第23話 2年1組本気の玉入れ
聖天坂高校2年生のクラス対抗学年競技は玉入れである。
現得点の低いクラスから2クラスずつ行われる。現在トップの我ら2年1組は頂点にて這い上がって来る者たちを待ち受ける立場だ。
その間、クラスメート全員がかたまり明翔による何なら玉全部入れてやる大作戦の最終確認を行う。
「決勝戦、2年1組と2年7組です」
放送席からの声に、我らが赤い玉のサークルに入る。
「スタート!」
の声と共に、体が大きいってかデブめのヤツから四つん這いになって4人並ぶ。
その上に、半身をずらして3人が並ぶ。その上に、さらに2人が並び、頂点に颯太が立つ。
そう、組体操のピラミッドを形成したのである。
背の高い俺と柳、コントロール抜群の明翔が颯太に玉を届ける係、後の女子や黒岩くんたち小柄な男子が玉拾いの役割だ。
むやみに玉を投げるよりも、このようにシステムを構築してからの方が玉の数を稼げるのではないか、と明翔が仮説を立てた。
正解だったようだな。
おもしろいように颯太が玉を入れていき、カゴいっぱいになった。
「颯太! 玉が落ちないように慎重に!」
「分かった!」
やる気ねえって言ってたくせに、いつの間にやら颯太も真剣な表情で玉を重ねる。
「バカ颯太! 落とすなよ! コンプリート狙えるぞ!」
もちろん、俺も初めての玉入れコンプリートを目前に興奮状態である。
パン! パン! というピストルの音で玉入れ終了だ。
「やったー! 勝ったー!」
「反則だろ! 1組!」
「ふっ。どこのルールブックに玉入れでピラミッドを作るのは反則だと書いているんだい? 負け犬の遠吠えはみっともないよ」
クラスを代表して学級委員長サマ柳龍二が批判を受けて立つ。
柳っていっつもひと言多いよな。
7組の連中が怒って白い球を投げつけてくる。
「何すんだよ!」
ムカついて投げ返すと、
「コラ! 勝ちを無効にするぞ! 両クラスともやめなさい!」
と先生にマイクで怒られてしまった。
周りの応援席から失笑が聞こえる。
うっ……恥かいたじゃねえか。
「やったあ! 作戦成功だな!」
「たぶん来年のルールブックにピラミッド禁止が足されるな」
「パイオニアだけが得られる恩恵なのだよ」
「これもう優勝いけんじゃね?」
応援席に戻っても興奮冷めやらぬ2年1組。
だが、この後の競技で得点が得られず、午前を終えたところでトップの1組365点、2位7組355点まで追い付かれてしまった。
「完全に7組、俺らをつぶしに来てるな」
「てか、他のクラスも7組に点入るようにわざと勝ち譲ってね?」
「くそう、やりすぎたか。7組に連合軍を組まれてしまった」
頭を抱える2年1組の生徒たち。どうすれば、7組連合に負けず優勝を手中にすることができるのか。
「勝負を決めるのはリレーだね。ざっと計算したところ、午後からの競技でこの10点差が追い付かれることはあっても逆転される可能性は低い。だが、配点の大きいクラス対抗リレーで負ければ僕たちの優勝はないよ」
「おお、イケメンメガネ王子の頭脳が解を導き出したぞ!」
「頼んだぞ! リレーの8人!」
「とりあえずは、メシだ! 腹が減って腹が減って、これじゃ勝てるもんも勝てねえ」
「みんな、メシだ! 明翔が全力を出せるように、みんな弁当から少しずつ明翔に力を分けてくれ!」
「おう!」
「がんばってね、高崎くん!」
「うん! ありがとう!」
教室で弁当を食べながら、みんながおかずを明翔の元に献上しに来る。
「こりゃ、やるしかねーな! こんだけ食っといて走れませんでしたとは言えねえ!」
うんうん、明翔は食えば食うほど力を発揮するヤツだ。
「絶対勝つぞ、お前ら!」
「おー!」
口いっぱいほおばってる明翔に代わり、げきを飛ばす。絶対、負けねえ!
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