第二十五話 決着


”キング!クイーン!お待たせ”


 キングとクイーンが、オーガたちにスキルを浴びせかける。


”ライ!”


『はい。タイミングはマスターがお願いします』


”わかった。キング。クイーン。離脱!”


 二人から、了承が伝えられる。


”テネシーとクーラーは、キングとクイーンが抜けた場所にスキルを!”


『マスター。サポートに、フィズを!』


”お願い。皆。キングとクイーンの離脱をサポート。行くよ!”


 キングとクイーンを追撃しようとしていたオーガがスキルを受けて、立ち止まる。離脱が成功したのを見て、ライから作戦が伝えられる。


『マスター。掃討作戦が終了。剥ぎ取り班の作業は続行中。意識のある者たちを、後方に搬送。結界に異常なし』


 ライから、戦況が伝えられる。

 私たちが、オーガと正面から戦う必要はない。解っている。でも、気分が悪いと感じたのも間違いではないが、なぜか私たちが戦った方がいいと感じていた。理由は解らない。戦いを決めた時には、赤字覚悟だったけど、ライの報告からは、収支は黒字になりそうだ。使った魔石は回収が出来そうだ。大物からは、素材も取れているようだ。家を守ってくれている者たちへのお土産もできた。


 キングとクリーンが、上がってくる。


 オーガたちが、追撃を止めて元の位置に戻ろうとしている。


”追撃は必要ない。持ち場に戻って”


 フィズたちが、当初の作戦の位置まで下がる。


 私がいる位置まで、テネシーとクーラーとピコンとグレナデンが上がってくる。


 ライを乗せたアドニスが戻ってくれば、作戦が開始できる。


『マスター!』


”アドニス!ライ!大丈夫?”


『大丈夫です。返り血です』


 どうやら、魔物になってしまった動物が意識を芽生えさせて、野良ゴブリンと戦闘をしていた所を発見して、アドニスとライで撃破してきたようだ。スキルは、動物が居たので使えなかった。


”それで、助けた動物は?”


『パロットと同種で、話をしたら、”是非”と言って居ます』


”わかった。オーガを倒したら、連れて行こう”


『はい』


 さすがに、パロットと同種だと猫だと思う。アドニスだけでは難しいだろう。ライが乗っていなければ可能なのかもしれないけど・・・。


 今は、帰りの心配をする時ではない。まずは、こちらを睨んでいる(だろう)オーガたちを殲滅することが最優先だ。


”それで、猫は?”


『ドーンとジャックが保護しています』


”わかった”


 オーガは、7体。キングとクイーンの攻撃で多少は体力を消耗している。


”作戦の変更はなし。オーガたちが最後だよ。無理しないで、全力を出そう。大丈夫。作戦は考えてある。大丈夫。私たちは勝てる!行くよ!”


 キングとクイーンが、オーガの上位種にスキルを浴びせる。

 オーガの一体が釣れたことを確認すると、距離をとる。開いた場所にテネシーとクーラーが楔を打ち込むために、スキルを発動する。楔を基点として、射程範囲から土のスキルが使える者が、壁を作る。壁に、ダークたちが結界の魔石を埋め込んで発動する。弱い結界だけど、これでオーガの上位種の一体が隔離できた。


 あとは、同じ事を6回繰り返すだけだ。


 同じように繰り返した。上位種はこれで隔離できたが、色違いは・・・。


『マスター。色違いはダメです』


”そうだね。プランBに移行”


 陣形を変更する。

 キングとクイーンが中心となって、隔離したオーガの上位種を倒す。アイズやドーンが遠隔攻撃を行う。

 上位種のオーガたちは耐えているが、体力を削っていけば倒せる。


 プランBは、色違いがオーガ・キング(仮名)から離れなかった時の作戦だ。

 色違いは、スキル攻撃ができる。オーガ・キングから離れない可能性を考えていた。実際に、キングとクイーンが攻撃をしている時にも、オーガ・キングから離れなかった。


 プランBは、離れない事を積極的に利用する。

 時間がかかるが、安全は絶対だ。


”ライ。準備は?”


『終わっています』


”ピコンとグレナデンは、キングとクイーンをサポート。残りは、射程距離のギリギリから、スキルで攻撃!開始!”


