童貞異世界無双〜せっかく転生したのに世界を救わないと童貞が捨てられないなんて!?〜

テケリ・リ

第一章 裸で童貞の暴君

#01 童貞は転生した



 前略、異世界に転生しました。


 転生して尚且つ召喚された俺の眼下には、怯えながら震えている


 あとお姫様とか、宰相とか、大臣とか、騎士団長とか。なんやかやいっぱい居る。


 次、俺の状況な。


 18歳くらいに若返ってる。

 そんで、全裸で玉座に脚を組んで座ってる。以上!



「その……勇者様――――」


「うるせえ、勇者って呼ぶな」


「ヒィッ!?」



 ったく、一国の王ともあろう者がビクビクしやがって……。

 まあ、キレた俺が暴れてこの国の兵共をみんな薙ぎ倒したせいなんだけど。


 ……俺の名前は黒桐白哉こくとうはくや。こう見えて前世の日本では29歳だった男だ。

 別に社畜として扱き使われてた挙句に過労死したとか、見ず知らずの女の子を庇って通り魔に刺されたとか、転生トラックに撥ねられたとか、そんなラノベチックでドラマチックな死に方を成し遂げた訳じゃない。


 ほんの少し……ほんの少しだけ、運が悪かっただけなんだ。



「あの、異世界の方!」


「あん? なんだよ、お姫様?」



 完全に怯えきっている国王の斜め後ろで、この場にそぐわない可憐な美少女が立ち上がり、声を上げた。

 国王の娘で、アンリエッタとかって名乗ってたっけ。



「わ、わたくし共の無礼は謝罪いたします! どうか、お怒りをお治めくださいませ!」



 なんだよ。国王なんかよりも姫さんの方がよっぽど肝が据わってるじゃねぇか。

 長い真っ直ぐな金髪を持ち、白い肌に人形のように整った目鼻立ち。青い大きな瞳で俺を見詰め、真剣な表情で訴え掛けてくる。



「貴方様を侮って、大変申し訳ありません! 笑い者にしたことも謝罪いたします!」


「そ、そうじゃ謝る! 笑って申し訳なかった!!」



 娘の援護で勇気が出たのか、国王も立ち上がって声を張り上げる。



「そ、そなたくらいの歳であれば、別に不思議でもなんでもないことであるからな!! たとえじゃろうと――――」



 プチリ、と。

 本日の、頭の中で何かが切れる音を聴く。

 それを知ってか知らずか、国王の野郎はベラベラと謝罪にもなっていない煽りを口にし続けている。



って言うんじゃねええええええええええええええええええッッ!!!」


「ぎゃああああああああああああ!!??」



 玉座から石段に足を振り下ろす。凄まじい衝撃と共に段がえぐれ亀裂が走り、段の下に居る国王の目の前までヒビ割れ、止まる。



「どうやらさっきのお仕置じゃあ理解出来なかったみたいだなぁ……?」


「ひひひひひぃぃぃッ!? お、お許しをぉぉ!!」



 ああそうさ。国王コイツは言っちゃならねぇことを言ったんだ……。


 


 29!!


 またって言いやがったのかああああああああああああああッッ!!??



「この城ブチ壊すぞくそったれがあああああああーーーッッ!!」


「ぎゃあああああああああああああーーーッ!?」


「おやめくださいまし勇者さまああああああーーーッッ!!?? あと何かお召しになってくださいませええええええーーーッッ!!!」



 本日二回目の全裸での大暴れであった。




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