第101話 勇者と魔王とダメな言い方

「……はい?」


 俺は振り返ってドラコのことを見る。ドラコは……俺のことを怒りのこもった目つきで睨みつけていた。


「なんですか? なぜ俺を睨むのです?」


「ソーマ、酷い。オーク達のこと、見捨てる?」


「見捨てるって……仕方ないでしょう? 誤解をなんて解けるわけもないし……だからといって、オーク達の味方をするわけにもいかないですし」


「じゃあ、ドラコ、頼む」


「……はい?」


 ドラコはそう言って俺の方に近付いてくる。


「ドラコ、ソーマに頼む。オークの味方、してほしい」


 ドラコは懇願するような目つきで俺にそう言ってくる。


「……何を言っているんですか? 聞いていなかったんですか? 無理だって」


「ドラコ、ソーマの仲間、仲間の願い、聞くべき」


 ドラコはそう言ってさらに俺に近付いてくる。俺はどんどん距離を詰めてくるドラゴニュートの少女と思わず距離を取ってしまう。


「……無理です。そもそも、アナタと俺は……ただの同行者です。仲間じゃない」


 そう言うとドラコは目を丸くする。そして、そのまま悲しそうな顔をして何も言わなくなってしまった。


「ソーマ……今の言い方は……駄目じゃろ」


 と、マオが信じられないという表情で、そんなことを言ってきた。


 何が駄目だというのか? 俺は少しも間違っていない。


 俺たちはただ、王都までの連れ添いなのだ、仲間だなんてそもそも、初めて言われたのだし……。


「……知りませんよ。俺はもう行きますから」


「あ! おい! ソーマ!」


 マオの呼び止める声は無視して、俺はそのままドラコを残し、長老の家を飛び出したのであった。

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