第34話

「ここがその人の事務所ですか?」

「ええ、そうですよ涼奈さん。」

「やっぱりちょっと社会人が抜けてないのかな?」

「でも葵お兄ちゃんは昔から私とかって丁寧な言葉遣いだったよ。

 ゲームしてる時は人格変わってたけど。」


そんなに人格変わってたかな?

多少熱くなることはあってもそれなりに自制をしていた気がするけど。

みずきちゃんには変っていると感じ取られたのならしょうがないかもしれない。


子どもって結構人間観察するから自分ではわからない本質を見抜いてしまうことってあるんだよね。

親の本質を見抜かれたときには親だって面白くないし喧嘩が勃発で済めばいいけどね。


「人格変わる。

 お酒とか私と愛をはぐくむ時と一緒だね。」

「あの涼奈さん人の往来でそういったことを話さないでくれると助かるんだけど。」

「ごめんごめん、でもここあまり人が居ないから良いかなって。」


ここは都心の中でも田舎に位置する場所で別荘地と言った印象が強い。

こんなところに弁護士事務所を置くのだから相当儲かっているかリピーター(常連)が多いことが伺えた。

企業は何事も恒久的な収入を得られるお得意様を欲しがる。

そのためにサービスを付けたりレベルの高い技術力を提供するのだからこの弁護士事務所も相当な腕があると思っていいだろう。


インターフォンを鳴らそうとすると不意に玄関の扉が開いた。


「お久しぶりですね。先輩。」

「うん、久しぶり元気そうだね。」

「はい、おかげさまで。

 でも先輩痩せすぎてませんか。

 大学に居た時もそうでしたけどきちんと食べないと病気になってしまいますよ。」

「いやあそうしたいのは山々なんだけどね。

 今はまだちょっとストレスのかかる案件が有ってね。」

「お仕事の件ですね。

 退職されるとのことで、もう再就職先は決まっているのですか?

 決まっていないのであれば私の事務所に……。」

「ああ、アドベンチャラーになることになったよ。」

「え?先輩が?」


後輩はまだ俺がダンジョンを攻略したことを知らないようだった。

ニュースで取り上げられていたのはダンジョンエネルギー抽出師のブラック労働だけだったし都心にできたダンジョンの横穴から落っこちてダンジョン攻略してましたなんてことを知ることは無かったのだろう。

実際実家にしかそういったことは連絡してないし。


「そ、それに後ろの人達は。」

「私は葵君の未来の妻です!」

「私はその前にそこの女の呪縛から葵お兄ちゃんを開放して妻になる人です。」


凄い爆弾をぶち込んできた。


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スライム道

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