34.透明の丸い高級品のお守り

 もっと僕が大きくなったら、魔力について教えてくれるみたい。小さな体で魔力を使うと、命が危ないと言われた。暖かくて気持ちいいのに、ダメなんだね。僕が使わなければ、アガレスが僕に使うのは平気だった。パパも僕に暖かいのを掛ける。ふわっとする。ぼんやりと色がついていた。


 パパは綺麗な青、アガレスは赤い。それも内緒なんだって。パパに秘密を守る約束をした。


「一緒に下へ行こう。民が待っておるぞ」


「うん!」


 さっき手を振り返した人がいっぱい。パパは背中にある翼を使わないで、階段を降りた。僕が重いから落ちちゃうのかも。くすくす笑うパパに抱っこされて、僕はアガレスが開いた扉の先に目を見開いた。


 たくさん、たくさんいる! こんなにいっぱいの人がいたんだね。上から見たより人が多いよ。集まってきた人はツノが生えてたり、立派な牙がある。爪も大きくて鋭い人もいた。でも僕を傷つけないように触って、優しく挨拶する。


「軽く体に触れるのは敬愛の印だ。カリスが愛されている証拠だぞ」


 ちょっとだけ肌を触れると笑って頭を下げるのは、そうなの? 僕、この人達に嫌われてなくて、愛されてる! すごい。パパと一緒だと世界は優しいんだね。僕を傷つけたりしない。


 たくさんの人は、悪魔という種族だった。人間は僕がいたところの人達で、うんと上に住んでる。僕は人間だったけど、パパの子だから悪魔になった。アガレスが教えた話に頷く。


「僕はパパの子がいい」


 悪魔は人と契約する。僕もパパと契約という約束をした。ずっと一緒にいる約束を、パパは守ってる。僕も守らないといけないの。首に下げてもらったまん丸い透明な石は、僕の居場所をパパに知らせる役目があるんだって。


「迷子にならないように、お守りだ」


 パパに頼まれたマルバスが用意した石を見て、アモンが「あらやだ、すごい高級品」と呟いた。高級品はお金がいっぱいかかる。奥様の話で覚えた。手で掴んで持ち上げた透明は綺麗だから、高いのかな。僕が持ってて落としたら困る。外そうとしたら、パパがまた戻した。


「これは絶対に外すな。カリスが外そうとしなければ、落ちたりしない」


 首を傾げたら、言い直された。


「このままにしていたら、無くならない」


 僕がずっと首にかけて、その僕をパパが抱っこしてたら無くならないね。安心して笑うと、パパも笑ってくれた。周囲の人が花や緑の葉を渡す。受け取っていくうちに、いっぱいになっちゃった。両手で抱っこした花はいい匂いがして、僕がお礼を言ったら喜んでくれるのも嬉しい。


「お披露目も終わった。これでカリスは正式に俺の息子だ」


「「おめでとうございます」」


 アガレス達も喜んで、僕は笑顔ばっかり。ほっぺが痛くなるくらい笑ってた。


 奥様はお外の世界は怖い、お前なんかすぐに殺されると言ったけど……僕はお外の世界が楽しい。パパもアガレスも、マルバスやアモン、皆も。お外に出なかったら知らなかったから。


「あーんだ」


 言われて素直に口を開ける。昔は餌に硬いガラスが入ってて怖かったけど、パパ達はうまい物ばかりくれる。痛くないし、甘くてうまかった。飴を転がしながら、部屋に戻って欠伸をひとつ。すごく眠くて我慢できず、僕は眠っちゃった。


「たくさん眠れ、その度にカリスは俺に近づく」


 今の、パパの言葉?













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