第二話 第一候補、天海奏駘
※「」はセリフ、「「」」は頭の中の考え、『』は文字や能力名などのときに使います。
数字は日にちのみ漢数字です。
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「はっ」
身体中に冷や汗をかいた状態で眠りから目覚める。慌ててすぐそばに置いてあった目覚まし時計を確認する。
「嘘っだろ?五月二日だって!?」
本来なら有り得る筈のないその光景に目を疑う。なぜなら、あの時間違いなく自分は絶命したという感覚が確かにあったからだ。
「まさか過去に戻ったのか?いや、そんなわけないか…」
「ただの夢だよな、まったくたちの悪い夢だな」
内心現状に疑いながらも自分を落ち着かせるためにそう言い聞かせる。少ししてから自分が落ち着いたのを確認すると再び目覚まし時計で時間を確認する。まだ7時30分、本来なら祝日のこの時間はまだ寝ている時間帯だが『夢』の出来事が頭から離れず寝付けない。しかたなく寝るのは諦め朝食を食べるためにリビングに向かった。
リビングに着き椅子に腰掛け母親が用意した朝食を食べていると、
トントン
と、中学生の妹の奏駘が階段を降りる音が聞こえてくる。
「おはよー、今日は部活ないのか?もう半回ってるぞ」
「別に大丈夫」
「そっか、なら今日はどっか行くのか?」
「何でそんなことあんたに言わなくちゃいけないわけ?」
「いや、そりゃー兄なんだから妹の事を心配くらいするだろ」
「高2にもなってまだシスコンかよ、キモッ」
「だいたい私とあんたは血が繋がってないんだから妹じゃないでしょ」
そう言い放ち朝食を持ち二階へと上がっていく。
「おい、さすがにその言い方はなっ---」
ピコっん
言葉を遮るように突然そんな音が聴こえてくる。
「何の音だ?」
「何かゲームの"ウィンドウ"が開いたみたいな音がしたな…」
そう口にした瞬間目の前に大きなゲームの画面の様なものが映し出された。
その画面に映し出されていたのは『ハーレム攻略、クリアするまで死は繰り返す』という文字と自分の証明写真の様なものと簡単なプロフィールだった。
そこには一言一句間違えのない自分の生年月日から血液型、身長体重までが記されていた。
「なんだよこれ、気持ち悪いな…」
画面をある程度探っていると二つ気になる項目があった、そこには『スキル(能力)』と『攻略対象』と記されている。
『スキル(能力)』という項目をタップすると、
スキル(能力)
やり直し
××に殺されるとその日の朝に戻ってくることができる。
※ただし、効果が発動するのは一週間に一回のみ
自白
自分に好意を抱いているものにたいして質問した場合、対象者に真実のみを吐かせる。
※回数無制限
ウィンドウ
自分の能力や身体の状態や、攻略対象者たちの顔や名前、現在地などを確認でき、一人攻略するごとに一つだけ質問に答える。
※回数無制限
「おい、嘘だろ?『やり直し』だって!?」
「あれは夢じゃなかったって言うのか?」
「まてよ、っていうこは、あの出来事がまた起こるってのか!?」
「××ってのと『攻略対象』、『ハーレム攻略』ってのは後回しだ」
事の大変さを察し、慌てて家を出る準備をする。
「って言うかこれ、どうやって"閉じる"んだ?」
そう言うと又もピコっんと、音を鳴らして画面が消えた。
「"閉じろ"って言えば閉じるのか?」
だが、そんなことを考えるうちにも時間は刻一刻と迫っている。取り敢えず、画面の事は後回しにして急いで家を飛び出した。
「あのときは確か昼位だったよな、一旦あいつの家に逃げよう…」
しばらく走ってたどり着いたのは、
「蒼ぅー!どうしたの?そんな息きらしてー」
幼馴染み、一ノ瀬柚姫の家だった。
可愛らしいリボンをつけたサイドテールの茶髪の少女に一瞬見とれてしまうが今はそんなこと言っている場合ではないのでその誘惑を振り払う。
「はぁっ、はぁっ、ごめん少しの間匿ってくれ」
「いいよ!うちでよければ」
「ありがとっ---」
ピコっん
又も先程のゲーム音の様なものに言葉を遮られる。
