四 罪状と判決

「松木実。銃刀法違反、麻薬密輸、ダイヤ密輸、殺人、殺人未遂、殺人教唆、器物損壊で禁固で百五十年だ。

 仮釈放なし、恩赦なし、死んでも、百五十年間禁固は続く」

 吉永は机の向いに座っている松木を見た。


 松木は手錠をはめられ、足首には足錠をはめられている。そして、それらの錠は互いを二本の鎖で結束されて手足の自由を奪われている。

「オレの情報を知りたくないか?ヘロインとダイヤの密輸ルートだ」

 松木は取り調べで、警察と取引できると思っている。

「知る必要はない」

「誰が何処でヘロインを生成してダイヤを集めてるか、知りたくないか?」


「必要ない。松木。お前、抹殺されなかっただけ、運が良かったと思え。

 ここで罪状に対する判決が下され、刑が執行される事を幸運だと思え」

「どういう事だ?」

「本来なら、罪人に罪状を説明しない。刑罰の説明をせずに監房へ送りこむ。

 送りこまれた罪人はどうなると思う?」


「弁護士を呼べ!」

「弁護士を呼べるのは、それなりの権利を有する罪人だけだ。

 お前は、最初に犯した殺人の段階で、みずから権利を放棄した。お前は全ての権利を無くした。

 それと、我々警察機構は検察業務と裁判業務全般を担当し、裁判はしない。

 罪状に対して判決を下し、罪人を処分するだけだ。

 松木。禁固百五十年が嫌なら処刑してやる。処刑に応ずるか?

 お前の処刑は、二十四時間かけて執行する。お前に殺された者たちと怪我をさせられた者たち、そして、その者たちの家族の怨みを、二十四時間かけて思い知るがいい」


「そんなバカな!オレには人権がある!」

「他人の人権を犯したお前に人権はない!

 今の発言で、被害者遺族に対する謝罪の意志が無いと言う罪状が増えた。

 処刑は四十八時間になった」


「そんなバカな・・・」

「お前が密輸と殺人で世間から逃れている間に、多発していた重罪事件に対して法律が改正された。警察官と検察官と裁判官の業務は警察機構に一本化された。

 今から、刑の執行だ。この部屋がお前の終の棲家だ」

 吉永は取り調べをしている空間を示した。壁が天井へせり上がり、ベッドとバス、トイレが現われた。机と椅子は床に固定されて分離できない。


「窓もないこんな部屋に閉じこめるのか?」

「禁固だからな。だが、窓はある。TVもある」

 吉永の声とともに別の壁が天井へ迫り上がった。窓とテレビ用のディスプレイが現われた。

「番組の選択はできない。そして、シールドしてあるから、TVと窓の破壊はできない。

 ここで使用するエネルギーはこの監房独自の物だ。他の影響は受けない。

 では、気長に暮せ」

 そう言って松木の前から吉永が消えた。

「なんだ!?どうなってる?!」

松木は吉永が3D映像だったのを気づいていなかった。そればかりか、あまりに多くの敵対勢力を抹殺していたため、半年前に吉永の顔半分と四肢をC4で爆破消失させた事すら、松木は記憶していなかった。

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