2章 遠征訓練

第23話

 エマやクリスとチームを組んでから、1ヶ月ほど過ぎた。俺とクリスは2週間模擬戦が出来なかったから、ひたすら基礎体力を中心にトレーニングのみだった。

 その間に、エマとユーリは、一緒に模擬戦したりと、着実に調律師として、力をつけていってた。


 エマは魔法も使えるらしい。と言ってもサポート系が主らしいがそれだけでも、魔法がほとんど使えない俺からしたらすごいと思ってしまう。つまりエマは後衛向きで、もちろん武器もそれにあったもので、ライフルだった。能力については、教えて貰えなかった。まぁ、正式なチーム決めは、まだ言われてないし無理に聞く事はしなかった。


 ユーリの能力は、多分スピード系なんだろうなって見て思ったから特に聞かなかった。ただ彼女の戦い方は、近距離から遠距離と幅広いし、何より驚いたのは、居合と言うカウンターだ。相手の隙を突く一撃はとても早く他の生徒は対応する暇もなく降参してた。


 クリスとは、能力を教えあった。どうやらクリスは筋力系のスキルらしく、そのお陰であの武器を片手で振り回せる様になり、不規則な動きが可能らしい。そして、俺はクリスがもっとも、気になってた、モードレイの時の能力を教えてた。


「はぁ!? 少し先の相手の動きが予測できるだぁ!?」


「おい! 声がデカいだろ? 周りにバレたらどうするんだ?」


「だってレイジそれ強すぎだろ? 相手の動きがわかってるなら、対応もラクだし、それにあのスピードだろ?」


「まぁ、確かにそれだけ聞いたら強いが、見えてても体が対応できないと、逆に地獄だぞ?それにスピードが上がっても基礎体力が低いから、上げる度に長時間戦えなくなる」


 俺がデメリットも言うと、クリスは納得してた。


「確かに、見えても体が動けないと意味ないしな……とは言っても短期決戦ならまず負けなさそうだな」


「さぁ……凄く強いファントムもいるからな……」


 そう言って俺はステラ姉さんの方を見た。クリスはその視線を追って、首を傾げた。


「なぁ、前から気になってたんだが、なんでレイジはお姉さんの話になると他を見てるんだ? 多分ビジョンを見てるんだろうけどさ?」


「ん? まぁ、色々あってな」


(2人にも話しとけば?)


(え? それは、また今度でも……)


(良いじゃん♪ だってこれから一緒に戦うチームなんだし♪)


 俺が悩んでため息をつくた。


「なにかビジョンと関係があるのか?」


 俺は流石にこれ以上は、隠せないと思って、ステラ姉さんの言う通り、教えることにした。


「まぁな、その話はエマにも話さないといけないから、その時教えるよ」


「わかった。ならそれまでは、俺もこれ以上は聞かないことにしとく」


「そうしてくれると助かる」


 丁度そこに、ユーリとエマが来たので、俺達は[方舟の休息]でお茶をすることにした。エマも、あの日からすっかりファンになって、暇があるとよく通ってるみたいだ。

 俺達の注文が、届いたのを確認したあと、姉さんについて、説明した。もちろん他言無用という前提で。エマもクリスも俺の話を聞いてかなり驚いてた。


魂写しソウルコピーなんて聞いたことないぞ?」


「確かに、王家でもそんな禁術知りませんよ?」


「姉さんは一体何処でそれを会得したんだ?」


「それは……」


 そう言ってチラッと姉さんの方を見たがそっぽ向かれた。


(それは、教えられないわね。もし教えないといけない状況になれば、その時教えるから)


(わかった)


「どうやら教えてくれないみたいだ。時期が来たらちゃんと教えるってさ」


「時期か……なんかあまり触れない方が良さそうな感じだな」


「そうですわね。それに、もし他の人が知ったら、レイジさんが実験とかで拘束されるかもしれませんし……」


「なんやで!? レイジ絶対誰にも言ったらあかんで? もちろんウチらも言わんからな」


 拘束!? そんな事になったらもう村に帰るとかの話じゃなくなるんじゃ……


「みんな他言無用でよろしく頼む」


 俺は、頭を下げてお願いした。3人はキョトンとしてから、笑いだした。


「さっきウチら、誰にも言わん言うたやんか♪ 心配しすぎやで?」


「全く、レイジはもう少し、俺達を信用してくれてもいいんじゃないか?」


「そうですね。それに、レイジさんが抜けると困るのは私たちなんですから、その辺ご理解して頂きたいですね」


「すまん。助かるよみんな」

(ふふっ♪ いい仲間に出会えてよかったわねレイ)


(そうだね姉さん……って、姉さんが原因だよね?)


(あら? 私に会えてあんなに泣いてたのに、そんな事言うのね。お姉ちゃん悲しくて泣きたくなるよ……くすん)


(そんなこと言ってないだろ? 姉さんと一緒にまた居られるのが、1番嬉しいんだから)


 俺と姉さんが念話で話してたら、エマが思い出したかのように両手でパンと叩いた。


「そう言えば、来週から校外学習で、遠征があるわね。きっとその時に正式なチーム決めをするばずよ♪」


 そう言えば来週から、1週間位現場の人達と、訓練や実際の戦闘などが行われる。

 つまり、いよいよ本格的な訓練が始まるってことで、俺も内心は、今からすごく楽しみだった。

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