第12話 冒険しない?



 その後、態度と喋り方が悪い風ないい人達は離れていき、私とジルは受付嬢の方に冒険者ギルドの説明を聞く。

 冒険者にはランクがあり、Gから始まり、F、E、D、C、B、A、Sと上がっていく。


 私とジルは登録したてなので、もちろんGランクから。

 そのランクに見合った依頼があり、受けられる依頼は自分のランクか、その一つ上のランクだけ。


 依頼はギルドの壁に貼り出されてる依頼書から受けられるらしい。


「ここまでお話しましたが、何か質問はありますか?」

「冒険をするのはどのランクから出来るのですか?」

「……はい?」


 私の質問に、受付嬢の方は意味がわからないといったように聞き返してきた。


「いわゆる、『冒険!』みたいな依頼はどのランクから受けられるんですか?」

「その『冒険』っていうのがあまりわからないのですが……」

「だって冒険者ギルドでしょう? 冒険するんじゃないんですか?」

「……えっと、しません」

「えっ?」


 ……本当にビックリしたわ。

 まさかの冒険者ギルドは、冒険をしないらしい。


 話を聞くと、街の雑用から魔物の討伐依頼まで幅広く受けているらしいけど、いわゆる「冒険!」みたいな依頼はほとんどないみたい。


「本当にないんですか? その、未開の地を冒険する、とか……」

「ないですね。そのような依頼をする依頼者がいませんから。あったとしても、あるかもわからない『不死の薬草を取ってきてほしい』といった、本気か冗談なのかわからない依頼ですね」

「……そうですか」


 名前詐欺じゃないかしら?

 冒険者ギルドなのに、こんなにも冒険らしいことをしないなんて……。


 だけどもう登録もしちゃったし、登録料も払ってしまった。

 だけど私達はお金を稼ぐ手段が今はないから、冒険者ギルドの依頼を受けて達成すれば、お金を稼ぐことが出来る。


 まだGランクだから、日銭ぐらいしか稼げないと思うけれど。


「依頼はいつでも受けられますが、受注してからの日で考えるので、朝一番に受けることをオススメします」

「そうですか。ではわかりました」


 今日はもう夕方なので、今から受けたら時間が足りなくなる、ということだろう。

 ということで、私とジルは冒険者ギルドを後にした。


 はぁ、なんだか期待を裏切られた気分だわ。


「ジルは冒険者ギルドが、冒険しないってことはわかってたの?」

「うん、知ってた」

「じゃあ言ってくれればよかったのに」

「俺が言っても、フラーだったら直接聞かないと信じないかもって思って」


 うっ、それは確かにそうかもしれないわね。

 だけど……。


「ジルが言うことなら信じるわよ。ただ直接聞かないと納得はしないかもしれないと思うけど」

「……あまり変わらなくない?」

「ち、違うわよ。ジルのことは信頼してるから、嘘はついてないって絶対にわかる。けど納得出来ないから直接聞きにいく、ってだけよ」

「……まあ、信頼してくれてるならいいよ」


 口角を少しだけ上げてそう言ったジル。


 ジルはあまり表情を変えることはないけど、時々ちょっとだけ表情筋が動くのが、なんだか可愛い。


「じゃあ今度は商人ギルドに行こうか」

「えっ、もう冒険者ギルドで登録したから、商人ギルドに行く必要はないんじゃないの?」

「あるよ。商人ギルドで登録をすれば、他国へ行くときの関税が減税か免除されることが多いから」

「そうなの? 冒険者ギルドに所属しても免除はされないの?」

「ランクごとに違う。Gランクだったら減税もされないと思う。商人ギルドだったら登録料と会費とかを払っていれば、免除や減税されることが多い」

「そうなのね」


 私達の目的は、この世界を旅すること。

 だからいろんな国を見て回ることが多くなると思うから、確かに他国や街へ入るときの関税は安いほうがいいわよね。




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