第75話 攻撃看破

 魔法『炎上』、『氷結』はともに何の前触れもなく、対象となる護衛に効果を発揮した。


 見るだけで対象を指定できるのだろうか。


 いや、魔法は魔力をもとに現象を発生させる力だ。


 とすれば、可視化できないだけで魔力の塊が対象に向かって飛んでいっていると考えるべきだ。


 未知の攻撃方法を相手にするのだ。念入りに分析をしなければならない。


 私は自身を少し広く囲う形で、『魔力感知』のスキルを発動した。


 そして、魔法使いタルクの攻撃を待つ。


「来なくていいのかい? 僕が攻撃したら一瞬で終わってしまうよ?」


 余裕の笑みを見せるタルク。慢心だらけの少年だ。


「ああ。自慢の魔法を見せてくれ」


 赤フードに身を包んだ私は言う。


「つまらないな。赤フードの冒険者の力を見てみたかったのに。僕の魔法でもう二度と動けなくなってしまうなんて!」


 タルクが杖を振りかざし、攻撃体勢に入る。


 と同時に、私が張った『魔力感知』が反応する。


 予想通りだ。


 どんな魔法が迫ってくるか、具体的にはわからないが、攻撃が来るタイミングはこれで把握できる。


 私がその場から真横に回避すると、後方にあった本棚が突然燃えた。


『炎上』の魔法だろう。


「どうしたの? 私を倒す魔法を見せてくれるんじゃなかったのか?」


「タルク、何をやってる!! 早くコイツにトドメを刺せ!!」


 バルゴがわめく。


 だが、タルクは自分の魔法が避けられたことで、ひどく混乱していた。


「な、なななんで!! 僕の最強の魔法がなんで避けられたッ!?」


 攻撃魔法の特性は把握した。近距離で戦闘では、かなり不利だ。


 それに他にも別の魔法発動手段があるかもしれない。


 このまま室内で戦うのは危険だ。


 そのため、私は屋敷の壁に向かってスキル『壁貫通』を発動した。


 次の瞬間、壁の一部が吹き飛んで外への道ができる。


「次は外で戦おうか」


 私はそう言って、ベルドロールの屋敷の外へと出た。

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