第18話 シュエリーのご褒美拷問。視点、シュン

「さぁ、今から何が始まると思う? 盗賊さんたち」


 俺の目の前でシュエリーさんは、手足を拘束した盗賊たちに問いかけていた。


「兄貴、俺たちどうなっちゃうんすかこれから」


 馬車の中から降りてきた彼女はムチを携え、「パチンッ」と音を鳴らせながらこちらへ向かってくる。

どうやらこれから拷問をするみたいだ。

盗賊たちにとっては震える状況だが、シュエリーさんはとても嬉しそうだ。

光悦とした表情に小さな吐息が漏れると、彼女はムチを振り下ろした。


「さぁ、アジトの場所を聞かせてもらおうじゃないからしら?」


 振り下ろしたムチは地面に当たり跳ね返ると、盗賊たちは「ひぃ」と怯えの声を口々に漏らした。

だがその中で1人、怯えずシュエリーさんを睨む男がいた。


「お嬢ちゃん、俺らを羊の群れと勘違いしてないかい? 俺ら鷹の爪盗賊団は固い絆で結ばれている。この命奪われようと仲間を裏切ることは決してないぜ」


 彼女は睨んできた男に近づいていった。


「流石です兄貴! 一生ついていきやぁす」


 隣にいたねずみ顔の男が兄貴と呼ばれる男にそう誓うと、シュエリーさんは見ろしながら鼻で笑った。

そしてムチを振り回しながら男に話かける。


「なかなか肝が据わった男もいるじゃない。いいわ、その威勢がどこまで続くか見させてもらいましょうか」


 あれ、俺たち悪人捕まえに来たんだよな?

なんか今のこの状況だけ傍から見たら、こっちがすげえ悪いことしているような気がするんだが。

アジトを探し出す方法で手っ取り早いのはわかるけど、シュエリーさんが鼻息荒く興奮してムチを振り下ろすのは仕事というより性癖を満たしているように見えるような。

まぁ、口にしたら飛び火しそうだから傍観しよう。

許せ盗賊たち、俺は味方になれない。

彼女の第一投目のムチは、よくしなりながら兄貴と呼ばれる男の顔面に綺麗に当たった。

兄貴と呼ばれる男が顔をゆがめると、隣にいたねずみ顔の男が手足を拘束されていながらも近寄り、様子を心配した。


「大丈夫だ、心配するな。この程度の痛み、まるで蚊に刺されるようなものだ」


 苦悶の表情をする兄貴と呼ばれる男と反対に、シュエリーさんは身体をゾクゾク震わせ鼻息を更に荒くした。


「くそぉ、おい女! 兄貴の代わりに俺がやる! かかってこい!」


「お前、いいんだ。俺はお前らの兄貴分だからな」


「あ、兄貴! かっけぇっすぅ! ならせめて、俺もお供させてください。 やい小娘! 同時にこい!」


「いや待て、お前はいい。俺が叩かれる」


 捕まえた側でありながら、盗賊たちの絆に感動してしまった。

俺が涙をこらえていると、彼女は再びムチをしならせる。


「さぁ、人情劇は終わりよ! えぇい!」


「あひっ! うひっ! あはっ!」


__それから一時間後__


 叩くたび喜ぶシュエリーさんと、叩かれるたび変な声を上げる男の戦いは長期戦にもつれこんだ。


「はぁ、はぁ…なんなのよこいつ。全然口割らないじゃない」


 流石に疲れたのか、彼女は弱音を吐いて手を止めた。


「どうした女! もっとだ! もっとやってみろ!」


 男は身体に擦り傷が出来ているというのに依然として平気そうだ。

平気というか、こいつもなんか興奮してね?


「兄貴! もう俺が受けますよ、流石に見てられないっすよ」


「ダメだぁ! 俺が受けるぅ!」


 鼻血を出しながら男はそう声を荒げる。

あぁ、俺はなんでこいつらにさっき涙漏らしかけたんだろうなぁ。

呆れながら俺は疲れているシュエリーさんに耳打ちした。


「あのさ、たぶんこいつシュエリーさんにムチ打たれて喜んでるよ。だからあえて...」


「なるほどねぇ、アメとムチってことね。あなた結構腹黒いわね」


 どの口が言ってるんだこの人は一体...。

俺はそう言いかけたが口をつぐんだ。


「やいあなた、本当はムチで叩かれるのが好きなんですってね?」


 シュエリーさんは、息を吹き返したように見下ろしながら男に話しかけた。

男は「ハッ!」と気づかれたといわんばかりの顔を一瞬見せるが、すぐに普通の面構えに戻した。


「女! 兄貴がそんなSMプレイ大好き人間な訳ないでしょうが! 拷問で口をわらないからって負け惜しみをいうなぁ!」


「ふふ、本当にそうかしらぁ? あなた(兄貴と呼ばれる男)、アジトの場所を答えたらムチじゃなくビンタしてあげますがどう?」


 彼女が男を見下ろしながら艶っぽい声でそういうと、すぐに背を丸めた。


「あ、兄貴! いきなり背を丸めてどうしたんですか!」


「う、うるさい。こっちを見るな。俺は、ビ...ビンタなど欲しい訳ないだろうが!」


「ねずみ顔のあなた、鈍いんですねぇ男なのに。私はわかりますよ、彼は今...勃〇していると! さぁ身体を広げなさい!」


 シュエリーさんは水の魔法で男の手を上げさせ、身体を広げさせた。

すると案の定、下半身にあれが布越しでもはっきりわかるほどあれしていた。


「あ、兄貴がそんな人だったなんて。嘘だろ」


「黙れ! どうせ檻にぶちこまれんだからせめて、最後にこの光景目に焼き付けたかったんだよ!」


「うぅ、兄貴その鼻血に泣いた俺が馬鹿じゃないっすか」


「さぁアジトの場所を答えなさい。

答えないならあなたじゃなく、他の方に当たりますよ? いいのかしら? これ、欲しいのでしょう」


 彼女は笑いながら手の平を男の前でちらつかせた。


「うぅ、仕方ねえ。アジトの場所は...」


__それから数分後__


 彼女は情報を聞き出すと、すぐに俺にMPの過剰供給で気絶させるよう指示してきた。

ビンタを結局してもらえなかった男は、悔し涙を浮かべていた。

俺はというと、そんな性癖を満たしあう光景にただ呆気にとられ流れるように彼らを気絶させていた。

なんかほんと、頭痛くなってきた。

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