そのパイロットの名前をマゼンタ・Q・ジラと言った。

「……いったー」

 ジラは自分の頭を手で押さえながらそう言った。

「ちょっと! これ、いったいどうなってるのよ!」ジラが叫ぶ。

『仕方ありません。衝突の瞬間に、『砂漠の落雷』の直撃を受ければこうなってしまいます』操縦席の正面にある小さな四角いパネルのようなものがジラの質問に答える。

 パネルには光の波長のようなものが映し出されている。

 それがこの円盤型の宇宙船。

 いわゆるUFOに搭載された、UFOと同じ名前をした、みちびきと言う名前の人工知能そのものだった。

 ジラの計算では、UFOはもっと地下の空間の中にゆっくりと(もちろんすごく快適にとはいかないけど)、軟着陸できるはずだった。

 しかし、砂漠の地面に向かって突入する瞬間に、運悪くジラの乗るUFOは落雷の直撃を受けて、そのコントロールの一切が効かなくなってしまった。

 そのため、防御装置もうまく働かず、おまけに着陸時の逆噴射もできずに、UFOはそのまま、地下に広がる空間の中の地面の上を削り取るようにして、かなり長い距離を滑り続けるようにして、ようやく岩かなにかにぶつかって、その勢いを失ったようだった。

 ただそれでも、最新型のUFOであるみちびきの本体はどこも砕けたり、あるいは部品がばらばらに弾け飛んだりはしてはいなかった。

 それは最初から、そうなるだろうとジラとみちびきが予想していた通りの現象だった。しかし、一つだけ予想外の故障が起きていた。

 それはあまりにも無理な落下をしてしまったために(そしておそらくは、あの砂漠の雷のせいで)UFOの推進装置がうまく作動しなくなってしまったようなのだ。

「みちびき。とりあえず、どこか異常はない?」

 いてて、と言いながら、ベルトを外して、操縦席から立ち上がったジラの問いかけに対して、みちびきは正直に『推進装置がうまく作動しないようです』と答えた。

 そのみちびきの声を聞いて、ジラは少しだけ真剣な表情をしながらみちびきの写っているパネルを見つめて、それからじっと操縦室の天井を眺めた。

 それから、しばらくの間をおいて、「……そっか。わかった」と一言だけ、小さな声でジラは言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る