パーティー結成まで

第2話 中級魔法使いシュエリーと出会う。視点、シュン

  俺はギルドで迷子スライムの捜索依頼を引き受けて、町を散策していた。

今までの俺は、Fランクではあったが同行するメンバーのランクのクエストに参加できた。

しかし、現在はFランクの報酬とも言えないお小遣い程度の依頼しか引き受けることはできない。

1日10件こなして何とか食い凌げる状態だ。

俺は手当たり次第に路地裏でスライムを模した人形を、棒の先につけ歩いてみたが、野良スライムしか今の所現れない。


「ママー、うんち持ってるよあの人」


 俺に5歳児ほどの子どもが指を指す。

無理もない。

何度か路地裏の汚い泥を浴びて、青いスライム人形が茶色く変色してしまったのだから。

これではもうスライムも仲間だと認識しないだろうな、引き上げるか?

いや、引き上げたら晩飯のグレードが下がってしまう。

明日も頑張るためには、今日の自分へご褒美を与えねばならないのだ。


「ぽよん」


 突然、路地裏から見覚えのある赤いリボンを頭につけたスライムが現れた。

依頼書の特徴と完全に一致していることを確認し、慎重にスライムに忍び寄る。

あと一歩というその瞬間、路地裏の奥から突風が通りすぎた。

スライムは突風に過敏に反応して一目散にその場から逃げる。

俺は追いかけようと足を強く踏み込むが、町中を歩き続けた疲労と空腹で気力がなく、思うように動けずにいた。

大きくため息を吐きながら、依頼の邪魔をした突風の吹き出した方へ顔を向ける。

すると、小柄な赤いローブを羽織った女の子が2人の男に囲まれていた。


「触らないで! これはお母さんが私のために作ってくれたローブなんだから」


 女の子は両手で杖を握りしめ、大柄な男たちを睨みつける。


「てめぇ、よくもクエスト横取りしやがったなぁ村人出身の分際で!」


 どうやら冒険者同士のもめ事のようだ。

女の子は鮮やかな金髪を後ろで束ね、左右に揺らしながら笑い始めた。


「ふんっ! 貴族階級で私より上級のクエストが受けられるはずのあなたたちが、私のような中級魔法使いでも受けられるクエストをご所望なんですねぇ? もしかしてぇ、こんな華奢なかわいい私より弱かったりして」


 うわーあの子、めちゃくちゃ挑発するなぁ。

大柄な男たちは、湯でダコのように顔を赤くして女の子に襲い掛かる。

女の子は魔法陣を展開して、2人に対処しようと試みた。


「水のマナよ集まれ! ウォーターウォール!」


 1人の男が、水の壁にぶつかる。

一瞬動揺したが、男はすぐに気を取り戻して壁を突破しようと剣を振り上げた。


「風のマナよ地より吹き上げろ! ブラスト!」


 男は垂直に高く伸びた水の壁に完全に拘束された。

女の子は水の壁に閉じ込められた男を見て一笑し、もう一人の男を探した。

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