化け物バックパッカー、崇められる。

オロボ46

紙芝居【タビアゲハさま】






 昔、羽のない蝶は路地裏の中に隠れて暮らしていました。


 珍しい姿をしていたので、人間に見つかってしまうと怖がられ、誰かに捕まってしまうからです。


 そんな蝶の夢は、旅をすることでした。


 地球と呼ばれた星そっくりに作られた、この星を。


 路地裏の向こうに広がっている、世界を見るために。




 ある日、心優しいおじいさんがやって来て、羽をプレゼントしてくれました。


 真っ黒だけど、旅をすることができる大切な羽でした。


 蝶はおじいさんに、旅に連れて行ってくださいとお願いをしました。


 するとおじいさんは、世界の価値を見せてくれと言いました。


 おじいさんは、姿の違う人をいじめるところを見て、この世界が嫌いになったのです。


 だけど、蝶のキレイな触角を見て、この蝶と一緒に旅をすればこの世界が好きになるかもしれないと思いました。




 蝶はおじいさんとともに、旅に出ました。


 そしてその触角で世界を見て、その価値をおじいさんに一生懸命見せました。


 その姿は、おじいさんだけではなく、旅で出会ったたくさんのお友達にステキなものを見せることができました。




 ある日、蝶のお友達のひとりが、お名前をプレゼントしてくれました。


 そのお名前は、“タビアゲハ”。


 街という花を渡り歩いて、その触角でこの世界を見続ける蝶。




 タビアゲハさまは、今もおじいさんとともに、この星を旅しているそうです。

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