第23話 洞窟リトライ
第三の拠点へ連れてきた民のおかげで、俺が採掘した鉄鉱石や石炭は次々と鉄のインゴットへと還元されていった。
「ありがとう。よく頑張ってくれているようだな」
「とんでもねえです」
「オレら領主様のおかげで仕事にありつけてるんだ」
「頑張らないわけにはいきませんぜ」
「そうか……」
そういう領民たちの横で、俺は黄金のつるはしで鉄のインゴットを叩いていく。
「領主様?」
「何をなさってるんで?」
みんなは俺のしていることを見て不思議そうにする。
「ああ。これは回収をしているんだよ」
「回収?」
そう。
集めてきた鉄鉱石と石炭によって鉄のインゴットが精製された後は、再びこれを回収するのである。
〇鉄 1256
すると、このようにインベントリ内に表示されるので、こいつを工作して
「そうだな。とりあえず防具でも作ってみるか」
俺は鉄を用いて鎖を工作し、それを組んで『
「おお、すげえ」
「あっという間にアイテムができたぞ!」
そう叫ぶ領民たちをよそに、俺は鉄の足具や籠手、額当てなどを作っていく。
こうした防具は守備力を上げてくれるからな。
とは言えあまり重装備では動きが鈍くなって肝心な掘削作業に支障をきたすので、鎧兜というよりは急所を守る程度の軽量な防具を心がけた。
「じゃあちょっと行ってくるか」
「「「いってらっしゃいませー!」」」
そう言って第三の拠点を出てすぐの岩山へ足を向ける俺だったが、今日はいつもとは緊張度合いが違う。
そう。
今日はあの洞窟の底に再チャレンジしようとしているのだ。
「……あいかわらず迷路みたいだな」
洞窟へ入ると俺はそうこぼすが、前回のマッピングで経路は明らかになっている。
ライトの魔法で岩窟を照らしながら底へ底へともぐっていった。
Z軸:-160→-215→-270→-300
やがて、あの宝の山空間に到達すると、歓喜と同時に緊張が走る。
「……うっ」
今回ははなっから岩ゴーレムと遭遇したのである。
ゴゴゴゴゴ……
動きはのろいが、こいつの攻撃力は前回骨身に染みるほど味わった。
あの拳を喰らうわけにはいかない。
「おら!」
俺は岩ゴーレムの攻撃をかわすと、鉄の剣で打撃を加えてみる。
……ゴ?
しかし、敵は守備力も固い。
「くそ。まだダメか」
実を言うと、今回、俺には作戦があった。
と言うのは、一般的にモンスターというのは強ければ強いほど倒した時に得られる経験値が高いらしい。
ので、まず攻撃を避けることのできそうな岩ゴーレムを狩って、さらにレベルを上げてこの場所に適応しようと考えたのである。
しかし、今の様子だと全然効いていないな。
岩ゴーレムを倒せないんじゃいつまでたってもレベルは上がらないぞ。
そこで、俺はもうひとつの作戦に切り替える。
「逃げろ!」
俺はそう叫びながら岩ゴーレムから逃げた。
ゴゴゴゴ……(怒)
ヤツは追ってくるが、動きがのろいので逃げることくらいはできる。
なんか怒ってたけど、不意打ちを喰らわなければ怖くない魔物であった。
しかし、この空間において岩ゴーレムは最強のモンスターではない。
この前はグリーンドラゴンにも襲われたしな。
このまま逃げていてもこの空間に適応できない。
そこで俺は黄金のつるはしを取り出して、おもむろに採掘をはじめるのだった。
ポコッ、ポコッ……
採掘に気を取られていたらここの強モンスターに襲われて危ないんじゃないかと思われるかもしれないが、そしてその危惧はまったくその通りであるが、この採掘は一点集中的なもの。
ひとつの鉱物だけを狙って採掘してまわるのだ。
その鉱物とはこの前少しだけ発見したパワーストーン。
攻撃力を高める鉱物である。
〇パワーストーン 6
俺はひっそりパワーストーンを採掘すると、すぐにモンスターに遭遇しないよう息をひそめつつ空間を進んでいく。
「静かに静かに……げッ!?」
やむなくモンスターに遭遇した場合は、とにかく逃げる。
途中まわりこまれてしまってニ、三発攻撃を喰らってしまったが、HPはまだ181/403ある。
鉄の防具のおかげだな。
引き続きパワーストーンを回収しまくって、ある程度まで集めたところで一度この空間から脱出し、岩窟の道の方へ戻ってきた。
「はぁはぁはぁ……死ぬかと思った」
俺はそう息を切らすが、首尾は上々だ。
〇パワーストーン 89
俺は回収したパワーストーンを取り出し、ひとつずつ消費していった。
パアアアア……☆
パワーストーンひとつにつき攻撃力は10上がる。
それが89個なので俺の攻撃力はこのように上昇した。
攻撃力 540→1430
「よくわからんけど、これなら岩ゴーレムにそこそこダメージを与えることくらいできるかもな」
そう思った俺は、試しにまた岩ゴーレムのいた辺りに戻っていく。
ゴ?……ゴッゴッゴッ(笑)
で、さっきの岩ゴーレムと遭遇した。
なんか笑ってやがる。
「ふん、さっきの俺と同じと思ってたら痛い目みるぜ!」
そう叫んで、俺は岩ゴーレムへ向かって走っていった。
ゴゴゴゴ!!
「おっと!……」
しかし、敵の拳が飛んでくるので一転避けに徹する。
危ない。
上がったのは攻撃力だけだから、相手の攻撃を喰らったらヤバイってことを忘れてはならないのだ。
でも、敵は攻撃後のモーションで
「
俺は岩ゴーレムのどてっ腹に『鉄の剣』をぶち込んだ!
ウゴ!!……ゴオオオオオ……
すると岩ゴーレムは脆くも崩れ去り、光の玉となってダンジョンの奥へと消えてしまったのである。
「は?……」
そう。
攻撃力1430は俺の想像をはるかに超える威力だったのだ。
あのびくともしなかった岩ゴーレムが、ただの一撃で絶えてしまったのだから。
「やベーだろ、これ……」
しばらく俺は自分の両手を見つめ、ただ唖然とするのみだった。
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