第33話 すばやさ
製鉄と植林場の育ちを待っている間。
俺とチビは地下採掘場の掘削を進めていた。
坑道も、最初は一直線に掘っていたものがだんだん縦横に広がっていき、やがて高低にも伸ばしていく。
するとこの辺りの地層ではZ軸300~320のところで希少な鉱石が多く埋まっていることがわかってきた。
坑道の
そんなある日。
俺は、Z軸303あたりでこんな鉱石を発見したのだった。
〇スターダスト・ストーン 13
「聞いたことないな。どんな鉱石なんだろう?」
こうしてよく知らない物質が出て来た時に便利なのが、工作BOXの『素材の解析』である。
俺は回収したその星型の石を解析にかけてみた。
≪スターダスト・ストーン: ドーピング系鉱石のひとつ。1つにつき素早さを10上昇させる≫
なるほど。
ようするにパワーストーンのスピード版ってことかな。
それがわかったので、俺はさっそくこのスターダスト・ストーン×13を使ってみる。
「これでいいのかな?」
俺は試しにその場で「シュッシュ!」とシャドー剣技をしてみた。
「うん、ちょっと動きが速くなったかも」
まあ、攻撃力や守備力に比べてインパクトは薄いけど、相手の攻撃を避けられる確率が上がるだろうし、悪いことはないよね。
……と、始めはそんなふうに考えていたのだが、この鉱石がむしろめちゃくちゃ重大なアイテムであることはすぐにわかった。
というのも、『素早さが上がる』というのは戦闘の時だけでなく、それ以外の場面……例えば作業スピードも上昇するということを意味するからだ。
ポコポコポコポコポコポコ……!!
そう。
気づくと、あきらかに掘削スピードが上昇しているのだ。
「これはヤベー鉱石なんじゃね?」
俺の作業スピードの上昇は、領地開発スピードに直結する。
そう思ってその後もスターダスト・ストーンを探し求めたが、この鉱石はパワーストーンに輪をかけて希少らしく、なかなか出現しない。
「今のところ27個か……」
ギャオオオン!
そんな時。
ふいにグリーンドラゴンの鳴き声が坑道に響き渡った。
「チッ、面倒くせーな」
俺はつぶやく。
この魔物を倒すのはワケないのだけれど、最近はレベル105からなかなか上がらなくなっている。
つまり今の俺ではグリーンドラゴンでも有効な経験値を得ることはできなくなっているのだ。
「待てよ」
そこで俺は考えた。
「チビ、お前戦ってみるか?」
「ゴ?」
隣で採掘をしている自作ゴーレムにそう尋ねる。
―――――――――――――――
チビ
年齢:0歳1カ月
レベル:1
HP:5
MP:0
攻撃力:7
守備力:11
EX:0
―――――――――――――――
うん。
こうして見ると、チビにもステータスがある。
「でも、これじゃあグリーンドラゴンは無理かな」
そこで俺は最近採れたパワーストーン41個をチビに使ってみることにした。
すると、チビの攻撃力は417にまで跳ね上がる。
「それからこれ、装備しときなよ」
「ゴ?」
「ふふッ、すごい剣だからさ」
そう言って俺はミスリルソードをチビに渡す。
そう。
あれからの採掘によって少量だが再びミスリルが見つかっており、ミスリルソードを作ることができていたのである。
「俺がグリーンドラゴンの注意を引き付けるから、お前は渾身の一撃をヤツに叩き込むんだ。いいな?」
「ゴ」
チビはシンプルな丸い目でコクリとうなづいた。
わかってんのかなぁと心配になったが、まあ、いざとなったらコイツは俺が守ってやろう。
ギャオオオオン!!!!
さて、坑道で
だが俺にとってもはやコイツは敵ではない。
「おら! こっちだ」
こんなふうにヒラリヒラリと挑発して、注意を引き付ける。
シュン! シュン……!
すると敵のしっぽが幾重にも飛んでくるが、俺はわざと2、3発これを喰らってみせさえする。
「うわー、痛ええ」
と叫んでみせているのも、もちろん演技だ。
HPも20くらいしか減っていないし。
ギャオオオオオオ!!!!!!!
ドラゴンはこれにまんまと騙され、俺にとどめをさすつもりで大振りに牙を
作戦通り。
と思ったが、しかし、騙されたのは敵だけではなかった。
「ゴ、ゴゴゴ(怒)」
俺がドラゴンにイジメられているかと思ってか、チビは丸い頭から蒸気を吹いているのである。
「ゴー! ゴゴー!!」
そして、ずんどうな体躯をどたどたと走らせ、思いっきりミスリルソードを振りかぶった。
ギャアアアぁぁぁ……
攻撃は見事命中。
グリーンドラゴンはのたうち、光の玉となって洞窟の奥へと消えていった。
「よくやったぞ! チビ」
そう言ってチビのステータスを見てみる。
すると……
―――――――――――――――
チビ
年齢:0歳1カ月
レベル:12
HP:75
MP:0
攻撃力:986
守備力:56
EX:9744
―――――――――――――――
なんと、一気にレベルが12も上がっていた。
「つーかお前。俺を助けてくれようとしたのか?」
「ゴ!」
「ふふッ、ありがとな」
「ゴっ♪ ゴゴ♪」
こうして頭をなでてやるとチビは嬉しそうに万歳していた。
洞窟での採掘は楽しい。
街の『建設』の方は帝都の公共事業をたった一人でこなしていた頃の経験が活きてはいたけれど、採掘の方は今までにない冒険にあふれている。
今日はどんな発見があるだろう?
毎日暗い
「領主様! ちょっと来てください」
「すごいんですよ!」
「ほら、木があんなに!!」
第三の拠点では『植林場』の木が十分に育ったらしい。
一方、製鉄場の鉄資源も『鉄:100000』を超えている。
「ピースはそろったか……」
というわけで、俺は地下での掘削を一時中断し、いよいよ鉄道作りに着手することにした。
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