 カーディナルと私は、オーガ・キングの正面まで移動する。至近距離ではない。まだ武器もスキルも届かない。相手も同じだ。違うのは、オーガ・キングの後ろ側には、アドニスとライが位置している。


 これで、私とライでオーガ・キングを挟んだ形になる。

 上位種は、順調に削れている。まだ倒れるのには時間がかかりそうだけど、時間だけが問題になりそうだけど、大丈夫だ。


 色違いは、まだ動いていない。

 スキルが被弾した者は、スキルが打たれた方向に咆哮をあげている。徐々にだけど、オーガ・キングと色違いのいる場所に距離ができ始めている。色違いやオーガ・キングの動きから、2メートルくらいは引き離したい。


 しかし・・・。戦ってみた感じだと、1メートルが限界だ。


 あと少しだけ・・・。


”今!ライ!”


『はい』


”行くよ。カーディナル!アドニス!”


 返事は必要ない。行動がすべてだ。


 カーディナルとアドニスは、スキルを使って、全速で開いた隙間に突っ込む。


 オーガ・キングも私には気が付いている。

 武器を構えるが、一瞬だけ早くライが後ろからオーガ・キングに攻撃する。スキルは使わない。物理攻撃だ。オーガ・キングが私から視線を一瞬だけ外す。目を離された瞬間に、カーディナルに指示を飛ばす。ライが攻撃した場所とは、反対に攻撃を加える。


”硬い!”


『大丈夫です』


 硬いが、攻撃が入った。

 オーガ・キングから紫の体液が流れです。


 ”釣り野伏せ”が使えないと解ってから考えた作戦だ。

 動かないのなら、動かさなければいい。上位種と色違いとの距離が開けば、オーガ・キングをその場所から動かさないことが、私とライの役目だ。そのために、ヒットアンドアウェイを繰り返す。最大戦力による、ゲリラ戦だ。すれ違いざまに攻撃を加える。ほぼ、同時に攻撃を加える事で、オーガ・キングの動きを封じる目的がある。


 私とライは、オーガ・キングを倒せなくても、他の上位種や色違いが倒されるまで、ヒットアンドアウェイを繰り返す。ダメージは蓄積されていく、自然回復の能力を持っているようで、ダメージは回復されてしまうが、連続で繰り返す攻撃のダメージはゼロにはならない。

 ごくわずかな違いだが、オーガ・キングの動きが悪くなる。


『マスター!テネシーとクーラーが来ました』


”テネシーとクーラーは、上空からスキル攻撃”


 テネシーとクーラーが、オーガ・キングの頭上からスキル攻撃を行う。

 私とライへの攻撃の圧力が減って、ヒットアンドアウェイのヒットの攻撃が1撃だったものが2撃に変更できた。


 攻撃している回数から比べると、オーガ・キングが受けているダメージは、それほど深くはなさそうだ。


”ライ!”


 ライが乗るアドニスが、オーガ・キングのスキルに攻撃をされる。衝撃を刃にして飛ばすスキルを使ってくる。


『大丈夫です。結界が間に合いました』


 元気そうな声だし、実際にダメージはなさそうだ。

 勝ち戦になりつつあると言っても、まだ勝ち切れていない。上位種も色違いもまだ健在だ。ここで、合流されてしまったら、撤退を考えなければならない。それ以上に、アドニスやカーディナルが・・・。誰かが怪我をしたら、撤退を考えなければならない。


”やれる?無理は”『大丈夫です。アドニスは被弾していません』


 アドニスは・・・。が、気になるが、集中しろ。私が折れたら、終わりだ。


 キングとクイーンが、上位種を倒した。


 残るは、色違いとオーガ・キングだ。


 今?恐れるな。自分たちを、家族を信じよう。そう・・・。大丈夫。大丈夫。


”行くよ!総攻撃!狙いは、色違いの、黄色!”


 了承の声が聞こえる。

 黄色の色違いが倒れた。それから、青と赤を倒した。


 そして、オーガ・キングだけになってから、さらに全員で遠距離攻撃に切り替える。


 オーガ・キングが倒れたのは、東の空が明るくなりかけた時だ。

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