第91話 勇者と魔王と面倒事
「……オーク、ですか」
この世界ではオークというのは大きく分けて二種類存在する。
一つは単純に凶暴な存在としてのオークである。こちらは俺も何度か討伐したことがある。
転生する前の世界の漫画やゲームなんかのイメージの通りに、略奪や殺戮を好む凶暴な存在である。
しかし、問題は……もう一つの方である。
俺は団長に今一度訊ねてみることにした。
「……そのオークはどこにいるのです?」
俺がそう言うと団長は、俺が依頼を引き受けてくれると思ったのか、嬉しそうな表情をする。
「実はこの町の近くにオーク共が集落を作っておりまして……依頼というのは、その集落に住むオーク共を退治してほしいのです」
集落……その言葉で俺はそれらのオークが、俺が討伐したことのないオークだということを理解する。
「何? オークが集落を作っておるのか?」
マオが不思議そうな顔をする。まぁ、それも流石に無理はないだろう。
集落を作るオーク……ややこしい話ではあるが、厳密には彼らはオークであってオークではない。
凶暴なオークというのは、魔物という認識で良いのは間違いないのだが……集落を作って暮らすオークというのは、そもそも、この世界の原住民的な存在らしいのである。
俺も魔王を討伐の旅の過程でオークの集落を何度か見たことがある。
彼らは極めて原始的な狩猟生活をしているだけで、人間への殺戮や略奪はしないようだった。
そもそも、魔王の配下という認識も、彼らにはないのではないだろうか?
つまり、俺は今……悪さをしないオークの討伐依頼を頼まれているということなのである。
「はい……オークの集落があっては安心して暮らすことも出来ません。どうか……どうかお願いします! 奴らを退治して下さい!」
そう言って、団長は頭を下げる。
どうにも……思った以上に面倒なことを押し付けられようとしているようであった。
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