第11話

(あの時本当は…あのまま死んでもいいと思ってた…でもね…)


 そう言って言葉を詰まらせてるステラ姉さん…やっぱ何か引っかかる事があって死にきれなくて ある意味化けてでてきた?


(姉さんは、何か気づいたんだね)


(えぇ…私も初めてだったから困惑したけど、あの時私は気がついたんだけど、それを伝えるかどうか悩んだわ……だって…)


 一瞬ステラ姉さんから辛そうに奥歯を噛み締めてるように見えたが、いきなりニコッと笑って俺を見つめ


(レイが私を抱きながら1人にしないで、って泣いて言ってきてくれたんだから、何がなんでも傍にいてあげたいって思っちゃって、ついつい禁術の魂写しソウルコピーをレイに、使っちゃった♪ てへ♪)


(ちょっと待ってくれ!? 一旦整理していいか?)


 ステラ姉さんは嬉しそうにクネクネしながら、あっさり禁術とか言っちゃってた。ただ…それが建て前なのはわかってる…きっと他にも理由があるのだろうけど、ステラ姉さんから言わない以上、俺からは聞かないことにした。


(とりあえず姉さん、禁術ってなに? どこで覚えたんだよそんなもん?)


(まったくレイったら、そこはまず、俺のためにありがとうって、感動の再会的なのになるんじゃないのかな? いきなり本題に行くなんてせっかちねぇ)


(悪いけど姉さん、感動の再会的なのの後に、物凄い爆弾発言しといて、それは無理な話だよ)


(まぁそうだよね♪ なんでそんな禁術を私が知ってるのかが気になったのね?)


(それもあるけど、なんでこんなタイミングよく姉さんが出てきたのか気になるんだけど?)


(順番に説明するね。まずは何故禁術を知ってるのかだけど、それは私が学校にいた時、覚える機会があったとだけ言っとくわ。 それとタイミングに関してだけどそれは……わからないわごめんねレイ)


 なんだかんだ、はぐらかされた気がするが、無理に聞き出すつもりは無いからいいか。それに…


(まぁ、数年前まで通ってた姉さんがいるならここでの生活もすぐ馴染めると思うし、まぁいいか)


(そうそう♪ 今はとりあえず再会できた喜びを分かち合おうよ♪)


(姉さんそればっかだな。そうだ、そういえば明日武器や能力って言ってたけど姉さんわかる?)


(んー? 分かるけど今聞いちゃうの?)


(え? ダメなの?)


(明日教わるんだしみんなと楽しみを分かち合うのもいいと思うよ? レイは今まである意味ずっと個人的な修行とかばかりで、同級生とか居なかったでしょ? せっかく学校来たんだし、みんなと一緒に学ぶ喜びを知って欲しいなって、私は思ってるの♪)


(確かにそれはそうだね。せっかく学校来たんだし皆と学んでいくよ)


(そうそう♪ レイには色んな人と出会って、色々学んだり、沢山遊んだり、そうして、今しか出来ない事を沢山やって楽しんで欲しいな♪ 本当は村を出る時に言いたかったけど…遅くなってごめんね)


 ステラ姉さんはそう言って俺の頭を撫でようとするが幻想ビジョンである姉さんが俺に触れる訳もなくすり抜けてしまった。


(あっ…そっか…話したりはできても…もうレイに触れることができないんだね……頭撫でてあげる事も…辛い時に抱きしめてあげる事も、もう……ひっく…くずっ…)


 ステラ姉さんはもう俺に触ることが出来ない現実を知り泣き出した。俺はそんなステラ姉さんの傍にいてあげれるけど、背中をさすったり、涙を拭いてあげることすらできない現実に俺も涙した


 暫く2人で泣き続け、ステラ姉さんが少し落ち着きを取り戻した。


(レイ…ごめんね…せっかくの入学初日なのに私のせいで…湿っぽくなっちゃったね…あははっ…)


 ステラ姉さんは苦笑しながら俺にそんなことを言ってきた。だだ俺から見たらステラ姉さんがあまりにも弱々しく見え、俺の知ってるステラ姉さんは、そこにはいなかった…俺はどう答えるのが良いのか考えたが…何も言葉が出てこなかった…だから思った事をそのまま言葉にすることにした。


(姉さん、俺さこの半年頑張ったんだ)


(…うん)


(最初は俺のせいで姉さんがって後悔して家に籠っててさ)


(あれはレイのせいじゃ…)


 ステラ姉さんが否定しようとしてたが俺は話し続けた。


(でもさそんな俺を立ち直らせてくれたのは、マルコとフィルだったんだ。だから姉さんが亡くなってからの半年はあの二人が俺の家族みたいな感じで過ごしたんだよ)


(1人じゃなかったのね…良かった…)


(ただそれでも、あの日の事を夢でよく見てたんだ…起きた時いつも俺の腕には、姉さんの…ステラ姉さんの重みと血がまとわりついた感覚、そして…最後に見たステラ姉さんの顔を…実は今日の朝もその夢で起きたんだ。)


(ごめんね…ずっと苦しめて、辛かったよね…くずっ)


(でもさ、まぁ色々あり過ぎたけど、こうしてまたステラ姉さんに会えた事が、凄く嬉しいんだ。最初は記憶や深層心理で作られた偽物って思ってたけど、こうやって教えてくれて、本物のステラ姉さんなんだって…そう…思えたら…凄く嬉しくて……)


 まだ伝えきれてないのに俺は涙で言葉が詰まってしまった。


(レイ…私もまたレイに会えてとても嬉しいの。それもこうやって倫理的歯車エシックスギアで繋がってるからずっと傍にいられる…でもね、これだけは覚えといて。 私はもう死んでるのだから…レイはもう苦しまなくていいんだからね?)


(わかった…ありがとうステラ姉さん…コレからも…いや、これからよろしく)


(うん。 私もレイの手助けできるように頑張るから♪)


 俺達はもう触れられないけど、それでもこうやって言葉を交わして、言葉で触れ合っていけばいいだけなんだ。俺は心の中でそう呟いた。


 そして、その日の晩はあの日の悪夢を見ること無く、昔ステラ姉さんと一緒に遊んだりしてた頃の、楽しくて懐かしい夢を見た。

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