前へ

ふー。

緊張

「おまたせ。彩葉いろはであってる?」

 昨日のビデオ通話で初めて顔を知った彼。

「初めまして。貴亮たかあきでいいんだよね?」

 人見知りであるということを自覚している私たちはぎこちなくお互いがお互いであることを確認する。今日は貴亮にどこか遊びに行こうと誘われたのだ。

 とりあえず行こっか。貴亮の声を合図に私たちは駅のホームへ向かった。行先は江ノ島。お互い海が好きで、私たちが好きなバンド、あめのいろ。のMVの舞台が江ノ島だったからという単純な理由。

 大人からしたら東京から神奈川に行くとか、ちっぽけでなんでもないことなのかもしれないけど、私にとっては大冒険だ。

 貴亮が電車とかを調べてくれたから私は着いていく。電話やチャットで話す時は驚く程に会話が止まらないのに実際に会うと少し気まずい。何を話そうかと頭を回転させていた時、貴亮から沈黙を破ってくれた。

「彩葉は、なんで僕の誘いに乗ってくれたの?」 

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