15
ジラは地図を見ながら冷たく強い風の吹く塔のてっぺんから幽霊の街の風景を、もう一度確認をした。
幽霊の街は円形の形をしていた。
その周囲の空間にはドーナッツ型の穴が空いていて、一本の大きな石の橋によって、幽霊の街とその周囲に広がる地下世界は繋がっている。
そこ以外に幽霊の街に入るための道はないように思える。
幽霊の街の中心には広場があり、そこには噴水のようなものがあった。その少し後ろには巨大な中世のお城のような高い建物があり、そこがおそらく浮雲ひまわり博士の研究所になっている建物なのだろうとジラは推測した。(ひまわり博士の趣味そのものだったからだ)
その噴水のある広場から円形の外壁まで道がいくつか、まるでケーキを切るときの六人分の切り分け方のような方向に、まっすぐ伸びている。
幽霊の街にはたくさんの石造りの家々がある。
その中で目立った建物は、時計塔。駅。外壁。赤く燃えている場所。ごみ捨て場のような場所。そして、古い大きなはね橋。……と、いったところだろうか。
幽霊の街の周辺はかなり高い石造りの壁によって、(周囲の底の見えないドーナツ型の穴と合わせて二重に)封鎖されている。
赤く燃えているような場所は、……マグマだろうか? その近くにゴミが山積みになっている、(まるで砂場のような場所だった)ごみ捨て場のような場所があることを考えると、あそこはゴミ処理場なのかもしれない。
お城の近くにある時計塔の時計はさっきからずっと、時計の針は両方とも十二の数字を指したまま、止まったままになっている。もしかしたら、『この街は永遠の真夜中の時間の中に囚われている』のかもしれない。
そして、ジラの興味をもっとも引いたのが駅だった。
噴水のある広場の近くにある駅。(あるいは駅のような建物。線路もあることを考えると、まあ、間違いなく駅だろう)
その駅には電車は止まっていないようだけど、もし実際に電車が走っているのなら、あのはね橋以外の場所から幽霊の街を出ることができる通路があるのかもしれない。(あるいは、この地下世界から外にでる通路が、その電車なのかも知れない)
もしそんな道があるのなら、今から確かめておかないといけない。(もし、予想通りなら、爆破するなり、電源を落とすなりして、使えないようにしておく必要があった)
ジラはまず、駅にいってみることにした。
「みちびき。今から、幽霊の街の中に侵入する。準備はいい?」
『いつでもどうぞ』
にっこりと笑ったような声でみちびきが言う。
「OK。では作戦開始」
そう言ったあとで、ジラは高い塔から、まよくこともなく、そのままなにもない空中にジャンプをして飛び出して、そのまま幽霊の街の中へと、重力に引かれて、自然に落下していった。
その落下の途中で、マゼンダ・ジラの頭の上にぴょこんと二つの新しいマゼンタ色の三角形の耳が生えて、そして、そのお尻の上の部分からはぴょんとマゼンタ色の長い尻尾が生えてきた。
ジラの顔は笑顔。
にっこりと笑った口からは、牙のような八重歯が見える。
そんな不思議な姿になった(まるで大きな猫のような、しっぽの生えているしっぽ人間のような)ジラはくるくると空中を回転して塔を蹴り、衝撃を空の中で分散しながら、幽霊の街の家の屋根の上に、そのまま無事に着地した。
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