第93話 勇者と魔王と疾走
なるほど……セリシアの言うことに一理ある。
確かに、ドラコの向かっているであろう場所の先にはオークらしき存在が探知できる。
それがわかれば、一刻も早く、ドラコに追いつく……いや、先回りしておく必要がある。
「俺、先にオークの集落に行きます。二人はあとから付いてきて下さい」
「駄目じゃ!」
と、マオが憮然とした態度でそう言う。
「……なぜです? 一刻も早く行かなければならないのですよ」
「お主だけで行って、オークと話し合いができると思うのか?」
……悔しいが、マオの言う通りだった。俺だけで行っても、おそらく、門前払いか、最悪争いになるだろう。
「……わかりました。では、マオ。アナタも付いてきて下さい」
「うむ。それで良い。なにせ、儂は魔王じゃから……って、おい! 何をしておる!」
と、俺はマオを背中に背負った。
「お、お主! 何をしておるかわかって……ひゃっ! し、尻を触るでない!」
「仕方ないでしょう……とにかく、全速力で行きます。しっかり掴まっていて下さい。セリシアは、宿屋に戻っていて下さい。万が一、ドラコと俺達が行き違いになる可能性もあるので」
「えぇ……わかりました。では、ソーマ様、マオ様……どうか、ドラコを」
セリシアの言葉を聞き終わらないうちに、俺はスキル「超速移動」を使用する。
そのまま、俺はマオを背負ったままに、全速力で疾走し、オークの集落を目指したのだった。
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