「どうかした?」
「いや、なんでもない」
「そう、ならいいけど」
「「この画面は俺だけにしか見えてないのか?」」
「さぁ早く、上がって?話聞くから」
可愛らしい無邪気な笑顔で急かされる。
画面の事がまだ気になってはいたが自分からお願いしたにも関わらず柚姫を待たせるのは申し訳ないので一度家の中に入ってから考えることにした。
「狭いとこだけどゆっくりしていってね!」
可愛らしい笑顔に撃ち抜かれそうになるも何とか持ちこたえる。今この状況じゃなければ堪能しているレベルだ。
「ごめん、トイレ借りてもいい?」
「いいよー、場所は分かるよね?」
「おう」
勿論、トイレをすると言うのは嘘で先程又出てきた画面についてを調べるためだ。
「さっきは"閉じろ"って言ったら消えたし"開けって"って言ったっ---」
「やっぱりな…」
画面を開き先程の音の内容を調べていると『攻略対象』に②というマークが表示されていた。それをタップすると、
『攻略対象』
自分に好意を持った相手を判断し、その相手のプロフィールや自分への好感度を確認できる。
※ただし好感度が確認できるは攻略クエストのステージ4をクリアしてから。
攻略対象になるのは自分に好意を持つ又は持っている可能性があるもののみ。
説明を読み終え次の画面に進む、そこには『攻略対象発見数×/2』、『攻略対象プロフィール』という新たな項目が記されていた。手始めに『攻略対象プロフィール』から調べてみるとそこには、『攻略対象1天海奏駘』、『攻略対象2一ノ瀬柚姫』と記されている、そう、今までに聴こえてきたゲーム音は全て攻略対象発見を知らせるものだったのだ。
「って、まてよ?柚姫に関しては分かるが、何で奏駘が攻略対象なんだ?」
「柚姫は幼馴染みだから攻略対象にして好感度を上げるのはまだ難しくないだろうが、奏駘に関しては完全に俺の事嫌ってるしほぼ無理ゲーだろ」
半ば呆れたかの様にそう呟く
「いや、まてよ確か画面には"自分に好意を持つ又は持っている可能性があるもののみ"って書いてあったな。まさかホントに奏駘を攻略させる気か!?」
「勘弁してくれよー、あいつは義理とは言え妹でしかも中学生何だぞ?」
「でも、確かあの文章には…」
そう、一番最初に画面が開いたときその画面には『ハーレム攻略、クリアするまで死は繰り返す』と綴られていたのだつまりこのゲームはあの死と何か関係していてこのゲームを破棄すると言うのは自殺行為を進んですることとなる。
「くそっ、あの奏駘を攻略しろだって?無理に決まってんだろ…」
あまりの無理難題にうちひしがれていると、
トントン
とトイレのドアが鳴った
「蒼ぅー?大丈夫?」
"トイレ"があまりにも長いため心配したのか柚姫が話しかけてきた。
「あぁうん、大丈夫ちょっと腹を下しただけだから。戻ってていいよ」
そう言い訳をして、柚姫を部屋に戻し自分もトイレを出る。まだ気になることは多くあったが
これ以上待たせると流石に怪しまれそうなため一度中断する。
「ごめん、お待たせ」
「うん大丈夫。お腹大丈夫?」
「うん、なんとかね」
「っで、なんであんな慌ててたの?」
「あぁそれはっ---」
ふと時計をみた時今までの比ではない緊張を体に覚え一瞬で強張っていく。そう、今まさに襲われた原因と考えられる"手紙"が届いた瞬間だった。怯えながらも時計を見つめたまま時間だけは過ぎていく。とても長く感じる10分間を耐え抜きようやく一息つく。
「はぁぁ、良かったぁ」
そう安堵したのもつかの間又しても
ピコっん
とゲーム音が響く、しかし今回の内容は以前までとは違い、『攻略クエスト(全体)1クリア』と表示された。そしてその下には小さくしかし強調された『NEXT』という文字が書かれている。そこをタップしてみると。『攻略クエスト(柚姫)1 一週間以内に心を堕とせ』と書かれてあった。
「はぁぁぁあ?!!」
二終わり
つづく
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