84.僕もパパみたいな悪魔になりたい
パパが痛くて泣いたことは内緒だよ。アガレスにこそこそ話したら、あれは感動して泣いたのですよ、と返された。僕が塗ったことや、傷を覚えていたのも嬉しかったんだって。
僕はパパを大好きだけど、パパも僕を好きだよね。喜んでくれて良かった。寝る前と朝もまた塗ろうと思う。早く治るといいな。一緒にご飯を食べて、並んでお風呂に入った。パパの傷に薬を塗って、抱っこでベッドに横になる。
「今日は楽しかったか?」
「うん! 僕ね、お薬を作る手伝いをしたの。初めてだけど、楽しかった! ぐるぐると鍋の中の薬草を煮たの」
両手を動かして説明する。大きく頷いたパパが優しい目をした。僕の話を真剣に聞いて、時々質問をする。だから僕も一生懸命に話した。
「僕が作った薬が完成したら、届けてもらうんだ」
「それは良く効くだろうな。楽しみだ」
「パパがケガしてもすぐ治るよ」
「頼もしい息子だ。明日は何をする予定だったかな?」
さっきプルソンに聞いたよ。ちゃんと覚えてる。
「明日は文字を書く練習。まだ書けないから。書けるようになると、本が読めるようになるんだって」
「カリスが読めるようになったら、絵本をたくさん贈ろう」
「今もいっぱい持ってるよ」
使ってなかったお部屋に、絵本をたくさん並べてもらった。まだ全部読んでもらってない。全部読んでからでいいよ。パパは残念そうな顔だけど、僕はお気に入りの本を何度も読んでもらうのも大好きなんだ。
「またこの絵本でいいのか?」
「読んで! パパ」
パパが神様と戦って、ゲーティアの王様になったお話が一番好き。何度聞いても飽きないし、優しいパパが人間を助けたところはカッコいい。捨てられた僕を助けて拾ったパパを思い出すの。
僕はパパに出会うために捨てられた。そう考えると、良かったと思う。パパが僕を強く抱き締めた。いつ見ても綺麗なパパは、サラサラとした黒髪で夜みたい。優しくて温かくて、悪い人から僕を隠してくれる。
「自分で読めるようになったら、カリスがパパに本を読んでくれるか?」
「いいの? 僕、すごく下手だと思う」
「カリスの声で聞きたいんだ。そうしたらしっかり内容を覚えられるだろう?」
そうなの? でも嬉しい。頑張って早く読めるようになろう。にこにこする僕の頭を撫でたパパは、僕を毛布で包む。その上から大切に抱き締めた。
「さあ、もう眠ろう。明日起きられないと、アガレスが怖い顔で飛び込んでくるぞ!」
ぐぁああ! 声を上げて脅すパパに、僕は笑った。抱っこされて、暖かいお布団で眠る。ちゃんと次の日もパパがいて、起きた僕に「おはよう」って挨拶をする。当たり前になったけど、とても幸せだよ。ずっとこの当たり前が続きますように。
「おやすみ、パパ」
「ああ、ゆっくりお休み。可愛いカリス」
ちゅっと頬や額にキスをしたパパの顔を見ながら、僕はゆっくり目を閉じた。さっきの絵本の夢を見たいな。僕もパパと一緒に人間を助けるんだ。パパやアガレスみたいに、僕も優しい悪魔になりたい。
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