第11話

「どうするのだ!」

「突っ込むぞ!」

 旋回し終えた周が赤鸞を猛加速させ、回頭寸前の板額の単車へ突撃する。

「光り輝く昴球と!プラスアイスのフィールドとの間で!日サロ体験するかっ!?」

 板額は不夜城のような威厳を感じさせながら、単車の回頭を完了させ、ドレスをはためかせつつ赤鸞を擦れ違わせる。

「ほほ、速すぎて正確な操縦をしかねる様子………ああっ!」

「うおおおお!」

 巨大な叩球装置フリッパーに打ち返された赤鸞が、高速で板額に迫る。

 大鎌を構えかけた板額の背中側を通過しながら、周が剛腕で抱え込んで単車ごと引き摺り込む。

「はーああああー」

「やっぱりな!」

「どういう事だ周?」

「お前らは仲間同士でも、あの単車の能力とやらは秘密なのか?この女は歌声で単車を操ってる!」

「あっ!」

 走行したまま、周が敦盛の頭を握り、板額の顔に近付けさせる。

「周、いいんだ」

 周が力を抜く。

 敦盛が板額と額同士を合わせ、目蓋を閉じる。

(おおっ)

 敦盛の額に翼の模様が輝いて、板額の瞳を照らす。

「板額、これは煬変ようへんしているお前と天驤てんじょうの余波によるものだ。お前の建仁けんにん時飾りとかざりと、私の寿永じゅえい時飾りとかざりとは質が似通っている。今は煬変ようへんには尚も及び難いが、これで私だと分かるだろう?」

 板額は大鎌を落とし、単車から離れ、前髪が覆うこめかみと鼻先を、抱き付いた敦盛の二の腕の服に甘えさせ、切なくも懐っこく往復させる。

「風はどれほど乱れても風。私が受け止めよう。お前はここにおれば良い」

(チラ見したのは建仁二桁ナンバー。歴史で習ったのは一桁年だったが、意識し過ぎか)

「おおっ!?」

 ピンボールのフィールドが崩壊し、周達は高速道の料金所に差し掛かかる。

「ああっ!………周。平気だったのか?この子は?」

(記憶が戻るのはお預けか)

「抱いててやれ。飛ばすぜ!」

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