第72話
ヨナは、古アパートの手すりのように冷たくなったレトの肩を温めた。効果は薄く、元通りに温めるには時間がかかる。肩越しに伝わる息使いには確認するまでもない、強い疲労の色が現れていた。
「さあレト。つらいかもしれないが」
「ええ」
レトを立たせてその場を後にする。奇跡的に安全が保たれていた場所は、すぐに見えなくなってしまった。
「はぁ。はぁ・・・ヨナ?あなた・・・知っている?」
「何をだ?」
「生き物は死ぬ直前、脳からドーパミンっていうホルモンを分泌するの、ドーパミンはね
「ドーパミン?君を食べる?わるいが、理解できない」
「わたしはあなたを食べたいわ。ヨナ」
「・・・」
ヨナが返事を怠ったのは、ふと、ある疑問が彼の脳裏をよぎったからであった。その疑問とは、自分が名誉評議で殺害して来た多くのブルーカラー達の事だ。レトのいう事が仮に本当ならば彼等は死ぬ間際に分泌されたドーパミンによって幸福に包まれたまま死んでいったのだろうか?と、いうものだった。しかし、そんな疑問も一瞬にして消し飛ぶこととなる。
「レト!!」
「・・・ッ!!」
悲鳴や地鳴りのような足音さえもかき消して、轟音と共に
「レト!?無事か?」
「ええ・・・ええ、大丈夫、大丈夫よヨナ」
「あんなものまで・・・一体」
「あれはね、わたし達の決戦兵器」
「君たちの、決戦兵器?」
「ええ。あれは・・・ベースメンター・・・!」
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