Prologue


「あれぇ? 二人が居ないよ? 」


 季節は巡り、また春が来た。


 一仕事終えた天使達は、二人が暮らすあの街を眺めている。


 でも、そこに遥と海斗の姿は……ない。


「わっ!! 」


 ふわりと身体が浮いた。


 と思ったら次の瞬間、天使達は雲にドスンと尻餅をつく。


「ここから見るといい」


 声の先を見る天使達に、神様が手招きしている。


「遥と海斗、どっちが見えるの? 」

「離ればなれになっちゃったの? 」


 心配そうにする天使達に微笑む神様。


「良いから見てごらん」


 神様に促され、雲の隙間から覗き込むと……。


「遥だ! 」

「海斗もいるよ! 神様、もしかして……」


 その時、神様の立派な髭がわずかに上がった。滅多に見ることの出来ない……神様の微笑み。


「ねぇ、見て。神様が笑ってるよ」


 一人の天使が隣の天使にこっそり耳打ち。


「ほんとだぁ、神様うれしいんだね」


 神様に聴こえないよう、こそこそ話す二人の天使。


「少しだけ……」


 神様が指を一振りする。


 何が起こるのか見守る天使……でも何も起こる様子はない。


「神様、何をしたんですか? 」

「見ていなさい。そのうち分かるから」


 遥か空の彼方から……神様と二人の天使は優しく見守ります。朝陽に照らされて、仲睦まじく笑いあう遥と海斗を。

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