第78話 雷撃魔法の威力

「ビッグ。もし、私が倒れたら回収をお願い」


 そう頼むと、ビッグは心配そうな声で鳴いた。


「大丈夫。さらに強くなって戻ってくるからね」


 私はそう言って、空中に浮かぶビッグの背中から飛び降りる。


『落下ダメージ無効』のおかげで、私は高高度からの着地をなんなく成功させる。


 タルクはその程度ではもう驚かないようだった。


「お前がスキルを使う冒険者としては、それなりにやる方だってのはわかったよ! でも……それでも、魔法使いの僕には勝てない! 残念だったなっ!!」


 正面に立った私に向けて、杖をかざすタルク。


「僕の全力でお前を倒す。もう終わりだ、赤フード!!」


 そして、杖の先端から魔力が撃ち出されたのを感知した。


 魔力は直接私に向けられて放たれたわけではなく、中庭中に設置された魔法鉱石に拡散する形で放たれた。


 そして、砲台代わりの魔法鉱石を経由して、雷撃魔法へと変換されたタルクの攻撃が、全方位から私へと襲いかかる。


 私は脳内でスキルを発動する。


『血液循環強化』、『体内組織修復強化』、『外的損傷修復強化』、『ショック耐性強化』、『意識消失率低下』、『痛覚鈍化』……。


 あらゆる身体機能、防御機能を上昇させ、私はその場から動かない。


 強烈な雷撃魔法が四方から、私へと到達しーー。


 全身を激しい痛みが駆け巡った。


「う、ぁぁあああああっ!!!」


 内蔵がかき回されるような痛み。意識が飛びかける。


 フードが焦げた臭いがする。


 だが、私の身体はこれでも最大まで防御機能を高めてある。


 こんな攻撃、普通の人間が受けたら一瞬で死んでしまう。


 同系統のスキル『電撃Ⅴ』を遥かに越えた威力。


 もしかしたら、私が扱うような「Ⅹ」レベルのスキルに相当するものかもしれない。


 魔法を使えるものが今後、手軽にベルドロール家の手によって生み出されるとしたら……。


 やはり、魔法使いは脅威だ。


 保有する力に対して、精神年齢が低いことも問題だった。それも手軽に強力な力を手に入れられるが故か。


 私もエルバルク家の令嬢として、相応の倫理観を確立していなければ、タルクと変わらない、力を振りかざすだけの人間になっていたかもしれない。


 そうして意識が朦朧とする中。


「もう一撃食らえ!!」


 タルクの叫びとともに、二度目の雷撃魔法が迫る。


 身体に力が入らず、もはや回避することは不可能だった。

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