第109話 勇者と魔王とゴロツキ
「……まだ、何か用ですか?」
俺がそう言うと自警団の団長、そして、団長の周囲の男たち……おそらく自警団の連中、ざっと20人程度は、ニヤニヤしながら俺のことを見てくる。
「いやね……先ほどお金を貰ったわけですが……よく計算すると、お金が足りないんじゃないかと思いましてね」
「……はい? 足りない? そんなわけ無いと思いますけど」
俺がそう言うと団長は剣を抜いて俺の方に向ける。
「違約金ですよ。アナタは依頼を受けると言ったのに、断った……違約金が払われていないんですよ」
「違約金ですか……なるほど。確かにそうかもしれないですね」
……実際、その可能性は考えていた。俺は懐からもう一つの袋の束を出す。
「なっ……なんで……!?」
団長と周囲の男たちはどよめく。
「なんで、って……そりゃあ、この世界、魔物を倒せばお金が手に入るじゃないですか。それで貯めまくっていたらこれだけになったんですよ」
そう言って俺は袋を無造作に男たちに向けて投げてよこす。
「ほら。どうぞ。違約金です」
男たちは今にも袋を取りたそうだったが……明らかに機嫌が悪そうだったのは、団長だった。
「な、なるほど……大層強いのですね、冒険者様は」
「えぇ。少なくともこんな小さな町で勝手に自警団を名乗っているゴロツキよりは強いつもりです」
「なっ……わ、我々は自警団です! ゴロツキではありませんよ!?」
躍起になって否定している時点で認めているようなものだと思うが……。
「いえ。別にあなた達だけじゃないですよ。これまでの旅で結構いたんですよ。自警団を狙う盗賊とか、奴隷業者とか……すいませんね」
俺がそう言うと団長は完全に頭に来てしまったのか、他の者にも剣を抜くように指示する。
「……戦うんですか? 俺と?」
「当たり前だろ!? ここまでコケにされて黙っていられるかよ!?」
「……言葉遣い、ゴロツキみたいですよ?」
「なっ……お前ら、やっちまえ!」
団長……ではなく、ゴロツキのリーダーがそう言うと同時に、周囲のゴロツキ達が襲いかかってきた。
スキルは……「鑑定」を使って強さを確認する必要もないくらいだ。
「さっさと終わらせますかね」
俺はそう言ってスキル「超速移動」を発動したのだった。
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