第5章 1週間後の現況
第17話 行くぞ外界へ弁当買いに
語学や魔法の勉強をはじめて1週間。
とりあえず勉強方面の準備は順調だ。
しかし時々我に返ったりもする。
私は何をやっているのだろうか。
今やっている事に意味はないのではないかと。
オース移住計画事務局と名乗る何者かが私の知らない技術を持っているのは間違いない。
それが彼らの言うような超科学を使った魔法なのか、はたまた催眠術的な何かなのは私には確認できないけれども。
しかしそんな技術を持っているからと言って、惑星オース移住プランが詐欺ではないという保証はない。
理系的に言うと必要条件ではあるが十分条件ではないのだ。
つまり
① 技術を持っているという命題
② 移住プランが詐欺ではないという命題
について、
②が成立するには①が成立する必要はある
けれど、
①が成立しても②が成立するとは限らない。
わけだ。
そしてこのプランが詐欺なら、今やっている勉強は無駄になる。
そう思ってしまった時は本来目的の確認だ。
私がこれらの勉強をやっているのはあくまでうつ回復の為。
興味を持てて少しでも動ける事がうつ回復の手助けになりそうだからというだけ。
だから詐欺であっても、勉強内容そのものが無駄なものであっても問題は無い。
その事を確認する訳だ。
勿論興味を持てる理由の中に『ひょっとしたら本当に……』というものも含まれてはいる。
しかし完全に信じ切っている訳ではない。
そして信じていなくても本来目的には問題ない。
そこは間違えないようにしよう。
さて、語学の勉強と魔法の勉強以外にも移住計画実施の為にはするべき事がある。
体力の錬成と必要物資の選択及び購入だ。
そろそろ体力の訓練もはじめないとやばい。
期限に間に合わなくなる。
医者は当分行かなくてもいい。
治癒魔法で何とかなりそうだから。
それでもいつかは外に出なければならない。
そして外に出たならやりたい事もある。
ゴミ出し用の指定ゴミ袋の購入も理由のひとつ。
しかしそれだけではない。
コンビニ弁当を購入したいとも思うようになったのだ。
私の常食はお馴染みバランス固形栄養食。
しかし最近はこの食事も味気なく感じるようになった。
何か少しは味わいたいと感じるようになった。
以前はそう感じなかった事を考えると大きな進歩だ。
なお3日前から毎食ごとに風味を変る試みはしている。
朝はチーズ、昼はフルーツ、夜はチョコレートというように。
しかしこれでは満足できなくなってきた。
この固形バランス栄養食以外の、もう少し人間味のある料理を食べたくなったのだ。
キッチンで調理するような事はまだ自信がない。
温めたりするだけでもちょっと辛いかも。
以前は自炊派だったのだけれども。
だからまずは出来上がっていてあとは食べるだけの弁当からだ。
よし、病院だって本気になれば行けるのだ。
コンビニくらい行ってやろうではないか。
私の住む名前だけはマンションからコンビニまでは徒歩5分以下。
かなり近い。
家さえ出ればすぐだ。
出る事が出来れば、だけれども。
出かけるためには準備が必要だ。
顔を洗って服もちゃんと着て、髪を整え軽く化粧して。
そしてできるだけ人に会わない時間の方がいい。
別に対人恐怖症という訳では無いけれど。
タブレットの左上にある時刻表示を見る。
現在時刻は13時50分。
悪い時間では無いと判断する。
この時間なら間違いなく職場の人間とは顔を合わせない。
つまり顔見知りと会う可能性は無い。
ついでにカーテンを開けて外の天気も確認。
本来なら梅雨の季節だが外は晴れ。
決行に支障はない。
化粧だの髪だの服だの一式整えるのが面倒。
しかしやるしかない。
ゴミ袋を購入出来れば以前の目標であったゴミ捨ても出来る。
目を閉じて深呼吸を2回。
かっと目を開け身を起こす。
よし、まともな飯を食べるためだ。
コンビニへ行くぞ。
私はベッドから足を下ろし立ち上がった。
まずは洗面からはじめよう。
◇◇◇
寝癖がつきまくっていた髪は無理矢理整髪料で整えた。
短時間だし問題ない。
顔はオールインワンのクリームでごまかした後、目の周りだけメイクした後大きめのマスクをしてあとは省略。
服は面倒なのでポロシャツと適当なパンツ。
コンビニだからこれで問題ない。
そんな妥協だらけの格好で玄関へ。
サンダルをはいた後、目を閉じて軽く深呼吸。
通院以外での久々の外出だ。
ちなみに通院時は一応1時間くらいかけて準備を整える。
それに比べると遙かに軽装。
やっぱりしっかり準備した方がいいだろうか。
少し弱気になるがここはあえてこのまま行こうと思う。
言い訳をつくるといつまでも家から出られないから。
どうせ彼氏なしアラサー大女。
需要など無いし注目などされやしない。
それにこの辺には知り合いもいない筈。
だから絶対問題はない。
エコバックは持った。
財布入りのミニバッグはかけている。
念のため中身をもう一度確認。
財布とスマホはしっかり入っている。
財布の中身も問題ない。
コンビニだしスマホ決済で済ませるつもりだけれど。
部屋の鍵を右手に持ち、深呼吸。
よし出るぞ。
私、行きま~す!
玄関扉の鍵を開けノブをひねる。
外界の明るい光が目を襲った。
目が、目がぁ〜!
なんて某大佐が言うほど明るくは無い。
もう一度深呼吸をして一歩踏み出す。
思ったよりあっさり外に出た。
厳密には名前だけマンションの2階外廊下共用部分。
ここまで来てしまったら行くしか無い。
鍵を閉めて私は歩き出す。
燃えないゴミと燃えるゴミの袋、そして弁当。
あとはアイソトニック飲料とお茶以外の飲み物も欲しい。
他には甘いものも。
うん、食欲なんて出るのは久しぶりだ。
かなり私が回復してきた証拠だろう。
階段を降りていよいよ公道へ。
6月終わりだというのにガンガンに晴れている。
暑い日差しが私を襲う。
でも大丈夫。
太陽がいっぱいという訳でもない。
太陽が黄色くても人を殺したりはしない。
そういえば最近は映画も見ていない。
一応パソコンやタブレットで見放題のプランには入っているのに。
今日の魔法の勉強が終わったら見てもいいかもしれない。
しかし今日は外出したから明日かな。
目的地のコンビニはすぐそこだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます