第8章 片づけているのは何ですか

第29話 書類作成と昼食と

 奨学金は全部返し終えた。

 借金は他にない。

 

 現在の所持金は貯金を含め250万円弱。

 なお異世界移住関係で既に合計40万円近く使っている。

 もちろんキャンペーンの100万円は計算に入れていない。


 さて、今私がやっている所持金計算は終活の一部だ。

 日本における私の終活。

 お亡くなりになるつもりは全くない。

 異世界で新たな生活をはじめるのだ。


 異世界に行って帰って来ないなら、それなりの準備というものがある。


 手続き関係のかなりの部分は事務局がやってくれる。

 アパートの解約と役所の退職手続きだけではい。

 電気、ガス、水道、インターネットプロバイダ、スマホ等一切の手続きを代行してくれるそうだ。

 預貯金も解約した上で残金をヒラリア共和国の通貨に両替してくれる。

 私がヒラリアに移住して1週間後、戻らない事を決めたら。


 しかしそのために事務局に提出しなければならない書類がある。

 何処の何をどうするかについての規定書式。

 委任状が必要数。

 更に解約時に必要な預金通帳やカード、印鑑等。

 

 そんな訳で今、その辺についてまとめている最中なのだ。


 郵便貯金、都市銀行の預金、クレジットカード2種、NISAの積み立て、FX口座。

 お金系統ではこんなところだろうか。


 電気、水道、此処はオール電化だからガスは無し。

 インターネットプロバイダと携帯電話も忘れずに記載。

 どこぞのプライム会員も書いておくべきかな。

 それとも今のうちに自分で解約しておくべきだろうか。  


 パソコンで入力するだけではない。

 自筆で書かなければならない場所、はんこが必要な場所も結構ある。

 何せ個人情報は最後、本当に必要になる時まで隠したい。

 そう考えるとその分手書き部分が多くなる。


 なおこれらの書類は完全移住を決めた後、手渡しでいいらしい。

 だから移住をまさに決定する時まで個人情報を秘匿できる。

 この辺システムがよく出来ているな。

 それだけ異世界移住なんてのが怪しいという自覚があるのだろう。

 きっと。


 時々ソリティアだのフリーセルだのに逃避しつつ作業すること2時間。

 やっと一通り書き終わった。

 疲れた。

 休憩がてら昼食だ。


 さて、本日の昼食はカツオとシイラの漬け丼。

 朝市に買い出しに行ってから今日で5日目。

 最後の在庫だ。


 漬けは冷蔵庫で熟成というか漬け込んでいる。

 アイテムボックス内では時間経過がないらしいから。

 出してみるとつかり具合、なかなか良い感じ。

 美味しそうだ。

 パックご飯、箸と一緒にテーブルへ。


 確かヒラリアにも米があるんだよな。

 調べた情報ではそうなっている。

 厳密には米ではなく類似品だけれども。

 草では無く樹木らしいから。


 しかし米があるなら向こうで漬け丼も楽しめるだろうか。

 パックご飯を魔法で温めつつ思う。


 そんな訳でカツオとシイラの漬け、頂きます。

 漬けといっても大したものでは無い。

 タレは市販の濃縮そばつゆにショウガとワサビを溶いたもの。

 その中に刺身を漬け込んだだけだ。

 しかしこれがご飯と一緒だと最高に美味しい。

 

 うん、美味しい。パックご飯1個では足りない。

 2個目をキッチンから持って来る。


 そう言えばこのパックご飯も買って行った方がいいだろうか。

 でもその辺は米があれば問題ないかな。

 これでも一応鍋で米を炊ける自信はある。

 最近はやっていないけれど。

 今度試しておこうかな。

 

 なおカツオとシイラで一応加工品も作ってみた。

 魔法で水分を飛ばせるから短時間で試作出来る。


 カツオは潮カツオもどきが案外良かった。

  ① カツオをたっぷりの塩で2週間漬け込む

  ② カツオを2週間乾かす

というのが本来のレシピ。


 しかし時短のためちょっと新兵器を使ってみた。

 圧力なべだ。


 中に飽和食塩水とカツオ、シイラの身を入れて魔法で加圧。

 この際適宜温度低下魔法を使用し、中の温度が上がらないように管理。

 魔法で圧力を上げて30分後、今度は魔法で圧力を下げてやはり30分。

 その後食塩水を出して中に蒸し器として使用する為の網状のものを入れ、その上に先程のカツオとシイラの身を置く。

 蓋を閉めて圧力を下げつつ乾燥させ、半生状態に。


 こんな製法なので当然本物とはかなり違う代物だろうとは思う。

 その怪しい代物を包丁で薄くカットして生で試食。

 カツオはなかなか美味しい。

 少しねとっとした食感で、お高い生ハム的な風味もある。

 ビールなんかと合わせると美味しいに違いない。

 私は飲めないけれども。


 しかしシイラは今ひとつ。

 カツオに比べると旨味が足りない。

 シイラはもっとがっつり味付けした方が良さそうだ。

 砂糖醤油、つまり味醂干しっぽい感じで。


 ただそんな生ハムもどきより、やはり生の方が美味しい。

 そして単なる生より漬けの方が更に美味しい。

 少なくともカツオとシイラはそうだ。


 ならヒラリアの魚はどうなのだろうか。

 つけっぱなしにしているパソコンで情報のページを出してみる。

 ヒラリアで食用とされている魚が何種類か載っていた。


 〇 ノータス

   汽水域~淡水に生息。全長1メートル程の硬骨魚。ガーパイク的な見た目。鱗は固いが熱で剥がしやすくなる。白身で主にフライにして食する。


 〇 アメラ

   汽水域~淡水の湖等に生息。全長50センチ程度の硬骨魚。ドジョウを大きくしたような見た目。崩れやすい白身でやはりフライ用。


 〇 トリアキス

   流れの穏やかな内海に生息。全長80センチ程度の軟骨魚。強いて言えばサメに近い形だが色は白と茶色。バター焼きにすると美味しい。


 〇 サイパ

   内海や湾内に多く生息。最大で全長25センチ程度までの軟骨魚。頭と胸ヒレが大きい不格好な魚。白身で案外美味しいらしいが街には出回らず、海辺でのみ消費されている。


 〇 スコンバ

   外洋から内海までの沿岸域に生息。最大1メートル程度の硬骨魚。カツオっぽい形。あまり出回らないが主にフライとして食される。


 うーむ、刺身という食べ方は一般的では無いようだ。

 というかフライ率高い。

 そしてやっぱり干物やそれ以外の加工品もほとんど無いと。


 現地で何が受けるかは結局のところわからない。

 だから手持ちの方法論は多い方がいい。

 ちょうど昨日、通販で購入した新兵器が届いたところだ。

 なら干物以外の加工品にも挑戦しておこう。


 ただ昼食で少々眠くなった。

 今日は朝散歩もしたし勉強もした。

 だからもう第1ターンの行動は終了だ。


 パソコンを閉じてベッドへIN。

 おやすみなさい……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る