第93話 魔法VS魔法鎧

「タ、タルク様……そこを退いてください……!」


 魔法鎧兵たちは立ちはだかるタルクに対して、困惑した様子を見せた。


 だが、タルクの方には容赦などない。


 復讐に操られた魔法使いは脅威以外の何者でもなかった。


 彼が杖を振ると、一番前にいた魔法鎧兵の全身が鎧ごと激しく炎上した。


「う、うぐぁぁぁぁぁ!?」


 タルクに躊躇はない。近くにいた魔法鎧兵たちを次々に《炎上》魔法で無力化していく。


 そして、距離を取ろうとした残りの魔法鎧兵に向かって、タルクはつまらなさそうな表情で、手に握っていた大量の何かを放り投げた。


 それらは魔法鉱石を砕いたもののようだった。


 ベルドロールの屋敷の中庭で、私を狙う砲台として使われていたものと同じ材質だ。


「他の人間たちには、その鎧の防御効果が通用してたみたいだけどーー」


 空中に放り投げられた魔法鉱石の欠片。


 その全てにタルクの魔力が伝達され、次の瞬間、その破片の全てから強力な雷撃がほとばしり、魔法鎧兵の一団を一蹴した。


「魔法使いの僕には、どんな耐性魔法がかけられているのかがわかる。耐性を無効にする解除魔法を、攻撃の中に織り込めば、この通り一瞬だ」


 ついさっきまで仲間だった人間たちを容赦なく叩きのめすタルクの行動には、完全に賛成できないところもあるが、助けになっているのは事実だ。


 魔法鎧には魔法使いを。


 タルクの魔法は、完全に魔法鎧の防御を無効化していた。


 私は無限スキル枠を持っていたから、タルクを倒すことができた。


 しかし今、目の当たりにしたように、他の人間に対しては、最強と名乗ってもよいほどの力を持っている。


 私が倒すことができたからと言って、タルクが弱いわけでは決してない。


 後退していた残りの魔法鎧兵たちがタルクを止めるために突撃してくる。


 タルクは再び杖を構え、私に言う。


「ほら、ここは僕だけで十分だから、赤フードは早く父上をどうにかしなよ。できるでしょ? 君ならさ」


 私はタルクに向かって頷き、タルクのことを少し沈黙して見つめていた魔獣バルゴに向き直った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る