145.結婚と親子と飼い主

 アガレスの隣に座るアモンは、いつもと違う恰好をしていた。赤じゃなくて、黒い服だよ。珍しいね。でも爪は赤くていつものアモンだ。


「あの……実は、その」


 アモンがもじもじと切り出す。それをアガレスが遮った。


「私から説明します。陛下、アモンと私の結婚をお許しいただきたいのですが」


「構わん、よかったな」


 まだ続きそうなのに、パパは「いいよ」って言った。結婚って、アモンとアガレスはどうなるの? もういなくなっちゃうのかな。不安になった僕を、パパが抱き締める。お膝の上だから、僕のお腹に回った腕がぎゅっとした。


「結婚は、ずっと一緒にいる約束だ」


 不安が消える。アモンはいなくならなくて、アガレスと一緒にいる約束をするんだよね? じゃあ、僕と同じだ!


「僕とパパも結婚なの?」


 ずっと一緒にいる約束だもん。にこにこしながら尋ねると、顔を真っ赤にしたアモンが「違うと思う」と呟いた。アガレスも少し耳が赤いよ。


 マルバスはお茶を飲みながら、簡単に説明し始めた。


「陛下とカリス様は親子です。父親と息子、あの二人とは違いますよ」


 うーんと考える。パパと子ども、アモン達はどっちが子どもなんだろう。


「そこからか」


 改めてパパが話してくれる。その話でなんとなく分かった。僕とベロは結婚してない、でもママと子ども。パパと僕の関係と似てるんだって。


 でもアガレスとアモンは違う。アガレスが旦那さんで、アモンは奥さんになるから……横並び。僕とパパ、僕とベロは縦並び。そう覚えた。絵みたいに考えると分かる気がした。


「結婚するとどうなるの?」


「一緒に暮らすんだ。ここは親子と同じだな」


 やっぱり僕とパパも結婚じゃないのかな。あちこち同じみたい。大人になれば理解できると聞いた。僕はまだ子どもだから仕方ないね。


「アガレスも、アモンも、結婚するのは幸せに繋がる。だからお祝いをしよう。二人ともおめでとう」


「おめでとうございます」


 パパとマルバスが口にしたお祝いに、僕も「おめでとう」と続けた。幸せになるために結婚するんだ。覚えておこう。いつか僕もパパやベロと結婚するんだ!


「……あと数年したら、もう一度この話をしようか」


 未来の約束?


「うん!」


 頷いた僕はよく分かってないんだって。


「まだ4歳だから仕方ない。ゆっくり覚えていけばいい」


 焦らなくていいの。僕はパパの言葉通り、ゆっくり大人になるよ。


「カリス様みたいな子どもが欲しいわ」


「「そこは同意する」」


 アガレスとマルバスが一緒に頷いた。仲いいから、この二人も結婚して幸せになればいいのに。言葉にしたら、パパも含めた全員が青ざめた。


 くーんと鼻を鳴らすベロにお菓子を分けてあげて、僕は自分の前にあるお茶を飲む。もうぬるくなってて、飲みやすかった。

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