第66話 最強の令嬢

 私は振り向くと同時に、ドレスの内側から短剣を取り出し、男たちへと走っていく。


「な、なんだぁ!?」


 今までこっそり近づいてきていたつもりだったらしい男たちは、急に身を翻した私に驚いていた。


 敵の人数と武装を確認。


 六人の男。いずれもアクティブスキルの発動の気配はなし。


 手には木の棒などを持っているが、刃物を持っている人間は一人もいなかった。


 これで誘拐しようなんて呆れる。


 いや、本当にお嬢様だったら、複数の男に囲まれただけで逃げられないか。


 しかし、そういう場合はきちんと護衛がいるものだ。


 結局、簡単に貴族の令嬢をさらうことなどできない。


 私はパッシブスキルで向上させた身体能力を活かして、六人の男を次々と殴り、蹴り倒していく。


 短剣はあくまで脅しだ。


 こんなものをほぼ一般人のような男たちに振りかざしたら、冒険者失格である。


 そして、最後の一人を地面へと蹴り倒した。


「な、なんだよ、お前……なんでそんなに強いんだ!」


「あなたたちが弱いんじゃない?」


「くそ、ベルドロール家の奴ら、エルバルク家の令嬢をさらってこいって、無茶な依頼しやがって!」


「ベルドロール家?」


「え、あ、それは……」


「教えてもらうわよ」


 私は短剣を突きつけ、男は顔を真っ青にした。


 この姿で歩くことで、得られる情報もあるという新しい発見をしたが、地面で気を失っている男たちの記憶をどうにかするのも面倒だ。


 あまり多用はしたくないと思った。

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