第107話 騎士団

僕はアリオスさんに騎士団について教えてもらう。


「騎士団の何が知りたい?」


「これはここだけの話にして欲しいのですが、いいですか?」


「話してほしくないことを勝手に話すようなことはしない」

アリオスさんなら、言わなくても勝手に話したりはしないとは思うけど、念のためだ。


「お願いします。まず、僕は異世界人です。この世界の住人ではありません」

僕はアリオスさんに異世界人であることをバラすことにする。

言わなければ、これから聞くことに関して話がうまく伝わらないからだ。


「……続けてくれ」

アリオスさんは驚きながらも、最後まで話を聞いてくれるようだ。


「今から半年前くらいに僕は他の世界からこの世界に、神を名乗る存在に連れて来られました。連れて来られたのは僕だけではなく、他にもいます。その内の1人が騎士団に入ったようなんです。その人は僕達を集めて元の世界に帰る手立てを協力して探そうと言っています。アリオスさんはこの募集を知ってますか?」

僕はアリオスさんに魔法学院で書き写した第13騎士団の団員。募集案内を見せる。


「ああ、もちろんだ。知らない言語で書かれているようで、私にも解読は出来なかったな」


「それは元の世界の字で――――――と書かれています」

僕はアリオスさんに暗号とされている部分を翻訳して教える。


「なるほどな」


「僕は他の転移させられた人とは違う事情を抱えて動いています。なので騎士団について詳しく教えて下さい。特にこの第13騎士団についてお願いします」


「君の話は信じ難いが、理解はした。しかし、私も元とはいえ騎士だ。機密情報を漏らすわけにはいかない。なんでも話せるわけではないが、それでもよければ聞いてくれ」


「ありがとうございます」

僕はアリオスさんから一般的にこの世界に住む人なら知っているらしい騎士のことを教えてもらう。


それから第13騎士団についてもだ。


「騎士団は15個に分かれてますよね?関係性はどうなっているんですか?上下関係があるんですか?」


「表向きにはない。だが、あのナンバリングは格付けだ。一部は除くが、上の団長からの申し出には逆らえない」


「なるほど」


「このままいけば13騎士団は10騎士団くらいに格上げされるだろうな」


「そういうものなんですね。それから、推薦状に書かれていた第1騎士団の団長の試験について聞きたいんですけどいいですか?」


「ああ。本来であれば私の手からは離れている事案だがな」


「僕が騎士であれば合格していたと書かれたみたいですけど、僕が第1騎士団の団長になりたいといえばなれるものですか?」


「……本来決めるのは私ではないので、知らないと言いたいところだが、私が試験を突破したと言えば一時的にはなれるだろうな。その後に団員が君に付いてくるかは別問題ではある」

それほどの影響力がやっぱりあるということか。


「……そうですか」


「君は騎士団長になりたいのか?」


「……前にアリオスさんから騎士団をやめて衛兵になった話を聞いてはいますので、騎士に憧れがあるわけでもないですし、なりたくはないですね」


「そうだろうな。なら、なんでそんなことを聞いたんだ?」


「先程少し言いましたが、僕は他の転移者とは違う事情で動いています。第13騎士団にいる同郷の人とは敵対する可能性が高いです。そうなった時に、騎士団に所属しているというのが気掛かりなんです。第1騎士団団長という立場による力で、第13騎士団に所属するこの世界の住人に手出しさせないように出来るなら、その選択肢も有りだと思ってます」

第13騎士団を相手にしたくないというよりは、この世界の無関係な人を巻き込みたくないという方が大きい。


「その事情というのを教えてはくれるのか?」


「教えることは出来ません」


「そうか。言えないなら、無理に聞かない方がいいだろう。他に聞きたいことはあるだろうか?」


「レベル上げをしたいんですけど、どこか良いところは知りませんか?アリオスさんは相当鍛えていると思います。レベルも相当高いのではと思ってますが、どこか穴場的な所を知りませんか?」


「単純にレベルを上げるだけなら魔法学院が管理しているダンジョンがいいだろうな。ダンジョンに籠る必要がないのは大きい。ダンジョンに住むくらいの覚悟があるなら、ここから5日程馬で南下した所にある森の中に遺跡がある。そこの遺跡にダンジョンが隠されているんだが、とにかく魔物の数が多い。他のダンジョンとは比べ物にならない。だからレベルがすぐに上がる。魔法学院のダンジョンと違い、踏破した階層まで転移することは出来ないので、適正レベルの階層まで行き来するのに時間が掛かる。だからダンジョンに住む覚悟があるなら、この辺りのダンジョンで最効率だろう。但し、休む隙も与えられずに魔物が常に襲ってくるので、生半可な覚悟で入ると死ぬだろうな」


「そうですか……。教えていただきありがとうございます」

どうしても無理そうなら危険を冒すことも考えないといけないな。

魔物が沢山いるなら、それはそれでやりようはあるし。


「行くなとは言わないが、死んでくれるなよ。君のことをよくは知らないし、どういった事情を抱えているのかも知らない。だけど、直感として悪人でないのは分かる。だからこそ、君の言うことをなんでも聞くという無茶苦茶な条件だったとしても受けることにしたわけだが、そんな君が遺跡のダンジョンに行ったことで死んだら、教えなければ良かったと私は悔いることになる」


「ご心配ありがとうございます。……もし行くことになっても、死なないように安全マージンは多めにとることにします」


「そうしてほしい」


「聞きたいことはこれだけです。ハルト君がどういった選択をするのかは分かりませんが、ここに残る選択をしたのであれば、よろしくお願いします」


「ああ、それは任せてくれ。それから、言うかどうか迷っていたのだが、君の知りたがっていた第13騎士団だが、ちょうどこの街に滞在している。君の同郷の者が来ているのかは分からないが、会う気があるなら領主邸を訪ねるといい。紹介状を書いてあげるから、渡せば話は通してもらえるだろう。君には領主様も恩を感じているはずだから、私の紹介も必要ないだろうが、私の名前を出した方が、団長にも話をしやすいだろう」


「そうなんですね。偶然としては出来過ぎている気がしますが……」


「そう思うのは仕方ないが、事実だ。騎士団が来ている理由を詳しくは話せないが、君も関係している地下室の件だ。だから、このタイミングで騎士団が滞在しているのはなんの不思議でもない。最近の活躍もあって第13騎士団に仕事を振られたというだけだ」


「……あのあまり関わらないほうが良さそうな件ですね。わかりました。行く場合は遠慮なくアリオスさんの名前をお借りします」


「ああ、遠慮なく使ってくれて構わない。この後時間はあるか?」


「特に予定はありませんよ。冒険者ギルドに顔を出しておこうかなと思ってたくらいです」


「だったらまた模擬戦をしてくれないか?あの後、君が何をしていたのか私なりに推測を立ててみたんだ。推測があっていようが、いまいが、同じ手をくらう気はないが、君との模擬戦はワクワクするからな。暇なら相手をしてくれ」

推測を立てたと言ったということは、同じようなことをやってほしいという意味だ。


「……カラクリに気付いたとしても他言しないのであればお相手します」

アリオスさんは僕が衛兵としては捕まえないといけないようなことをやっている、又はやろうとしていると気付いていると思う。

その上で騎士団の話を教えてくれたりしているので、誠意には誠意で返したいと思った。

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