帰するの? 濡れ衣を着せられたのに?」
「実はね、その事で私、第3軍のバルク将軍に「ここを出たらうちに来い」って言われているのよ。バルク将軍は平民出身でね、実力とチャンスさえあれば出世できるのよ。私はバルク将軍に付いていこうと思ってね。」
「へえ~、そういう人も居るんだ。軍隊かぁ。」
「ジャズもさ、ここを出て、行くとこ無かったら軍隊に入りなよ。鍛えてもらえるし、衣食住は心配しなくていいし、任務に就けば給金だって貰えるのよ。どお、悪くないでしょ。」
「うーむ、確かに一理あるな、自分を鍛えてもらえるか。だけど軍隊ってところは自由が無いイメージがあるんだよね。」
「そんな事無いわよ、休暇はちゃんとあるし、待機の場合ある程度の自由は保証されているし、上司に恵まれるとやりがいを感じるし、どお、ジャズも軍に入りなよ。あんただったらきっとうまくいくよ。私と軍隊に入隊しなよ。」
「………ふ~む、軍隊かぁ………。」
そんなこんなで、ユリは先にここを出て行った。自分もあと少しで出所だ。
そして………四ヶ月が過ぎた。
自分は今、刑務所の出入り口のロビーに居る。
受付の刑務官がこっちを手招きして呼んでいる。そちらの方へ行き、出所の手続を済ます。
刑務官が厳しい表情で、こちらの持っていた荷物を出し、カウンターの上に並べる。
「忘れ物は無いな? ナイフにズボン。ああ、それと君の着ていた上着だがな、切り傷と血で汚れていたのでこちらで処分しておいた。君の着ている上着は新品だ、あまり汚すなよ。」
「はい。」
「それと、これが君が刑務作業で得た金だ。銀貨7枚に銅貨5枚、大事に使えよ。」
「はい、ありがとうございます。」
刑務官に一礼し、自分の荷物を持って入り口から外へと足を向ける。
刑務官から送り出しの言葉を貰った。
「もうここへは来るんじゃないぞ、いいな。ジャズ。」
「はい、お世話になりました。」
刑務所から外へ出て、町の中の様子を見る。
そこには、いつもと変わらない町の光景が広がっていた。
「さてと、再出発するにはいい日和だ。これから俺は何をして食っていこうかな。なーに、時間ならまだあるさ。考える時間はさ。」
取り敢えずの目標は、この世界で生き延びる事。
その為には何をすべきか、色々とやる事がありそうだ。
顔を上げ、歩き出し、新たな一歩を踏み出す。
気持ちも新たに。もう一度、再出発する為に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます