第46話 全てを透明にする鉱石
私が見つけたそれは、ダンジョンの奥に溜まった魔力によって変異した鉱石だった。
鉱石自体は目視することができる。
普通に見ればただの鉱石で、何も問題はないように思えた。
しかし、よく観察するとその危険性がわかる。
鉱石に接した壁や床、その全てが透明になっていて、その奥が透けて見えていた。
「接触すると透明にさせられる鉱石……」
ここで重要なのは、透明になれる鉱石ではなく、透明にさせられる鉱石であるという部分だ。
今、目の前の鉱石には「触れた物体を透明にする」魔法が発動しているようなものだと考えるべきだ。
そして、私はかけられた魔法を解除するスキルを持っていない。
うかつに触れれば、一生姿が透明になった状態で暮らさなければならないかもしれないのだ。
もちろんしばらくすれば、元に戻る可能性もある。だが、あまりに不確定要素が多すぎて、触るわけにはいかなかった。
自分で姿を消せるのと、姿が消されるのは、大分意味合いが変わる。
誰にも認識されない存在になるのは、苦痛を通り越して、正常な精神を保って生き続けられるかさえ怪しい。
草原で戦った透明モンスターは自分が透明になっていたことに気づいていたかどうかわからないが、モンスターの場合は獲物もとりやすくなるし、まだいいかもしれない。
しかし、人間はコミュニケーションを取らなければ生きていくことは難しい。食材の調達ひとつ、店でできなくなるのだから。
「…………店?」
私は嫌な予感に包まれた。
どこかでそんな話を聞いた。
店が荒らされたという話。気づかないうちに荒らされていたケースや、夜中を狙ったケースがあったらしい。
私はその事件を、単なる商売敵による嫌がらせだと思った。
しかし、それがもし店への嫌がらせではなく、自分が生きるために、仕方なくやっていたことだとしたら?
「この鉱石、思った以上に被害を生んでいる可能性がある……!」
何かのスキルで遠距離から破壊するべきだ。
そう思った時。
「あーあ。また冒険者が見つけちまったか」
知らない声がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます