第21話

 考え込んでるクリスに、それを見て頭を悩ませてるエマ。一体クリスがどうかしたのか?


「なぁエマ、クリスがどうかしたのか? なんだかんだ、一学生のやり取りだろ?」


「クリスはそれじゃ済まないのよ……もしバレたら……大変な事になる……」


「大変なこと?」


 俺がエマに聞くと、エマは少し考え何か悩んでるようだった。

 暫くして、ため息を吐いたエマは口を開いた。


「少し……人気のない所に移動しましょ」


 そう言ってエマは、まだブツブツと考えているクリスの方へ向かった。


「クリス」


「もしかして...予測系か...いやそれならもっと...!? イテッ! 痛いって! 何すんだエマ!」


 エマは声をかけても返事の無いクリスに対し、耳を思いっきり引っ張ってた。


「何すんだじゃないわよ! だいたいクリスのせいで大変なことになってるって理解してるの!?」


「俺が何したった言うんだ!?」


「それを今から、レイジ達にも説明しないといけないの! だから今から人のいない所行くわよ!」


「わかったから! イテッ! いい加減耳を話せ! 痛いだろ!! 着いてくから、ちゃんと着いてくからエマ話してくれ! 耳がちぎれるだろ!」


 クリスがどんなに叫んでも、エマは耳を離すことなく、歩き出した。俺とユーリも、慌ててエマについて行った。


 しばらく着いて行ったら、誰も居ない教室にたどり着いた。そこでようやく、エマはクリスの耳を離した。ようやく離されたクリスは、少し涙目で、引っ張られた耳が取れてないか確認するかのように両手で触ってた。

 俺達が教室に入ったのを確認してエマは、静かに話し始めた。


「レイジ様とユーリ様、今からお話する事は、他言無用でお願いします」


「レイジ様!?」 「ユーリ様!?」


 俺とユーリはいきなり様付けで呼ばれたことにおどろいた。


「な……なあエマ? なんでいきなり様付けするんだ?」


「せ……せやで。今まででさん付けやったやんか?」


「ふふっ♪ そう言えばそうでしたね♪ つい癖で様と呼んでしまいましたわ♪」


 エマは片手で口元を抑えクスッと笑いながら言ってきた。元々礼儀もよく、話し方もお淑やかな感じだったけど、今のエマは更に磨きがかかってるように見えた。


「それで、レイジさんも、ユーリさんも、他言無用で宜しいでしょうか?」


「わかった約束する」


「ええで! うち口硬い方やから信じてや♪」


「それでは、お2人を信じてお話させていただきますね。 っと……その前に……クリス何時までそこで耳を触ってるの? 早くこちらへいらっしゃい」


 エマがそう言うと、さっきまで耳を押さえてたクリスは、一瞬ビクッと震え、急いでエマの元へ駆け寄ってきた。さっきまで俺と、思いっきり戦ってた姿はまるで無い。それどころか俺が見てきたクリスとまるで別人のようだった。


「エ……エマどうしたんだ?」


「エマ? クリス貴方私達の話聞いてなかったの?」


「す……すみません! エマ様!!」


 クリスは、慌てて謝り頭を下げてた。それにしても……エマ様?


「まぁ、いいですわ。いずれ、様付けも無くなるんですしね。と言っても、何処かの誰かさんのせいで、それがなくなるかもしれない状況ですけどね」


「え? 俺の……いや僕のせいで?」


「ええ、そうですよ? 私と婚約してるのに、決闘なんてして、あろう事か敗北したなんて、お父様達にバレたらどうなると思ってるんですか? しかも他国の人間にです。」


 エマがクリスに諭すように説明し始めると、クリスの顔はサーッと血の気が引いていき、説明し終わる頃には顔面蒼白に、なってた。


「で…ですが! 知られなければ問題ないのでは!?」


「はぁ…クリス。貴方レイジに、何を叩きつけたの?」


「それは……」


「いくら頭に血が上ってたからって、手袋を叩きつけたのは問題ですよ? わかってますか?」


「はい……浅はかな行動をしてしまい申し訳ありません」


「それに貴方は、レイジさんの好意で返して貰えたのに、考え事を優先させて断るなんて、まさか私との婚約を破棄したいから、わざと断ったのかしら?」


 エマは、そう言って微笑み、クリスを見つめた。クリスは、声も出ず口をパクパクさせてた。


「そ……そんな事は……僕は、エマ様と婚約できて光栄に思ってます!!」


「でわなんでいつもいつも、貴方は私の頭を悩ませることばかりするのかしら?」


「な…なぁ、2人共そろそろいいか?」


 俺はこのままだと、いつまで経っても説明されないと思い、口を挟んだ。


「あら、ごめんなさい。あまりにもイライラしちゃって、すっかり話から脱線しちゃいましたわね」


「いや……それに決闘に関しては、俺も受けたからクリスだけの責任じゃないしな」


「そう言って頂けるとたすこりますわ。それでは説明させてもらいますね」


 そう言って軽く身なりを整えたエマは俺とユーリの方を向いてゆっくり口を開いた。


「改めて自己紹介をさせていただきます。 私の本当の名前は、エマ・オライオン・フェニック フェニックス帝国第3王女です。まぁ、王女と言っても継承権なんて無いに等しいんですけどね♪」


 そう言ってエマは俺達に微笑んだ。

 ……は?

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